追放先に悪役令嬢が。不法占拠を見逃す代わりに偽装結婚することにした。

椎名 富比路

文字の大きさ
52 / 63
第六章 最終決戦

第52話 故郷は、渡さない!

しおりを挟む
 魔物の群れは、ボニファティウスのもろい部分を的確に突いていた。

 といっても、僕の手にかかれば「罠にかかった」と言ってもいい。

 わざと両方の側面を攻めさせて、僕とリユで片付ける。ザコは騎士や冒険者に任せて、僕たちはボスクラスを撃滅した。

「燕返し、プラス、【ブレイズ】!」

 リユが炎の剣を振り回し、街を襲っているモンスターの群れを焼き払う。大型の敵には、直接刃を打ち込んだ。

「【電光石火】、乱れ打ち!」

 僕は上空から、モンスターだけを狙って雷撃を撃つ。

 雷に打たれて、魔物たちが消し炭となった。

「ディータ! ボニファティウスはでかすぎるわい! 一人じゃと埒が明かん!」

 雑魚モンスターを斬り捨てながら、リユが音を上げる。

「もう少しの辛抱だ。もうすぐ、相手の本丸がこちらへ攻めてくる」

 敵が業を煮やし、本格的な戦力を投下してくるはずだ。
 虎の子の海賊を沈められて、魔族だっておいそれと攻め込めるはずがない。あれだけ慎重に準備をして、南バリナンとボニファティウスを攻め落とそうとしていたはず。
 それをあっさりと、押し返されたわけだ。なりふり構うわけがない。

「さて。大物が釣れたよ!」

 アフロヘアの、オオカミ男が。

「なんじゃ? あのファンキーな髪型は?」

 リユのいうとおりだ。男の服装も、全身スパンコールのドレスとクセが強い。存在感が、凶悪極まりなかった。

「ひいいい! タスケテ!」

 逃げるオーガ族が、アフロの男に助けを求める。

「うっとおしいわ、んねっ」

 長い鋼鉄製のキセルで、男はオーガ族の頭を粉砕した。

「神にちかしいアタイに救済を求めるとか、アンタらの生命がいくらあっても足りないわけ。供物ってのは等価交換よ。もっと上等な命を差し出しなさい」

 オオカミ獣人族のニューハーフが、オーガの死体をヒールで踏み潰す。

「ごきげんよう。アタイはフェンリル族の王。魔王より、このボニファティウスを破壊しろと命じられたの。死にたくなければ、とっととこの場から逃げなさい。逃げたとしても、殺すけど」

「お前こそ、死にたくなかったらとっとと魔王の城へ帰れ。アフロがモヒカンにならないうちにな」

 フェンリルを名乗るアフロニューハーフが、こめかみに青筋を立てた。

「上等だわ。ちょうど、いいケンカの相手が見つからなかったところなの。アンタなら、楽しませてくれそうだわ」

「さっき倒したやつも、同じことを言って死んだけど?」

「パピルサグみたいな小物と一緒にしないでよ……んね!」

 スパンコールドレスから、白い足が伸びてきた。

 ヒールから繰り出されたキックが、僕の頬をかすめる。

「ディータ、血が」

 完全にかわしたかと思ったが、頬を切ってしまったようだ。

 なかなかやるね、見た目のインチキくささはともかく。

「驚かなくていいよ、これくらいで。リユ、キミは住民たちの避難を。いざとなったらドラゴンに戻って、城ごと吹っ飛ばせ」

「ディータ!?」

「大丈夫。そんな事態にはならないよ」

 僕がそう言っても、リユは立ち止まったまま、動かない。

「おめえ、なんで、そげな冷静にいれるんじゃ?」

「キミを信頼しているからだ。僕がどうなっても、キミさえいればボニファティウスは守れるだろう」

 もちろん、僕は負けるつもりはないけどね。

「死ぬなよ、ディータ!」

「僕は負けないよ。早く行って」

 僕が促すと、ようやくリユが動き出した。

「別れのあいさつは済んだ?」

 勝ちを確信しているのか、フェンリルが僕をあざ笑う。

「それは、お前の方だ」

「なんですって? 力の差がわからないわけじゃないでしょ?」

「まだわからないのか? 僕が彼女をいかせたのは、お前との相打ちを狙ったからじゃない」

 僕は、フェンリルにされたのと同じキックを放つ。

「へばああ!?」

 まあ、僕の方はちゃんと当てたけどね。

「お前を練習台にするためだ」

 魔物に故郷は、これ以上壊させない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

処理中です...