そのモフモフ、メスガキにつき ―三十路DT魔術師、懐かないフェンリルに勝つため鍛えていたら無自覚最強に。ロリダークエルフの彼女までゲット―

椎名 富比路

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第一章 幼少期編 まだ主人公がションベン臭いガキだった頃の話

【幼少期編 完】魔法科学校卒業、そして……

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 魔法科の女子生徒イーデンが、杖を手に犯人へ説得を試みた。生徒会長の文化祭の予算を引き出そうとしたところで強盗に出くわすとは。ツイていない。

「手を上げろ!」

 覆面の男が、銀行員に散弾銃を向ける。バッグを女性行員に投げてよこした。

「そのアイテム袋にありったけの金を入れろ!」

 銃を向けられた女性銀行員が、金をバッグに詰めだす。

「よせ。そんなことをしても、なんの得にもならないぞ!」
「うるせえんだよガキが! テメエから死にてえのか!」

 あまりの貧窮さに、犯人は我を忘れている。正攻法では無理なのか。

「金をよこせ! それとも脳みそを床にぶちまけてえの……」

 窓ガラスが割れた音で、覆面が外へ目を向ける。

 犯人の首が九〇度折れた。
 どこからともなく現れた不良風の少年が、宙に浮いたまま犯人とディープキスをする。

 不良少年と犯人との首は、折れてはいけない方向へと折れていた。

 散弾銃が暴発し、犯人の手から離れる。

 そのスキに、生徒会長は散弾銃を回収した。

 直後駆けつけた騎士団の手によって、強盗はお縄につく。だが、首はそのままだ。

 それにしても、今のはなんだ?

 割れたガラスの向こうに、イーデンは目を向けた。

 歩道の向こうに、狼連れの少年が立っている。例のジョシュア少年だ。生徒会のメンバーが、彼に何度も頭を下げていた。

「まさかな」

 普段おとなしい彼が、生徒会に暴力を振るうとは思えない。

 ジョシュア少年が、生徒会に背を向けた。
 追いかけないと!


              ◆


「ありがとう! 君たちのおかげで助かったよ! 本当ならば僕たちがあの不良たちを取り締まらないといけなかったんだけれど」

 メガネの生徒会が、ジョシュアにペコペコと頭を何度も下げてくる。

「いいっていいって。むしゃくしゃしてやっただけだから。ボクたちはこれで」

 ジョシュアは、この場をいち早く去りたかった。これ以上、厄介事に巻き込まれたくない。

「待ちなさい!」

 立ち去ろうとしたジョシュア少年を、白い制服の生徒が呼び止めた。魔法科の生徒会だ。生徒会長を示す腕章と、ミラにはない双丘を携えている。

「アンタ、なんかやらかしたでしょ?」
「なにもしてないよ!」

 リヨの追求に、ジョシュアは手をバタバタ振った。

「ホント? トイレでシコっていたのがバレたとかじゃないの?」
「そもそも学校のトイレで自自家発電なんてしたことないよ!」
「まるで、学校以外のトイレならしたことあるって言い方ね?」
「ノーコメントだ」

 コホン、と生徒会長が咳払いをする。

「ワタシはイーデン・ステューバーだ」
「知ってますよ。生徒会長」
「助かる。そこで質問だが、今の不良はキミが?」

 銀行でノビている不良を、イーデン生徒会長が指差す。

「ああ。カツアゲしてきたから返り討ちにした」
「ホントはアタシが殺してもよかったんだけれど、慈悲の心でやめてあげたわ」

 ジョシュアが言うと、イーデンは唖然とした。

「たしかに、フェンリルなら殺していたかもしれないな」

 イーデンは「そこでだ」と、続ける。

「就職先の斡旋をしてやろうじゃないか。たしかキミ、まだ大学へ進学か就職か決めていないとか」
「はい。でも冒険者とかはゴメンです。もっと事務的、雑用的な作業がいいです」

 ただでさえ、フェンリルを連れた召喚士として孤立してきた。
 クラスではハブられるわ、先生にさえ目をつけられるわ。
 肩身の狭い思いをしてきた。
 できれば、もう目立ちたくない。

「例と言ってはなんだが、キミさえよければ私の父が団長を務める魔術師団に入らないか?」
「いいんですか?」

 ステューバー魔術師団なんて、相当のエリートだ。

「ああ。キミの腕なら、まったく問題はない」
「ちょっと待ってください」と、リヨを指差す。
「リヨを傷つけるようなことはしませんよね? 実験動物にするとか」

 学園でも、何度か危険な目に遭ってきた。それは避けたいのだが。

「もちろんだ。リヨともども、面倒を見ようじゃないか」 

 ジョシュアは、リヨとハイタッチした。
 
 
 魔法科学校の卒業式を終えて、リヨとジョシュアは自宅の暖炉前で肩を寄せ合う。

「ごめんなさいね、ジョシュアの友達を作ってあげられなくて」
「それはボクのせいさ。ボクがしっかりしていないから」
「アンタは、寂しくないの?」
「いいさ。ボクにはキミがいるからね。リヨ」

 モフモフしたシッポに、ジョシュアは倒れ込む。 

「まったく、あたしがいないとアンタは全然ダメなんだからね」





 眠りにつきながら、ジョシュアは思う。
 いつもリヨには、助けられてばかりだと。

 
 助けれあげられるレベルにまで成長しないと、本当の友と呼べない。

 いつかリヨと肩を並べるために、もっと強くなる。
 
 今度は自分が、リヨを助けるために。




 そんな事を考えながら過ごして、ジョシュアは三〇歳を迎える。
 リヨと知り合ってから、いまだ成長していなかった……。
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