最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~

椎名 富比路

文字の大きさ
19 / 49
第三章 大家さんと三毛猫が、参戦

第19話 鉱山ダンジョンへ

しおりを挟む
 翌日、ボクたちはまたログインする。
 
「久々のバグ報告だね、ビビ」

『ケントご主人、大忙しだニャー』

「アハハ。メール来ちゃったからね」

 実は運営から、バグ取りと調査を直接依頼された。

 ボクなんかで役に立つんだろうか。

 とりあえず、ボクとビビは、トワさんと待ち合わせた。

 今日は、いっしょにダンジョンを回る予定である。

「ケント。こんばんは」

 しばらくして、ベルさんが待ち合わせ場所に現れた。ボクたちと、共に行動してくれる。

「おまたせー、ケントくーん」

 お店を終えて、トワさんがやってきた。

 武装が、若干変わっている。

 タンクトップ、ショートパンツだ。武器は、ハンマーである。
 鍛冶屋って、そのまま戦闘職もできるんだな。ドワーフの腕力補正もあるみたいだし。
 
「いえ、全然待っていません」

「よかったー。そちらの方は?」

「ボクのフレンドの、ベルさんです」

 今日は、ベルさんもいっしょだ。トワさんの話をしていたら、「是非お知り合いになりたい」と、同行してくれた。

「どうも、はじめまして。ベルです。こちらは愛犬のナイン」

「はじめましてー。トワでーす。ドワーフの鍛冶屋ですよー」

 トップランカーが来ようが、トワさんは動じない。いつもどおりのマイペースである。

 トワさんはドワーフというが、ショートカットで細マッチョのちびっ子である。実物は、もっと背が高い。似ているのは、ショートなところぐらいか。

 二、三こと会話しただけで、二人はもうすっかり打ち解けていた。
 世代とかぜんぜん違うのに、もう敬語が抜けている。

 主に、ボクとビビの話題で盛り上がっているみたい。
 話すことなんて、そんなにあるのかな?
 
「この子は、すしおー。三毛猫のオスだよー」

 すしおくんは、トワさんに持ち上げられて、されるがままになっていた。なんの抵抗もしない。

「ところで、すしおくんの職業は僧侶なの?」

「【モンク】ってのがあったから、それにしたー」

 土魔法が得意な格闘家で、大地の力を使った回復も得意な職業である。
 
 すしおくんはマントを羽織って、僧侶っぽい貫頭衣を着ていた。トワさんは、もっとかわいい服とかを着せたかったみたいだけど、太りすぎてて身体が入らないという。

「かわいいわね。おとなしい」

「おとなしいというか、無気力なんだよねー」

 すしおくんは、「なあ」と鳴くだけ。「これからダンジョンへ向かうんだ」という、緊張感も感じられず。
 まあ、リラックスしていると思えばいいかな。

「いいじゃない。ネコって、そんなもんよ」
 
「一応、ダンジョン巡りはできそうだから、安心してねー」

「期待しているわ。じゃあ、行きましょ」

 ベルさん先導で、ダンジョンに向かうことにした。

「それにしても、いきなりでしたね。バグ報告って」
 
「そうなの。進行不可のバグって、今まで出てこなかったんだけど」

 たいていは、魔物が大量に湧くとか、特定のエリアに入れないなどである。

 今回のバグは、かなり深刻そうだ。早く、取り除かないと。

「まだ開発途中でー、バグと銘打ってー、進行を妨げているとかはー?」

「運営だって、そんなポンコツじゃないわ。あと四エリアくらい追加しようか、って話しているくらいだから」

 開発チームは、進行状況を随時アップしている。

 その記事を、ベルさんは引用した。

「そっかー。じゃあ、急がないとねー」

 「バグ取りの依頼は受けているけど、楽しんでちょうだいね。バグに気を取られて、遊ぶことをおろそかにしたら、元も子もないから」

「おっけー」

 リオーネ鉱山は、見た目こそそんなに変化がない。普通に、岩山のダンジョンだ。
 冒険者たちが、がっかりしたような表情で帰っていくこと以外は。

「魔物が強くなっているなどの報告は、出ていないわ。安心してちょうだい」

「はい。行きましょう」

 ボクたちは、歩みを進めていく。

 一応、ビビの様子を伺った。特に、変化はない。なにかしゃべりたそうにも、していなかった。

「危なくなったら、知られてね、ビビ」

 ボクが声をかけると、ビビが『ニャー』と鳴く。

「やっぱり、あなたたちは通じ合っているみたいね」

「そうだよねー。話しかけられて、ビビちゃんうれしそー」

 ベルさんとトワさんが、ボクたちに視線を向けてきた。

「アビリティのおかげですよ」

 ボクは、適当にごまかす。
 
「モンスターですよ」

 二体の大トカゲが、ボクたちの前に立ちふさがる。狭い通路に、このデカさはキツイ。逃げられないだろう。迎え撃つしかない。
 
「えっと、スキルってどう使うんだっけ?」

 トワさんが、操作方法で悩んでいる。

「こうよ」

 ベルさんとナインくんが、スキルの扱いを実践してみせた。
 それぞれ一体ずつ、倒す。

「おーっ。やるもんだ」

「次が来るわ」

「おっけー。今度は任せてー。【ロック・スイング】!」
 
 トカゲの眉間に、トワさんがハンマーを打ち下ろした。土魔法をアクションに上乗せして、攻撃力を上げている。
 
 一撃で、大トカゲを倒した。

 一方、すしおくんもネコパンチ一発。それだけで、大トカゲをやっつける。ビンタじゃなくて、相手のおでこを押し付ける感じで。

 おお、さすが格闘家って感じ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

処理中です...