インチキ呼ばわりされて廃業した『調理時間をゼロにできる』魔法使い料理人、魔術師養成女子校の学食で重宝される

椎名 富比路

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ハロウィンを、学食で

第36話 おじさん、JKと魔界へ

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 オンスロート・ルコートマウンディア。

 それが、オルコートマの正式名だという。「オンスロートが座っている山」という意味らしい。かなり歴史の古い街のようだな。

 温泉街みたいだな。都会というより、ちょっと騒がしい温泉街という印象だ。硫黄の香りがするから、本当に温泉が湧いているのかも知れない。

「着きましたよー。準備してくださーい」

 バスガイド姿で、シスター・ダグマが先導をする。

「シスター、大丈夫なんですか? 魔物の巣窟なんて。食われちまうんじゃ」

「イクタさん。心配ありませーん」

「けど、ほら」

 オレたちは、速攻で魔物たちに囲まれてしまった。

「おお、ニンゲンだ」

「ニンゲンだねー」

「久しぶりじゃのう」

 オーク、雪だるま、ガイコツなどの魔物たちが、オレたちににじり寄ってくる。

 一戦交えようというのか? よしてほしい。

 こちとら、戦闘力なんて皆無だぜ。学食に野菜を卸しているモクバさんの畑から、野獣を追い払うくらいならやったことはある。だが、あれも小さいウリ坊サイズだったし。

「イクタ。わたくしの後ろに」

 珍しく、デボラが頼もしい。

 キャロリネやペルも、オレを背中に隠す。

 武器に手をかけたりはしないが、一応警戒はしているようだ。

「ヒャッハーッ! ウエルカムだ! ニンゲンどもーっ!」

 魔物たちは襲いかかるどころか、道を開けてくれた。

「ようこそー。学生さんたちー」

 制服を着たスケルトンの少女が、エドラたちの首にレイをかける。

「お? お?」

 エドラも拍子抜けして、されるがままになっていた。

「歓迎されている、と思っていいんだよな?」

「はーい。ニンゲンなんて、この地に降りるのは久々だそうでしてー」

 ダグマいわく、人がオルコートマに立ち寄ること自体、めったにないという。魔物に対する偏見が、強いためらしい。

「中には本当に怖い、人間を見たら襲うような魔物も住んでいますよー」

 しかし、そういう輩は魔王が厳重に取り締まるという。

「以前、というか大昔にうちの生徒にケンカを売った女子高生が、ここの学園に何十年も『留年』させられていますー」

「留年? 投獄じゃなくて?」

「いえ、留年ですー。ダブリですー」

 投獄などというと、凶悪な魔物としての箔が付いてしまう。そのため、「留年」とダサく表記しているらしい。
「暴走族」を「珍走団」と呼び替えるようなもんか。

「お待ちしておりました、シスター・ダグマ。わが校の学長がお呼びです。こちらへ」

 先程現れた、スケルトンの少女が、案内を引き受ける。

「ありがとうございますー。ではー。学校に参りましょー」

 たしか、オルコートマにも学園があると言っていたな。これだけデカくて賑やかな街なんだ。学校くらいあるよな。

 ジャックランタンの被り物をした子どもが、プリティカにフヨフヨと近づいてきた。おそらくだが、ジャックランタンそのものかもしれない。

「かわいい妖精さん、お菓子をどうぞー」

「うほー。ありがとー。ダークエルフのお姉ちゃーん」

 さすがプリティカは、物怖じしない。小さいジャックランタンに、お菓子を配る。誰にでも優しいんだろうな。

「は! ごきげんうるわしゅう。クリッティカー陛下」

「クリッティカー様に触れられるなんて、恐悦至極にございまするー」

 街のお年寄りたちが、プリティカを見て拝んでいた。

 それにしても、大した人気だな? 生写真でも売っているのか? プリティカを本名で呼んでいるし。アイドル的な扱いだ。

「プリティカは、ここにはよく来るのか?」

「たまにねー。学校のボランティア活動で、ここの老人ホームで親睦会をするのー」

 学校行事でも、立ち寄るのか。だから人気があるのかも知れない。

「老人ホームって言っても、お墓とか廃墟とかなんだけどねー」

 ゾンビやヴァンパイアなどの話し相手を、してあげるという。アンデッドを「老人」というのか。

「たしかにボランティア活動で、こちらには参りますー。ですがー、クリッティカーさんを呼んだ覚えがないのですがー?」

「個人的に、ついていったのー。いいよねー?」

 アンデッド相手の親睦会など、まあ、女子高生なら断るよな。その穴埋めとして、プリティカは参加するという。

「はいー。生徒の自主性はー、尊重すべきですー」

 いいんなら、問題ないな。

 しかし、一度か二度の訪問でこれだけ慕われるとは。

「もし。そなた、『図書館の賢者殿』では?」

 ニワトリ頭の獣人が、パァイに声をかけてきた。

「いかにも、吾輩が賢者である。何用かのう?」

「そなたの文献、毎回拝見いたしておる」

 差し出されたのは、絵本である。

「サインを頂戴したい」

「うむ。こういう形のトリックオアトリートも、よいのう」

 パァイが絵本の巻末に、筆を走らせる。マジックではない。筆だ。

「かたじけない。また新作が出たら、購入いたそう」

 ニワトリ獣人が、去っていく。

「絵本なんか、出していたんだな?」

 本を出しても素人に理解できないから売れない、と言っていたが。
「絵日記のことじゃ」

 パァイが夏と冬に書かされる絵日記は、英雄譚として世に出ているという。 

 
 一〇分ほど歩いた先に、学校と呼称される建物に到着した。

 なんでこんなたどたどしい言い方をしているかというと、およそ学校と呼ぶには仰々しすぎるからである。

 厳密に言うと……魔王城としか形容できなかった。
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