追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。

椎名 富比路

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第二章 奥様はドラゴンだった!?

第15話 奥様が、ドラゴンだった

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「デーモンだかサーモンだか知らんが、いっちょブチかましたる!」

 リユが勢いづいて、デーモンに剣を振るった。火炎のエンチャントをかけて。

 毛むくじゃらのデーモンは、素手で剣を弾く。

「ムダムダ! グレーターデーモンはあらゆるダメージを三割減少……ん?」

「ほお。やるのう! そうでないと張り合いはないけん!」

 勝ち誇っていたペカディアに対し、リユは笑ってデーモンの攻撃を受け流した。一発で効かないなら、三発見舞う。

「三割減るんじゃろ? だったらディータ、三倍ドツけばええんじゃ!」

「……あはは。どえらいトンデモ理論を、展開するんだな。ウチの嫁さんは」

 リユの極論に、僕は笑ってしまった。

 それでこそ、僕の妻だ。日和っていたのがバカバカしいな。

「ヘニー、ヤツらの目を狙って。あれが弱点ってわけじゃないけど、的としてはデカいよ」

「承知しました」

「動きを止められたらOK。そうでなければ、あそこは急所じゃないってこと」

「はい!」

 僕の合図で、ヘニーが射撃をする。彼女の矢は、物理攻撃の直後に魔法攻撃を打ち込む。

 デーモンの目に、ヘニーの矢が突き刺さる。

 脳を直接焼く、防御無視の攻撃だ。

 しかし、デーモンにダメージが通っている感じはしない。脳という概念がないのか? あるいは。

「エネルギー源は別にあるみたいだ! ヘニーは、敵をけん制して。ボスは僕が倒す」

 親玉を倒さないと、死なないタイプの魔物かもしれない。

 リユにデーモン二体を相手にしてもらう形になるが、ペカディアを直接狙う。

「電光石火!」

 僕には、リーチを長くする技がある。このままヤツの心臓を……。

「ちい! ボニファティウス、どこまでも忌々しいやつ!」

 紫に光るムチで、雷魔法を付与したサーベルを弾かれた。ロングリーチによる斬撃も、打ち落とされてしまう。

 さすが、グレーターデーモンというわけか。

「ペカたん直接攻撃は許さないのだ」

 グレーターデーモンの一体が、

「ディータ、行ったぞい!」

「わかってる電光――くっ!?」

 僕は、デーモンの腹を貫こうとしたが、武器を収める。

「アッハハ! これな~んだ?」

 なんと、デーモンの腹にドワーフの王様が閉じ込められているではないか。他の個体にはそれぞれ、王妃らしき人と、お姫様らしい女性が眠っている。三体とも、ドワーフを飲み込んでいた。

「デーモンを殺したら、コイツらも死ぬから。おとなしく武器を捨てなさい!」

 ペカディアの指示通りに、僕は武器を捨てる。

「ディータお前!?」

「いうとおりにしよう」

「ほ、ほうじゃのう」

 リユもヘニーも、武器を放り投げた。

「いいんですか、リユ様」

「ええんじゃ。アイツに、ディータに武器はいらん」

「え?」

 ヘニーは、頭の上にはてなマークを出す。

「リユの言う通りさ。【魔改造】!」

 僕は魔改造で出した腕により、デーモンの腹を殴った。

 デーモンの身体を傷つけることなく、全員救出する。

「これが、ボニファティウス家の伝説、魔改造!?」

 どうにか、ドワーフの王族を救い出すことはできた。しかし、ここからだ。僕たちは、勝てるのか? ずっと戦っていたら負ける気はしない。だが、時間がかかりすぎる。

「きさん、よくもドワーフを酷い目に遭わせたのう。楽に死ねると思うなよ?」

 リユの髪の毛が、逆立った。こめかみから、角らしきものが生えてくる。

 あの角は、ドラゴンのものではないか。

 まさか、僕の妻は、ドラゴンだなんていわないよな?

「この龍姫りゅうき、リユ・キヴァを怒らせたこと、あの世で後悔せんね!」

 やっぱりドラゴンだったーっ!
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