最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~

椎名 富比路

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第六章 うちのコが、やっぱり最強で最愛

第49話 最終話 うちのコが最愛

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PペットRランFファクトリー』は、しばらく閉鎖されるそうだ。
 
 今後はアップデートが行われて、システムの大幅な見直しがされるという。

 ビビと話ができるのも、今日が最後だ。

「ビビ、お話できなくなるって」

『さみしいニャー。せっかくケントご主人に、気持ちを伝えることができていたのにニャン』

「ボクも、さみしいよ。ビビとお話できないなんて」

 ボクは、ビビを抱きしめる。

『ニャアは、ケントご主人が大好きだニャン』

「ボクも大好きだよ、ビビ」

『うれしいニャー。しゃべれなくなっても、気持ちは変わらないニャー』

「うん。ボクもだよ。ビビ」

『ありがとうニャー』
 
 突如、ビビの身体が光りに包まれた。

 光が晴れると、ビビはきょとんとしている。

「ビビ?」

 ボクが呼びかけても、ビビは『ニャー』と鳴くだけ。

 ああ、もう会話はできなくなったんだな。

「ビビ、お家に帰ろう」

 ボクが撫でてあげると、ビビは『ニャー』と鳴いた。

 さみしい気持ちのまま、ログアウトする。


 それから数ヶ月、ボクとビビは特に変わりなく生活をした。

 トワさんからは、相変わらずお惣菜を分けてもらっている。お刺身が出たときは、ビビの分まで用意してくれるようになった。

 ベルさんこと、鈴音りんねさんとも、交流は続けている。

 ときどきみんなで、イチさんとリモートでゲームを楽しんだ。
 PRFは遊ばなくなったけど、ゲームはそれだけじゃない。
 
 ただ、ビビとのお話ができないのが、心残りである。

 もっと言うべきことが合ったんじゃないか?
 言葉だけでは、伝わらないこともあるだろう。

 そんな気持ちが、ずっとグルグルとボクの頭の中を回っていた。


 しばらくして、PRFの大型アップデートが完了したとアナウンスが。

 さっそく、ボクはログインを行う。
 
「うわ、めちゃめちゃ早くなってる!」

 ログインに結構時間がかかったはずなのに、今はあっという間だ。
 いくら今までプレイヤーだったとはいえ、結構ログインは大変だったのに。

 セーフハウスからのスタートも、久しぶりだな。

 ゲーム世界だからか、放置してもホコリ一つ立っていない。
 
「ビビ、またお散歩ができるよ」

 話せないとわかっていても、ボクはつい声をかけてしまう。

『ニャアも楽しみだニャー』

「あれ? ビビ?」

『ニャ?』

 ビビが、しゃべっている。

 どうしてだ? バグは修正されたんじゃないのか?

「ちょっと、ケント! 大変なの!」

 ベルさんが、ボクたちのセーフハウスに飛び込んできた。

「どうしたんですか、ベルさん」

「ナインが!」

 え、ナインくんになにかあったんだろうか?
 だとしたら、ゲームどころじゃない。

『やあやあ、こんにちは、お兄さん方』

 しわがれた声のコボルドニンジャが、セーフハウスに入ってきた。

「あれ、ナインくん?」

『そうじゃ。ワシはナインじゃよ』

 なんと、ナインくんまで言葉を話しているではないか。

「どうしたんだい? キミって、話せたの?」

『なんでも、会話機能が本格的に実装されたそうじゃ』

 まさか、アップデートってそういう?

「ベルさん、冒険者に行きましょう。ヴォルフさんなら、事情を知っているかも」

「そうね。行くわよ、ナイン」

 ボクたちは、急いでギルドへ。

 そこも超満員だった。

 押し寄せてきた冒険者は、みんな揃って「ペットが急に話し始めた」という現象について解説を求めていた。やはりみんな、考えることは同じである。

「こっちだ」

 ヴォルフさんが、物陰から顔を出していた。

「セーフハウスに行きましょう。そこなら安全なので」

「案内してくれ」

 ボクたちは、ヴォルフさんを連れてセーフハウスまで戻る。

『トワごしゅじん、家主が帰って来たぞ』

『メイン盾きた! これで勝つる!』

 トワさんとイチさんも、入れ違いでボクの家にいた。

 すしおくんとホクサイくんも、話せるようになっているではないか。
 ホクサイくんに至っては、まさしく古のネット民のような用語を話す。英才教育が、行き届いている。ホクサイくん的に言えば、「経験が生きたな」ってやつかな。

 みんなでセーフハウスへ。

「結論から言うぞ。バグ取りは完了した。その際に、もういっそペットとの会話機能は実装しようとなった」

 ビビのこともあって、会話機能に関するデータは十分に揃っていた。
 会話パターンこそ、模擬人格によるものらしい。それでも、日常会話に近いやりとりは可能だという。

「ペット側の理解が追いつかなくなって、ストレスマッハで最悪頭がおかしくなって死ぬってことは?」

 イチさんの質問にも、ヴォルフさんは首を振った。

「お前さんのペットを見ればわかるが、しっかり順応しているぜ」

「把握」

 さすがイチさんである。一瞬で理解できたらしい。

「よかったね、ビビ」

『またケントご主人と、お話できるニャ』

 それだけじゃない。隠れて会話もしなくていいんだ。

「じゃあ、今から冒険に行こうか? ビビはどこに行きたい?」
 
『新エリアができたみたいだから、そこへ行ってみたいニャ』

 ヴォルフさんによると、そこにある素材を採取するクエストがあるらしい。

「決まったね。みんなで行きましょうか?」


 全員の承諾を得て、ボクたちは旅に出る。

「待ってビビ! アビリティ変えないと!」

『ニャア。そうだったニャ』

 ペットと意思疎通ができるアビリティである【以心伝心】は、アップデートによって不要になった。

「どうしよう。楽しそうなアビリティを今から探すとなると」

『実はもう決めてるニャー』

「そうなの? えっと……【猫鍋】?」

 わずかなスキマや、壺状のオブジェクトに潜れるアビリティである。

『掲示板で存在を発見して、楽しそうと思ったニャー』

「よし、【猫鍋】セットするね!」
 

 さらにかわいくなったビビを連れて、またPRFに旅立とう。


(おしまい)
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