白瀬 雪乃は、こじらせすぎ! ~恋は妄想だけで十分だから!

椎名 富比路

文字の大きさ
3 / 9

第3話 夜のファミレスに、着飾った男女

しおりを挟む
 定時で帰れたので、ファミレス行こうぜと白瀬しらせが誘ってきた。

 学生時代のように、エスカルゴ焼きを頼んだ。器に残ったオリーブオイルも、パンに浸して食べる。

 ドリンクバーの近くに、えらく着飾ったカップルが座った。男性はきっちりしたスーツ姿で、三〇代のタイトスカートの女性を連れている。チョリソーやチーズなどのつまみと一緒に、ボトルワインなんか頼んでいた。ぜいたくな食事だな。ファミレスなのに。

 女性は化粧がケバく、やっぱり水商売系かなと思う。三〇後半、いや四〇代かも。おそらく、白瀬より歳上だろう。恋愛経験値も高そうである。

「ねえ小宮山くん、あのカップルなんだろ?」

 二人分のジュースを持って、白瀬がカップルを眺めていた。

 また妄想モードか。朝も夜も変わらねえな。恋愛脳なんだから、自分で恋愛でもすればいいのに。

「あれかな。不倫だ」

 ライスを「おかず」に、白瀬はナポリタンをズズズッと豪快にすすった。

「なんで、そう言えるんだ?」

 ハンバーグセットを食いながら、一応オレも話に乗っかってやる。

「めっちゃ話し込んでるから」

 白瀬が言うには、夫婦だとあそこまで会話は弾まないそうだ。

「まあ言われてみれば」

 隣に座っている家族連れは、子供にかまけてお互い黙々と食べている。会話はない。

 一方、例の派手カップルは笑顔こそないものの、えらく話が弾んでいた。なんの話なのかは知らないが。

「ファミレスなのに、ワインなんて頼んでさ。きっとここは同伴用のお店なんだよ」
「そうかな? 同伴とかなら、もっとシャレた店に行かないか?」
「高級なお店に行かなくても、すでにお互いの勝手を知ってるんじゃないかな?」

 気を遣わなくてもいいレベルにまで到達した、ベテランの常連客だと。なるほどねぇ。

「多分さ、今から行くんだと思う」
「どこへ?」

 白瀬がキョロキョロと窓の外を眺めた。

「ここ、ちょっと行ったらホテル街じゃん」

 ファミレスの向こうには、駅がある。そこを少し歩けば、繁華街だ。さらに歩けば、お泊り可能な場所も。

「お前の頭は、アレのことしかないのか」
「だってさ、仕事終わりでお付き合いっていったら、そっちしかないじゃん。だからといって、精をつけてGOって感じでもなくて、そんなことしなくても楽しめるセックスをするんじゃないかな?」

 また白瀬は、ライスをおかずにしてナポリタンを貪った。

 中年カップルが帰っていく。窓から見ていたが、やはりお泊りのエリアへと消えていった。

「あのさ」

 食後のホットを飲み干し、オレは白瀬に尋ねる。

「オレらも行くか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...