38 / 269
ハニートーストは、罪の味 ~オタカフェのオムライスとハニトー~
ようやくありついたハニートーストは、罪の味
しおりを挟む
「小さいサイズで構わないと言ったんですが?」
「助けてくださったお礼に、ミニでもデラックスにしてみました」
これはもうまさしく、お菓子の家ならぬ「お菓子の城」と言えます。
お皿にチョコのソースが散りばめられて、ぜいたくこの上ありません。
「アイスから、いただきます」
う~んっ。これは、実に罪深い!
パン一斤だったので、食べられるかどうか不安でしたが、これは入っちゃいます。トッピングなどが控えめなのが、またシンプルで素晴らしい。隣の席なんて全部乗せですからね。
カットされたいちごを一口、いただきます。これもまた、パンと調和しています。天然のジャムですよ! バナナも、酸味がきいてまた格別ですね。
味としては、豪華なフルーツサンドといえましょう。教会でも出るのですが、あっちは普通にジャムっぽく扱っているだけです。お砂糖も控えめで、ほとんど果物の甘さしかありません。
なのに、これはお砂糖の爆弾ですね。
どんどん、お城を崩していきます。浴槽の中身へ。
「中身は、全部食パンなんですね」
さいの目に切って、バターを染み込ませています。あ~、サクサクですね。アイスを塗って食べる、と。
「なるほど。なるほどなるほど。あーなるほど」
もう、語彙力が死にますね。咀嚼するだけで、感激です。サクサクっとした食感が、癖になりそうですね。
「ごちそうさまでした」
「お気に召しましたでしょうか?」
「はい。とっても。お二方も、お気持ちが通じ合ってよかったです」
わたしが言うと、二人が恥じらいながらも仲良さそうにします。
その風景が、わたしにとってなによりのごちそうかも知れませんね。
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~
あれから、どれくらい経ったでしょう? 時々思い出します。
「こんにちは。また来ちゃいました」
「ちーす! いらっしゃーい冒険者さん」
ミニスカートが眩しい制服に身を包んで、日焼けエルフさんが出迎えてくれます。
ゴートブルのハンバーグを食べに、わたしは再び喫茶店を訪れました。こちらのご夫婦も、共にエルフさんなんですよねぇ。だから、思い出したのかも。
元気にしていらっしゃいますかね?
「また焼けましたね」
「そうそう。見てココ」
エルフさんが、服をめくります。鎖骨付近に、ブラ紐の日焼け残りがありました。
「――ッ!」
わたしは……息を呑みます。
彼女の鎖骨に、星型のホクロを見つけました!
あのときわたしが助けたエルフさんは、この人だったんですね!? おそらく厨房のダンナさんも。
人って、変わるものなんですねぇ。まあ、あれから半年も経ちましたから。
当時はわたしも化粧が濃かったので、あちらもわたしを覚えていないようですね。
「どうかした?」
エルフさんがキョトンとしていました。
「いえ。胸があってうらやましいなと。それよりハンバーグを」
「あいよーっ!」
いやあ。まさかあのエルフご夫婦が、あのときのカップルだったとは。いいことはするもんですね。
「あれ、帰ってたの? シスター・クリス」
「シスター・エマ。ごきげんよう」
教会に帰ると、エマさんがザンゲ室の番をする場面に出くわしました。
「ちょっといい感じのご夫婦を見かけまして。こちらまで気持ちよくなるくらいでした」
「よかったわぁ。あたしが見てあげたカップルの一人かしら? そういえば、半年前のカップルなんてもうザ・根暗って感じだったわ」
エマさんが、当時を語ります。あれ、どこかで聞いたことがありますね……。
「なんか、『ダンナとマンネリなんですー』っていうから、『日サロにでも行けば?』ってアドバイスしてあげたのね。そしたら後日、喜ばれたって。口調まで変わってたわ」
な、なるほど。元凶はここにいましたか……。
「どうかした?」
「ええっ、い、いえ。なんでもありませんよー」
(ハニートースト編 完)
「助けてくださったお礼に、ミニでもデラックスにしてみました」
これはもうまさしく、お菓子の家ならぬ「お菓子の城」と言えます。
お皿にチョコのソースが散りばめられて、ぜいたくこの上ありません。
「アイスから、いただきます」
う~んっ。これは、実に罪深い!
パン一斤だったので、食べられるかどうか不安でしたが、これは入っちゃいます。トッピングなどが控えめなのが、またシンプルで素晴らしい。隣の席なんて全部乗せですからね。
カットされたいちごを一口、いただきます。これもまた、パンと調和しています。天然のジャムですよ! バナナも、酸味がきいてまた格別ですね。
味としては、豪華なフルーツサンドといえましょう。教会でも出るのですが、あっちは普通にジャムっぽく扱っているだけです。お砂糖も控えめで、ほとんど果物の甘さしかありません。
なのに、これはお砂糖の爆弾ですね。
どんどん、お城を崩していきます。浴槽の中身へ。
「中身は、全部食パンなんですね」
さいの目に切って、バターを染み込ませています。あ~、サクサクですね。アイスを塗って食べる、と。
「なるほど。なるほどなるほど。あーなるほど」
もう、語彙力が死にますね。咀嚼するだけで、感激です。サクサクっとした食感が、癖になりそうですね。
「ごちそうさまでした」
「お気に召しましたでしょうか?」
「はい。とっても。お二方も、お気持ちが通じ合ってよかったです」
わたしが言うと、二人が恥じらいながらも仲良さそうにします。
その風景が、わたしにとってなによりのごちそうかも知れませんね。
~~~~~ ~~~~~ ~~~~~ ~~~~~
あれから、どれくらい経ったでしょう? 時々思い出します。
「こんにちは。また来ちゃいました」
「ちーす! いらっしゃーい冒険者さん」
ミニスカートが眩しい制服に身を包んで、日焼けエルフさんが出迎えてくれます。
ゴートブルのハンバーグを食べに、わたしは再び喫茶店を訪れました。こちらのご夫婦も、共にエルフさんなんですよねぇ。だから、思い出したのかも。
元気にしていらっしゃいますかね?
「また焼けましたね」
「そうそう。見てココ」
エルフさんが、服をめくります。鎖骨付近に、ブラ紐の日焼け残りがありました。
「――ッ!」
わたしは……息を呑みます。
彼女の鎖骨に、星型のホクロを見つけました!
あのときわたしが助けたエルフさんは、この人だったんですね!? おそらく厨房のダンナさんも。
人って、変わるものなんですねぇ。まあ、あれから半年も経ちましたから。
当時はわたしも化粧が濃かったので、あちらもわたしを覚えていないようですね。
「どうかした?」
エルフさんがキョトンとしていました。
「いえ。胸があってうらやましいなと。それよりハンバーグを」
「あいよーっ!」
いやあ。まさかあのエルフご夫婦が、あのときのカップルだったとは。いいことはするもんですね。
「あれ、帰ってたの? シスター・クリス」
「シスター・エマ。ごきげんよう」
教会に帰ると、エマさんがザンゲ室の番をする場面に出くわしました。
「ちょっといい感じのご夫婦を見かけまして。こちらまで気持ちよくなるくらいでした」
「よかったわぁ。あたしが見てあげたカップルの一人かしら? そういえば、半年前のカップルなんてもうザ・根暗って感じだったわ」
エマさんが、当時を語ります。あれ、どこかで聞いたことがありますね……。
「なんか、『ダンナとマンネリなんですー』っていうから、『日サロにでも行けば?』ってアドバイスしてあげたのね。そしたら後日、喜ばれたって。口調まで変わってたわ」
な、なるほど。元凶はここにいましたか……。
「どうかした?」
「ええっ、い、いえ。なんでもありませんよー」
(ハニートースト編 完)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる