そのモフモフ、メスガキにつき ―三十路DT魔術師、懐かないフェンリルに勝つため鍛えていたら無自覚最強に。ロリダークエルフの彼女までゲット―

椎名 富比路

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第一章 幼少期編 まだ主人公がションベン臭いガキだった頃の話

メスガキなトレーナー

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 料理が目の前に置かれるなり、さっそくリヨががっつく。

「モグモグッ! うん悪くないわねモグモグ! 焼き加減もちょうどよくて、いいところの部位を使っているわ。これでワインがあれば、完璧なんだけれど」

 ステーキの味に、リヨは満足げだ。

 朝はいつも軽めで済ませるジョシュアも、リヨに付き合う形でステーキを頬張る。朝から肉食も、そんなに悪くないかも。

「キミ、ウチの事情にやたら詳しいけれど、知り合いだったっけ?」
「今は食べることに集中させて! あと、お酒よこしなさいよ!」

 プンスカと怒りながら、フェンリルのリヨはステーキをガツガツと平らげる。

「お酒お酒ってうるさい! それより話の続きを聞かせてよ」

 糖尿で若くして死ぬって、どんな人生だったのだろう?

「いいわ。アタシは前世で、わがままな女だったわ。そんな自分を、誇らしく思っていた」 

 聞けば生前の令嬢は、甘いもの・脂っこいもの・ワインを好んだ。野菜を一切取らない生活を送っていたとか。
 そのため、一〇代ですでに糖尿となり、それでも堕落した生活をやめなかった。
 結局、二〇をすぎることなく死んだという。

 死因が単なる、不摂生による贅沢病とは。なんとも、情けない理由だった。

「で、キミのことを不憫に思った神様的存在が、キミを狼の召喚獣に転生させたと?」

 その手の話は、この世界では掃いて捨てるほどあるが。

「いいえ。『もっと現世で地獄を見るがいい』って、人間界に突き落とされたわ」

 神様でさえ舌を巻く、素行の悪さだったらしい。

「で、どうするの? ダミアン兄さんのお嫁さんに復讐する?」
「とんでもない。妹とは仲がよかったわ」

 リヨは首を振った。

 妹とリヨは、一緒にお菓子を作って分け合う仲だったという。
 嫁に行くことが決まり、妹の方は甘いものは控えていた。
 が、自身は嫁ぎ先が決まっても態度を改めなかったそうだ。

 妹の分も独り占めできる、という意地汚さ。
 それが、死亡事故を生んだわけだが……。

「妹さんの顔を見に行く? 久しく会っていないんでしょ?」

 父はわからないが、義理の姉なら事情を説明したら納得してくれるかも。

 淡い期待を告げてみたが、リヨは首を振った。

「やめておくわ。姉がこんな姿になったと聞けば、ショックを受けるだろうし」

 いきなり「あたしが姉よ」なんて言っても信じないだろうし、とのこと。
 飼い主であるジョシュアが魔力で言わせているだけ、と思われてしまう。

「こんなバケモノ相手に、優しいのね」

 うっとりとした眼差しを、リヨはジョシュアに向けてくる。

「友達だからさ」
「随分と、こだわるのね?」
「ボクってさ、両親が歳をとってから生まれたんだよね」

 家族はよくしてくれていたが、周りからはバカにされ続けてきた。兄二人と比較されては、からかわれている。

 ジョシュア自身も、同世代の子どもたちとどう接していいかわからない。そのため、家で魔導書ばかり読む毎日だ。

 特に、召喚術に興味を持つ。
 対人を想定した攻撃や治癒には関心が向かず、とはいえ友達は欲しかったから。
 ケモノと仲良くなれればモフモフし放題だろうという、邪な心がなかったわけでもない。

 結果的に、フェンリルを喚び出すほどの実力はついたのだが。

「聞くだけでも、情けないよね。ボクは役立たずで、お人好しだ。キミ満足させることもできない」
「そんなことを、気にするわけ?」

 水でノドを洗い流しながら、リヨは聞いてきた。

「気にするさ。召喚しっぱなしで野放しだからね。ボクがもっと強かったら、キミのお願いを聞いてあげられるのに。欲しい物だって、用意できるはずだ」
「そこで『アタシを従わせられるのに』って言わないところが、アンタらしいわ」
「主従の関係はイヤだ。ボクは、友達が欲しい。気兼ねなく話せて、ケンカできて、バカができるような!」

 リヨは残ったステーキを平らげてから、フンと鼻を鳴らす。

「ふうん。カワイイこと。気に入ったわ。この最強フェンリル様が、アンタを訓練してあげる」
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