最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~

椎名 富比路

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第四章 オフ会のお誘い

第27話 ねこのオフかい

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 ケントご主人がオフロに入っている間、ニャアはベランダに出る。

 こんなところに、ドロボーなんて入ってこない。
 周りもいい人たちばかりなので、外の空気を取り込むことができる。

 寒くなってきたとはいえ、二階はまだあたたかい。ポカポカ陽気に、ウトウトする。
 
「おーい、ビビー」
 
 下の階にいる、すしおも同じような感じ。アパートのお庭で、休んでいる。
 寒いのに外に出て、大丈夫なのかしら。あいつ、あんまり丈夫な方じゃないし。

 ニャアはテーブルにおいてある、おやつの「猫用かつおぶし」の小さい袋を口にくわえた。
 一袋まるまるドッサリ入っているタイプではなく、小分けパックなのがありがたい。
 パイプを伝って、スーッと庭に降りる。

「すしお。あんたが外にいるなんて、珍しいニャ」

 ニャアは前足で袋を押さえながら、歯で封を開ける。
  
「オフ会、楽しみだなー、ってなー」

 すしおは、トワさんと同じような話し方をする。イエネコは飼い主に似るというが、本当だ。

「そうだニャー」

 意外だ。すしおはあまり、外に出たがらないと思っていたが。

「自分でも、ビックリしてるんだよなー。出不精だったのになーってさー」

 すしおなりに、うれしいのかもしれない。

「なんだかんだいって、すしおは遠出も楽しんでいるニャー」
 
「運んでもらうなら、オレも動かなくていいからなー。家来がいるから、安心安全だしなー」

 すしおは自分の家族のことを、「家来」と呼んでいる。
 だが、これはただの愛称のようなもので。ホントにトワさんご主人たちを、召使だとは思っていない。
 彼の口調は、ただの照れ隠しである。
 
「ナインとも、話せるかニャ?」

 さすがにニャアも、犬語は解読できない。
 ペット同士だから、いけると思っていたんだけど。
 
「話せるといいなー」

 すしおの方も、ナインを悪くは思っていない。

「こんにちはー」

「にゃにゃーん」
 
 他の家からも、猫たちが続々とアパートの庭に集まってきた。

 このアパートの庭は、ネコたちの集会場となっている。
 ノラもイエネコも、関係ない。

 ネコたちはここを拠点として、情報収集の場として活用しているのだ。

 イエネコ組は、話し相手が欲しくてきたのだろう。

 ノラは、かつおぶしの匂いにつられたかな。

「人間界では、なにかおもしろいことがあるか?」

「あのゲーム、面白いにゃー」
  
 年配のモーさんが、『PペットRランFファクトリー』の感想を述べる。
 牛柄のネコで、我が集会の最年長だ。モー「さん」までが、名前である。
 飼い主は息子夫婦に、田舎から都会に呼んでもらった。いわゆる、三世代の世帯である。
 孫がゲーム好きなためか、モーさんも最新のゲームにも詳しい。

「人間がペットといっしょに、ゲームできるとは。我々の時代からは、考えられないな」
 
「でも、ご主人さまが高齢だから、ついていけてないにゃー」

「ヒーラーって、結構周りを見ていないといけないから、大変だにゃー。ご主人さまも、『動かなくていいから、楽だと思っていたのに』ってグチってたにゃー」

 飼い主は最近、ゲームをせず、掲示板を見る機会が増えたとか。

「動くのがしんどいなら、オレんちみたいにお店を構えて店番するといいぞー」
 
「そうするにゃー。でもビビちゃんみたいに、【以心伝心】なんて持ってにゃいんよー」

 モーさんが、ションボリする。

「そのうち、ご主人にもなんとなくわかってくるニャー」

「ありがとうにゃー。でもにゃー、そんなにうまくいくかにゃー?」

「なんだったら、ウチのポーション屋さんのお店番でもするかニャー?」

 ケントご主人の畑を管理してもらいたいし、相方が増えるのはうれしいかも。

「それとなく、ケントご主人に話してみるニャー」

「ありがとうにゃー。助かるにゃん」

 これで、モーさんの問題は解決した。

「人間の管理は、大変だな」

「そうね。ワタシたちは毎日がサバイバルだけど、イエネコはイエネコで、考えることが多そうね」

 ノラ二匹が、ニャアたちに対してそう告げる。
 
「お前たちも、ゲームできたらいいのにニャー。毎日のように会えるニャ」

「我々ノラは、ノラなりに楽しんでいるよ。ここは車の通りも制限しているから、安全だし」

 メスネコの方も、「暴走するチャリもいないからね」と。

 こういった、ノラの自由さはうらやましい。

 とはいえ、ケントご主人から離れたいかと言うと違う。

 もう、ケントご主人のいない生活は、考えられない。

「すっかり依存だな」

「かもニャー。でも、ケントご主人もお互い様だから、いいんだニャー」

「お前たちは、ご主人と守り合いながら暮せばいい。ノラはノラで、スリリングな毎日を助け合いながら生きるさ」

「お話できて、よかったニャー」

「おう。では、狩りの時間なのでこれで」

「寒くなったら、ここの軒下に逃げるニャー。空けておくからニャー」

「助かる。じゃあな」
 
 ニャアも、パイプを伝って家に戻る。

 もうすぐ、ケントご主人がオフロから上がってくるはずだ。

 かつおぶしは、自分ひとりで食べちゃったことにしよう。

 その後、ゲームにログインしたケントご主人に、ポーション屋さんの店員に心当たりがあると、それとなく伝えてみた。
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