3 / 22
第一章 幼少期編 まだ主人公がションベン臭いガキだった頃の話
メスガキなトレーナー
しおりを挟む
料理が目の前に置かれるなり、さっそくリヨががっつく。
「モグモグッ! うん悪くないわねモグモグ! 焼き加減もちょうどよくて、いいところの部位を使っているわ。これでワインがあれば、完璧なんだけれど」
ステーキの味に、リヨは満足げだ。
朝はいつも軽めで済ませるジョシュアも、リヨに付き合う形でステーキを頬張る。朝から肉食も、そんなに悪くないかも。
「キミ、ウチの事情にやたら詳しいけれど、知り合いだったっけ?」
「今は食べることに集中させて! あと、お酒よこしなさいよ!」
プンスカと怒りながら、フェンリルのリヨはステーキをガツガツと平らげる。
「お酒お酒ってうるさい! それより話の続きを聞かせてよ」
糖尿で若くして死ぬって、どんな人生だったのだろう?
「いいわ。アタシは前世で、わがままな女だったわ。そんな自分を、誇らしく思っていた」
聞けば生前の令嬢は、甘いもの・脂っこいもの・ワインを好んだ。野菜を一切取らない生活を送っていたとか。
そのため、一〇代ですでに糖尿となり、それでも堕落した生活をやめなかった。
結局、二〇をすぎることなく死んだという。
死因が単なる、不摂生による贅沢病とは。なんとも、情けない理由だった。
「で、キミのことを不憫に思った神様的存在が、キミを狼の召喚獣に転生させたと?」
その手の話は、この世界では掃いて捨てるほどあるが。
「いいえ。『もっと現世で地獄を見るがいい』って、人間界に突き落とされたわ」
神様でさえ舌を巻く、素行の悪さだったらしい。
「で、どうするの? ダミアン兄さんのお嫁さんに復讐する?」
「とんでもない。妹とは仲がよかったわ」
リヨは首を振った。
妹とリヨは、一緒にお菓子を作って分け合う仲だったという。
嫁に行くことが決まり、妹の方は甘いものは控えていた。
が、自身は嫁ぎ先が決まっても態度を改めなかったそうだ。
妹の分も独り占めできる、という意地汚さ。
それが、死亡事故を生んだわけだが……。
「妹さんの顔を見に行く? 久しく会っていないんでしょ?」
父はわからないが、義理の姉なら事情を説明したら納得してくれるかも。
淡い期待を告げてみたが、リヨは首を振った。
「やめておくわ。姉がこんな姿になったと聞けば、ショックを受けるだろうし」
いきなり「あたしが姉よ」なんて言っても信じないだろうし、とのこと。
飼い主であるジョシュアが魔力で言わせているだけ、と思われてしまう。
「こんなバケモノ相手に、優しいのね」
うっとりとした眼差しを、リヨはジョシュアに向けてくる。
「友達だからさ」
「随分と、こだわるのね?」
「ボクってさ、両親が歳をとってから生まれたんだよね」
家族はよくしてくれていたが、周りからはバカにされ続けてきた。兄二人と比較されては、からかわれている。
ジョシュア自身も、同世代の子どもたちとどう接していいかわからない。そのため、家で魔導書ばかり読む毎日だ。
特に、召喚術に興味を持つ。
対人を想定した攻撃や治癒には関心が向かず、とはいえ友達は欲しかったから。
ケモノと仲良くなれればモフモフし放題だろうという、邪な心がなかったわけでもない。
結果的に、フェンリルを喚び出すほどの実力はついたのだが。
「聞くだけでも、情けないよね。ボクは役立たずで、お人好しだ。キミ満足させることもできない」
「そんなことを、気にするわけ?」
水でノドを洗い流しながら、リヨは聞いてきた。
「気にするさ。召喚しっぱなしで野放しだからね。ボクがもっと強かったら、キミのお願いを聞いてあげられるのに。欲しい物だって、用意できるはずだ」
「そこで『アタシを従わせられるのに』って言わないところが、アンタらしいわ」
「主従の関係はイヤだ。ボクは、友達が欲しい。気兼ねなく話せて、ケンカできて、バカができるような!」
リヨは残ったステーキを平らげてから、フンと鼻を鳴らす。
「ふうん。カワイイこと。気に入ったわ。この最強フェンリル様が、アンタを訓練してあげる」
「モグモグッ! うん悪くないわねモグモグ! 焼き加減もちょうどよくて、いいところの部位を使っているわ。これでワインがあれば、完璧なんだけれど」
ステーキの味に、リヨは満足げだ。
朝はいつも軽めで済ませるジョシュアも、リヨに付き合う形でステーキを頬張る。朝から肉食も、そんなに悪くないかも。
「キミ、ウチの事情にやたら詳しいけれど、知り合いだったっけ?」
「今は食べることに集中させて! あと、お酒よこしなさいよ!」
プンスカと怒りながら、フェンリルのリヨはステーキをガツガツと平らげる。
「お酒お酒ってうるさい! それより話の続きを聞かせてよ」
糖尿で若くして死ぬって、どんな人生だったのだろう?
