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「第一部 罪深さを求めて」 ダブル炭水化物は、罪の味 ~廃墟食堂でスケルトンの作るチャーハン~

『出前ニャン』のワーキャット

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 昼食時になり、わたしは寮に戻ります。

 なるべく地味目の服にお着替えしてキャスケット帽をかぶれば、カンペキ労働者風少女ですね。変装完了です!

「あらシスター・クリス、お出かけ?」

 おっと。同僚とバッタリ鉢合わせてしまいました!

「これはどうも。お昼ですか?」
「ええ。外へ食べに行くの? 一緒にどう?」
「この間に行った、お粥のお店ですか?」
「そうよ」

 この子たちなんかと行ったら、きっと精進料理的なお食事が待っています。
 それでは満たされません。

 たしかに彼女の勧めるお粥は、おいしいんですけれど。

 今のわたしは、チャーハン腹なのです!

「わたしはこれから、罪深い者がいるかどうか、パトロールに行ってまいります。食事はその後に取ろうかと」

 シスターの身でありながら、わたしは敬礼をします。

「でも、お一人じゃ危ないでしょ。付いていきましょうか?」
「一人で大丈夫です!」

 シスターはダンジョンに入ることも多いので、モンク職として戦うことも多いです。
 魔力が穢れてしまうので、刃物は扱えません。
 しかし、徒手空拳や鉄球付きの鈍器くらいなら持つこともあります。

 もっとも、ダンジョンでの役割はほとんどヒーラーで、武術も自身の純血を守るためなのですが。

「まあ、クリスなら大丈夫だとは思うけれど」
「むふーっ」 

 中でもわたしは、モンスターが強い地域出身でして。
 それなりにトレーニングを積んでいます。
 ゴロツキや低級モンスター程度なら勝てます。

「非戦闘員であるみなさんをお守りしながら戦うほうが、正直厳しいので」
「わかったわ。お気をつけて」
「行ってまいります!」

 また敬礼して、わたしは同僚にお詫びします。
 さて、店を探そっと。

 
「たしかこの路地ですよね? えっと……」

 路地に入ると、三人組のゴロツキがタムロしているではありませんか。

 一人の少女から、お財布を抜き取ろうとしてました。

 被害者は見たところ、ワーキャットです。
 赤い清潔なTシャツとキャップ、ベージュのロングパンツ姿ですね。
 あの少女の格好は。

「ほお、『出前ニャン』の方でしたか」

 少女は、出前持ちのようですね。
 空になったおかもちがありますから、間違いありません。

 これはまた、巨漢のゴロツキに道を塞がれてしまいました。

「ぐへへ。おチビのお嬢ちゃん、ちょっくら俺たちと付き合わねえか?」

 口から、お酒の臭いがしますね。すっかり、出来上がっています。
 邪魔ですね。今日のわたしは、気が立っています。お灸をすえて差し上げましょう。

「お腹に溜まったお酒を床にぶちまけたくなかったら、道を開けなさい」

 特に構えることもせず、わたしは三人に凄みます。
 やはりというか、ゴロツキ共はゲラゲラ笑い出しました。

「傑作だ! 俺たち相手にやりあおうってよ! バカじゃね?」
「バカはそちらです。悔い改めなさい」

 わたしは、三人には見えない速度で、巨漢の側面に回り込みます。軽く指をひねってやりました。

「あっででででで!」

 握った手の甲を爪の先で押し込んだだけで、巨漢はうずくまってしまいます。

「ふざけやがって!」

 そばにあった角材をつかみ、やせっぽちのゴロツキがわたしに殴りかかってきました。
 脚の甲を、踏んづけてやります。

「あっぐ!」

 角材を放して、やせ男が脚を抱きしめながら飛び跳ねました。
 もうひとりも、わたしに飛びかかろうとします。
 が、わたしは巨漢を盾にして相手の進撃を食い止めました。

「これ以上痛い目にあいたくなければ、去りなさい」
「や、やろう!」

 わたしの制止を聞かず、男は突撃してきます。見たところ、格闘家崩れのようですね。

「哀れな。彼に救いの手を」

 わたしは巨漢から手を放して、格闘男の拳をかわしました。

「フェイントもクソもない、真っ向勝負だと!?」

 首筋にトン、と手刀を打ちます。

「あなたを倒すのに、フェイントなど必要だと思っていたのですか?」

 格闘男が、白目をむいて倒れました。

「ひいいいい!」

 圧倒的な戦力差を見せつけられてか、三人は脱兎のごとく逃げ出します。
 最初からそうしていればいいものを。
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