失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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第五章 元暗黒騎士、四天王と異次元からの侵略者を同時に相手する

第51話 異端審問官 ヨバリク

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 背の低い、カエルのような容貌の男が、俺とガルルデの前にいる。

 ここは、アクータ塔の門前だ。

 どこから連れてきたのか、ありとあらゆる国家の兵隊が、旗を掲げている。世界総出で、このアクータ塔を支配しに来たらしい。

 とはいえ、結束力はないに等しかった。みな口々に、異端審問官に無理やり連れてこられたのだろう。悪口が丸聞こえである。

 異端審問官とは、やはり信用されない相手のようだ。
 
「よくぞ参られた、異端審問官 ヨバリク。ご要件は?」

 ガルルデが、穏便に話を進める。
 
「とぼけないで下されよ、ガルルデどの。貴殿がこのアクータ塔と結託しているのは、周知の事実」

 どこから持ち出したのか、書状が出てきた。

 そこには、ガルルデに謀反行為疑惑があると書かれている。

「我が敬愛する魔王を差し置き、よその魔王と契約を交わしているそうだが、相違ないですかな? もっとも追放されし背徳者、シモン・セルバンデスと結託している時点で、この議題の決着はついたも同然ですがな」

「だったら、なんだというのじゃ?」

「もし、このアクータ塔を明け渡せば、貴殿の行為を不問にしてやってもよい」

 なるほどねえ。

「吾輩とあなたの仲だ。イヤだとはいいませぬな」

「当然だ。ちょうど、トラブルが起きているばかりでな。そこで、お主にお願いがあって参ったのだ」

「ほほう。なんなりと、申し付けるがよい」

 自分の立場の方が上だと認識したのか、急に敬語をやめた。こういうところが、嫌われるんだよ、ヨバリク。

「実はアクータ塔に、異世界からの魔王が現れてのう。討伐に手を焼いておるのだ」

「ふむ。それは貴殿たちが始末すればよかろう」

「いやいや。我々でも、なかなかに太刀打ちできぬ大物であっての。お主が代わりに退治してもらいたい」

 実際、アスタロトは大物だ。

 しかし、人間サイズまで弱体化させている。

 アスタロトも、「これほどに力を奪った相手は、他になし」と、俺に降参した。

 ヨバリクに、アスタロトをぶち当てる。

「まさか、これだけ大勢の国家の前で、『自分は弱いので、できません』などと言わないよな?」
 
「黙れ、シモン・セルバンデス! 誰が逃げると言った!?」

「腰が引けてるぜ」

「……よかろう! その魔王とやら、通せ! 我が異端審問官直々にお相手を――」

 その言葉を最期に、ヨバリクは消滅した。配下の審問官もろとも。

 門の外から、アスタロトが火球を投げつけただけで。

 ヨバリク及び信者どもだけを、アスタロトはキレーイに消し去った。

「あれが、こことは別の世界から来た魔王、アスタロトだ。挑戦したいやつはいるか?」
 
 アスタロトを親指で指し示す。

 他国の兵隊たちは、旗を捨てて逃げていった。

 ですよねえ……。
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