失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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最終章 暗黒騎士よ、勇者殺害の黒幕を暴け

第59話 妖艶な妖術師(ババア) イエーグ

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 姿は人間と変わらないが、【魔女】という種族である。成人女性の姿ではあるものの、齢二万歳を超えているのだ。ベルゼビュートを除けば、魔界でも長寿の部類だろう。

「こんな美人なワシを差し置いてオババ呼ばわりとは。アクータ塔ってのは、さぞかし美人の多い国なんだろうね?」

「否定はせん。お前なんかオババでいいんだよ。イエーグ」

「あっちで嫁をこさえたんだってね。相手はドラゴンだって聞いたけど?」

「よくご存知で」

「TVとかいう装置は、なにもお前さんたちだけのものじゃない。ジリーク姫へのインタビュー特集の側に、お前さんが仲睦まじくいるのを発見してね」

「いつの話だよ?」

「アイドルの、何枚目かのレコードを出すとかなんとかのときさ」
 
 ああ、あんときね。

「シモン・セルバンデス。お前さんのようなノンデリ男に、嫁ができるなんてね」

「人の心は醜いというが、お前は特に性根が醜いねぇ」

「天性・天然のノンデリだからな」

「知っておる。判断力を鈍らせるため、相手からヘイトを受けておるのだろ?」

「そうだ」

 そんな生活が、染み付いてしまった。
 己の生き様を呪うよ。
 
「まあよい。それより、この死体を見よ」

 俺は、解剖台に横たわる死体に目を向けた。

「ヨバリク?」

 聞くと、イエーグは首を振る。

「いや。ヨバリクだったらよかったのだが、正真正銘、ベルゼビュートだよ」

「そういやあ、ヨバリクけしかけたのがお前、ってのは本当か?」

 異端審問官ヨバリクをアクータ塔に差し向けたのは、イエーグだとウワサになっていた。

「いかにもね。というか、邪魔だったのさ。未だに人間界へ侵攻しようとしていたからね」
 
『勇者が消え去った今がチャンスだ』って、息巻いていたという。

 あまりにうっとうしいので、アクータ塔に俺がいるかもしれないから、「異端者として殺しに行けば?」と、告げたらしい。

「ベルゼビュートに敬意を払わないお前さんを、ヨバリクは人一倍嫌っていたからな」
 
「ヨバリクは魔界で、もっともめんどくさいヤロウだったからな」

「なにかといえば、侵攻、侵攻。ベルゼビュートを信仰しないのはおかしいという『あたおか』の極みだったよってに」

 イエーグが、ため息をつく。

 いなくなって、お互いに清々した。

 おかげで、里帰りもできたってもんだよ。

「それより、これを見よ」

「ああ。ものの見事にバッサリだな」

 一刀両断。まさに、勇者の強さを見せつけられた気がした。

 こんなに強いのかよ、勇者って。

「シモンよ、お前さんも相当強くなった。だが、それでも勇者に及ぶかどうか」

「神聖な力には、誰も太刀打ちできない的な強さか?」

「いや。腕前自体、次元が違うのだよ。どう鍛えたら、あんなに強くなるのか」

 俺の想像すら、超える強さのようだ。

「戦ってみたかったなあ」

「お前さんには、ムリだよ。むしろ出会わなくて正解だ」

 そこまでいうか、このオババ。

「いや、もう出会えないといったほうがいいかな?」

「死んだもんな」

「違う。姿を消したのだ。ワシの眼の前からな」
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