おっさんとJKが、路地裏の大衆食堂で食べるだけ

椎名 富比路

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第四章 文化祭と秘密とJK

第55話 風邪の時は何を食べるか問題

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 熱が下がらない。
 医者に診てもらったら、夏風邪だという。
 インフルでないだけ、まだマシか。雨の山中をうろついたのが災いしたのかも。

 職場に連絡を入れて、ベッドで休む。温かくして眠っているのだが、まだ身体が震えている。

 眠っていると、チャイムが鳴った。

 時刻を見る。もう昼過ぎだ。 

「コメくん、大丈夫?」
 制服姿の琴子が、玄関前にいた。手にはデパートの袋を持っている。

 家の場所は教えていたが、まさか、本当に来るなんて。

「コトコト、お前」

「風邪引いたって聞いたから、飛んできた」
 孝明の脇をすりのけ、琴子はローファーを脱ぐ。

「いいのに」

「今日は始業式だけだから、来ちゃった」
 最近の高校生は、夏休みが減ったと言うが、本当のようだ。

「わーココがコメくんのお家かー」
 モノクロ調の殺風景な部屋を覗かれて、孝明は少し照れくさくなった。

「でもちょっとホコリっぽいね。お掃除してる?」
「その暇がなくて」

 最近は取材や編集作業で、家に無頓着になっている。

「さてさて、男子は疲れていると性欲を持て余すと聞きますが?」
 エロ本を探すためか、琴子がベッドのスキマなどを覗く。

「コトコト、調子に乗るなよ」


「ふざけに来たわけじゃないから」
 琴子の口調が急に真面目なモノへ変わる。


「分かってるけど。うつしちまう」
 怒る気力も失せて、ベッドに腰掛けた。

「いいの。あたしが無理を言って山に行こうって誘ったんだから」
「それこそ気を使いすぎだ。気温を気にせず薄着で登っちまったから」

 ここで自責の問答をしたって、不毛なだけである。
 孝明は身体をベッドへ投げ出した。

「デパートでさ、いろいろ買ってきたから」
 琴子が、袋の中身を取り出す。

 ハチミツやレモン、リンゴなどである。

「色々とスマン。それだけくれ」
 袋の中から、孝明はスポーツドリンクを抜き取った。胃の中を水分で満たす。 

「おかゆ作ろうか?」
 レンチンで作れるお粥を、琴子は袋から出した。
「これなら待たなくても、すぐできるよ。ホントは作ってあげたいけど、まだ自信なくてさ」

「いやいい」
 気持ちはありがたいが、孝明は首を振る。 

「お腹に何か入れた方がよくない?」
「食欲がないときは、何も食べない方がいいんだ」

 風邪引きの時に食べると、治りが遅くなってしまうらしい。
 栄養を取ると、消化にエネルギーを消耗してしまうからだ。
 よって、風邪をひいているときは何も食べず、安静にしている方がいい。
 水を飲むだけでいいのだ。


「そっか。桃缶とか買ってきたんだけど、無駄になっちゃったかあ」



 白桃の缶が、スーパーの袋からチラリと覗く。
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