そのモフモフ、メスガキにつき ―三十路DT魔術師、懐かないフェンリルに勝つため鍛えていたら無自覚最強に。ロリダークエルフの彼女までゲット―

椎名 富比路

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第一章 幼少期編 まだ主人公がションベン臭いガキだった頃の話

侯爵令嬢 テオドーリヨ・マクファーレン

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「はあ? なによ。ザコをザコと言って何が悪いのよ?」

 リヨは、悪びれない。

「アタシを召喚したくらいで、魔力切れでブッ倒れるなんて。童貞もいいところだわ」

 ジロジロと、リヨが部屋全体を見回す。

 活劇小説の主人公である魔法少女のポスターが、壁や天井に貼られていた。棚には、憧れの魔法戦士のフィギュアが置いてある。

「変身願望の強い童貞ね。美少女とお付き合いしたいのか、強い男になりたいのか。どっちなのよ?」
「童貞は関係ないだろ! 第一、ボクはまだ一二歳だぞ!」

 呼び出した自分を差し置いて、クソザコ童貞呼ばわりとは。
 さすがに頭にきた。

「アンタのオヤジは、今のアンタと同じ歳で長男を仕込んだわ。イクとこイッたら、R一五では済まないかもよ?」

 父は子どもの頃から、相当マセガキだったらしい。
 まあ、四〇超えてまだジョシュアを母親に産ませたくらいである。それくらいの絶倫だろう。

「大方、こんな美少女とお近づきになりたいと思っていても、努力の仕方がわからなくてモンモンとしてるんじゃないの?」

 壁の美少女ポスターを見ながら、フリヨは鼻を鳴らす。

「ほっといてよ!」
「図星ね。こんなショボい挑発で、ムキになるなんて」

 言い返せない。

「そんなんだから、いつまでたっても童貞なのよ、ざ~こ。アンタまだ毛も生え揃ってないんじゃないの? ちょっくら見せないさいよ」

 いきなり、リヨがズボンを下ろしてきた。

「ちょっと何をするんだ!?」

 必死でズボンを死守する。

「何ってナニを見るんじゃない」

 リヨが、舌なめずりをした。

「やめなさい! わあーッ!」

 ジョシュアのズボンが、フワリとドアの方へ舞う。

 最悪のタイミングで、寝室のドアが開かれる。

「お、おはようございます、ジョシュア様」

 若いメイドが、ジョシュアを食卓へ呼びに来た。ズボンが、メイドの顔に舞い降りる。

「あの、ジョシュア様?」

 冷静に取り繕い、メイドは自分の顔からジョシュアのズボンを手に取った。

「ごごご、ごめんなさい!」

 慌ててジョシュアは、下げられた下着を持ち上げる。

「話し声が聞こえてきましたが、どなたかいらっしゃるので?」
「なんでもないよ! 服は洗っておいて!」
「承知いたしました。ジョシュア様、朝食の支度ができましたので」

 いきなり、リヨが「あーそれなら」と起き上がった。

 急いで、ジョシュアはリヨの口をふさぐ。フェンリルが話せるようになったことを、知られるわけにはいかない。

「ど、どうも! 自分の部屋で食べるよ! この子にも食べさせてあげて。ステーキがほしいんだって! えっと、表面焦げ目で中はレア! ワインなんかいらないから!」
「ちょっとナニよ! ステーキにワインはつきものでしょうが!」

 小声で、リヨがわめく。

「僕が飲むと思われるだろ? ボクは元服してないんだから」
「やっぱ童貞じゃない!」
「うるさい!」

 どうにか、リヨを抑え込む。

「あの、ジョシュア様?」
「なんでもないよ! ちょっとアレだよ、アレ。わかるでしょ? ボクだって……男の子なんだ。わかるよね?」

 メイドは困惑気味な顔になったが、すぐに立ち直る。

「なるほど」

 下がっていた下着と舞い上がったズボンで、すべてを理解したようだった。
 すべてはまるっきり誤解なのだが。

「かしこまりました。すぐにお持ちします。他にもお召し物をいただけますか? 洗濯いたします」
「ありがとう。着替えは、自分でできます! 洗い物はカゴに入れておくよ。その間に、ゴハンを持ってきて。リブロース表面焦げ目で中はレア。ワインとかは持ってこなくていいから。朝からお酒は控えなきゃ!」
「はあ……はい。失礼いたしました」

 メイドが部屋から出ていった。

「なにすんのよ! お酒よこしなさいよ!」
「いきなり召喚獣がしゃべりだしたら、パニックになってしまうだろ!?」

 下手をすると危険種と見なされて、殺されてしまうかも。

「いいじゃない! 三件隣に住んでるダチョウヒヨコなんて、自分の意思でダンジョンに潜るのよ? 鑑定しないとアイテムの価値もわからないクセに! しかもあいつ、その気になったら魔導書だって読むわ!」

 乗り物として利用されるダチョウヒヨコの中に、その手の亜種がいるのは聞いたことがあったが。実在していたなんて。

「キミはダチョウヒヨコと違うだろ!」
「うるさいわね、結局ツルンツルンのくせに。お酒よこしなさいよ!」
「いいだろ別に! さっきから何を怒っているの!?」
「そりゃあ、お楽しみのところを中断されたら怒るわよ!」

 リヨがテーブルをドン! と叩いた。

「こっちは召喚獣同士のハッスルを中断されて、気が立ってんのよ! ああもう、あとちょっとでアークデーモンに自慢の子種をブチ込めるところだったのに」

 自慢話をしながら、リヨは毛づくろいを始めた。

「キミ、男なの? 女の子みたいな話し方だけれど?」
「はあ? アタシはオスよ。性別上だけど。魂はメスなの」
「どういうこと? そういえば、マクファーレンって!」

 たしか義理の姉が、マクファーレン家の令嬢だったはず。長男ダミアンの奥さんだ。

「そうよ。アタシはマクファーレン侯爵一族の、第一令嬢だったの」
「じゃあ、ダミアン兄さんのお嫁さんは?」
「あれは妹よ」
「まさか、復讐のために転生を?」

 リヨはいわゆる【悪役令嬢】で長男との仲を嫉妬した妹の手にかかった?
 あるいは、処刑されたとか。
 で、モンスターに転生して復讐するか、人生逆転を狙っているのかも?

 ジョシュアがリヨの身の上を、妄想して吐き出す。

「はー。これだからバカなガキは」

 呆れたように、リヨは首を振った。

「どこか、間違っていた?」
「まるで違うわ。アタシが死んだ原因は、ただの糖尿病よ」
「ええ……」
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