「いいわ。アタシは前世で、わがままな女だったわ。そんな自分を、誇らしく思っていた」
聞けば生前の令嬢は、甘いもの・脂っこいもの・ワインを好んだ。野菜を一切取らない生活を送っていたとか。
そのため、一〇代ですでに糖尿となり、それでも堕落した生活をやめなかった。
結局、二〇をすぎることなく死んだという。
死因が単なる、不摂生による贅沢病とは。なんとも、情けない理由だった。
「で、キミのことを不憫に思った神様的存在が、キミを狼の召喚獣に転生させたと?」
その手の話は、この世界では掃いて捨てるほどあるが。
「いいえ。『もっと現世で地獄を見るがいい』って、人間界に突き落とされたわ」
神様でさえ舌を巻く、素行の悪さだったらしい。
「で、どうするの? ダミアン兄さんのお嫁さんに復讐する?」
「とんでもない。妹とは仲がよかったわ」
リヨは首を振った。
妹とリヨは、一緒にお菓子を作って分け合う仲だったという。
嫁に行くことが決まり、妹の方は甘いものは控えていた。
が、自身は嫁ぎ先が決まっても態度を改めなかったそうだ。
妹の分も独り占めできる、という意地汚さ。
それが、死亡事故を生んだわけだが……。
「妹さんの顔を見に行く? 久しく会っていないんでしょ?」
父はわからないが、義理の姉なら事情を説明したら納得してくれるかも。
淡い期待を告げてみたが、リヨは首を振った。
「やめておくわ。姉がこんな姿になったと聞けば、ショックを受けるだろうし」
いきなり「あたしが姉よ」なんて言っても信じないだろうし、とのこと。
飼い主であるジョシュアが魔力で言わせているだけ、と思われてしまう。
「こんなバケモノ相手に、優しいのね」
うっとりとした眼差しを、リヨはジョシュアに向けてくる。
「友達だからさ」
「随分と、こだわるのね?」
「ボクってさ、両親が歳をとってから生まれたんだよね」
家族はよくしてくれていたが、周りからはバカにされ続けてきた。兄二人と比較されては、からかわれている。
ジョシュア自身も、同世代の子どもたちとどう接していいかわからない。そのため、家で魔導書ばかり読む毎日だ。
特に、召喚術に興味を持つ。
対人を想定した攻撃や治癒には関心が向かず、とはいえ友達は欲しかったから。
ケモノと仲良くなれればモフモフし放題だろうという、邪な心がなかったわけでもない。
結果的に、フェンリルを喚び出すほどの実力はついたのだが。
「聞くだけでも、情けないよね。ボクは役立たずで、お人好しだ。キミ満足させることもできない」
「そんなことを、気にするわけ?」
水でノドを洗い流しながら、リヨは聞いてきた。
「気にするさ。召喚しっぱなしで野放しだからね。ボクがもっと強かったら、キミのお願いを聞いてあげられるのに。欲しい物だって、用意できるはずだ」
「そこで『アタシを従わせられるのに』って言わないところが、アンタらしいわ」
「主従の関係はイヤだ。ボクは、友達が欲しい。気兼ねなく話せて、ケンカできて、バカができるような!」
リヨは残ったステーキを平らげてから、フンと鼻を鳴らす。
「ふうん。カワイイこと。気に入ったわ。この最強フェンリル様が、アンタを訓練してあげる」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました
星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎
王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝――
路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。
熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。
「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」
甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。
よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、
気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて――
しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!?
「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」
年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。
ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる