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第二部 「罪は悪役令嬢とともに」 ロースター焼肉は、罪の味 ~路地裏の焼き肉屋で、公爵令嬢と肉を焼く~
焼肉屋のお通しキャベツは、罪の味
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例の、カウンター式の焼き肉屋さんに入りました。
わたしは、慎重に歩を進めます。が……。
「キャッ!」
さっそく、王女が洗礼を浴びます。
わたしは王女の腕を掴み、転倒しそうになった王女をヘルプしました。
こうなることが、わかっていたからです。
「床がツルッツルですわ!」
「油で地面がコーティングされているのです。こういう焼肉屋さんあるあるです」
「警戒が必要ですわ……うわわっ!」
また、王女はコケそうになりました。
他のお客さんの迷惑になりそうなので、早く座りましょう。
二人なので、ロースターを挟んで向かい合わせになります。
「御覧なさい、この格好を。今日は商家の娘という設定。好きなだけお食べなさいな」
「では、お言葉に甘えますね」
「ホントにあなたは、遠慮をしませんわね」
「一緒にいるだけでも、譲歩しているのですよ」
わたしは、おごってもらう必要などないくらい、蓄えはあります。
が、それはそれ。
出してくださると言うなら、お断りするほうが失礼というもの。
店員さんが来てくださいました。
「おまたせしました。キャベツです」
木製のボールに入ったキャベツが、コンとテーブルに置かれます。
「お先に、お飲み物をお伺いしますね」と、オーダーを聞いてきました。
「わたくしは、アイスミルクティーを」
「スウウウウウ……」
ウル王女を凝視しながら、わたしは沈黙で警告します。
「え、なんですの?」
「ロイヤルミルクティーなんて、ありませんよ」
お上品な飲み物がある焼肉店は、たしかにございます。
でも、そういうお店に入る気分ではないのです。
「そうですの? ホントですわ」
ようやく、この店で自分の常識が通用しないとわかったようです。
「麦のお茶をください」
「お二方とも、ノンアルコールですね?」
「はい。お願いします」
飲み物が決まったので、お肉を頼みます。
「では、わたしが頼んでいいですか?」
「ええ。お任せいたします」
オーダーを受け取った店員さんが、奥へと向かいました。
「鉄板焼でしか、お肉って食べたことはありませんわ。楽しみですわね」
店員の後ろ姿を見ながら、王女は胸を踊らせています。
「分厚いお肉とかは、期待なさらないでくださいね」
「ええ。見ればわかりましたわ」
薄いお肉をトングでひっくり返している様子を、王女は興味深そうに見ていました。
「焼き方は教えます。自分でやってみてください。きっと楽しいですよ」
「今から楽しみですわ」
しきりに手を何度も動かして、王女はシミュレーションをしています。ならば、大丈夫そうですね。
「それまで、このキャベツでしのぎましょう」
「えらいざく切りなんですわね」
「食感を大切にしたのですよ」
わたしは、指で直接キャベツをつまみます。
「手づかみですの?」
「これが、おいしいのです。タレをつけて」
パリッと音を立てて、わたしはキャベツをかじりました。
「うん。これは罪深い!」
みずみずしいキャベツに、にんにくの効いた濃厚なしょうゆダレの味わい。これが最高においしいのです。腹ごなしに丁度いいですね。
「わたくしも……むっ、これは麗しい!」
ウル王女も、夢中になって食べています。
「これは、たまりませんわ!」
「でしょ?」
二人してバリバリいわせなから、キャベツを貪りました。
本来は、タレの味を確認するために、お店が推奨している食べ方でしたムシャムシャ。
が、この味はお通しという概念を軽く凌駕していますバリボリ。
「お肉が入りますでしょうかしら?」
「あなたなら、大丈夫でしょう」
王女はわたしより健啖家ですので、取り合いになりました。
「すいません、キャベツのおかわりをいただけませんこと?」
「ああーっ、いえいえ結構です。ウルさん、それはワナです!」
かつてわたしも、このお通しトラップにひっかかり、お肉が入らないという事態に陥ったことがありました。
わたしは、慎重に歩を進めます。が……。
「キャッ!」
さっそく、王女が洗礼を浴びます。
わたしは王女の腕を掴み、転倒しそうになった王女をヘルプしました。
こうなることが、わかっていたからです。
「床がツルッツルですわ!」
「油で地面がコーティングされているのです。こういう焼肉屋さんあるあるです」
「警戒が必要ですわ……うわわっ!」
また、王女はコケそうになりました。
他のお客さんの迷惑になりそうなので、早く座りましょう。
二人なので、ロースターを挟んで向かい合わせになります。
「御覧なさい、この格好を。今日は商家の娘という設定。好きなだけお食べなさいな」
「では、お言葉に甘えますね」
「ホントにあなたは、遠慮をしませんわね」
「一緒にいるだけでも、譲歩しているのですよ」
わたしは、おごってもらう必要などないくらい、蓄えはあります。
が、それはそれ。
出してくださると言うなら、お断りするほうが失礼というもの。
店員さんが来てくださいました。
「おまたせしました。キャベツです」
木製のボールに入ったキャベツが、コンとテーブルに置かれます。
「お先に、お飲み物をお伺いしますね」と、オーダーを聞いてきました。
「わたくしは、アイスミルクティーを」
「スウウウウウ……」
ウル王女を凝視しながら、わたしは沈黙で警告します。
「え、なんですの?」
「ロイヤルミルクティーなんて、ありませんよ」
お上品な飲み物がある焼肉店は、たしかにございます。
でも、そういうお店に入る気分ではないのです。
「そうですの? ホントですわ」
ようやく、この店で自分の常識が通用しないとわかったようです。
「麦のお茶をください」
「お二方とも、ノンアルコールですね?」
「はい。お願いします」
飲み物が決まったので、お肉を頼みます。
「では、わたしが頼んでいいですか?」
「ええ。お任せいたします」
オーダーを受け取った店員さんが、奥へと向かいました。
「鉄板焼でしか、お肉って食べたことはありませんわ。楽しみですわね」
店員の後ろ姿を見ながら、王女は胸を踊らせています。
「分厚いお肉とかは、期待なさらないでくださいね」
「ええ。見ればわかりましたわ」
薄いお肉をトングでひっくり返している様子を、王女は興味深そうに見ていました。
「焼き方は教えます。自分でやってみてください。きっと楽しいですよ」
「今から楽しみですわ」
しきりに手を何度も動かして、王女はシミュレーションをしています。ならば、大丈夫そうですね。
「それまで、このキャベツでしのぎましょう」
「えらいざく切りなんですわね」
「食感を大切にしたのですよ」
わたしは、指で直接キャベツをつまみます。
「手づかみですの?」
「これが、おいしいのです。タレをつけて」
パリッと音を立てて、わたしはキャベツをかじりました。
「うん。これは罪深い!」
みずみずしいキャベツに、にんにくの効いた濃厚なしょうゆダレの味わい。これが最高においしいのです。腹ごなしに丁度いいですね。
「わたくしも……むっ、これは麗しい!」
ウル王女も、夢中になって食べています。
「これは、たまりませんわ!」
「でしょ?」
二人してバリバリいわせなから、キャベツを貪りました。
本来は、タレの味を確認するために、お店が推奨している食べ方でしたムシャムシャ。
が、この味はお通しという概念を軽く凌駕していますバリボリ。
「お肉が入りますでしょうかしら?」
「あなたなら、大丈夫でしょう」
王女はわたしより健啖家ですので、取り合いになりました。
「すいません、キャベツのおかわりをいただけませんこと?」
「ああーっ、いえいえ結構です。ウルさん、それはワナです!」
かつてわたしも、このお通しトラップにひっかかり、お肉が入らないという事態に陥ったことがありました。
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