神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

文字の大きさ
80 / 289
第二部 「罪は悪役令嬢とともに」 ロースター焼肉は、罪の味 ~路地裏の焼き肉屋で、公爵令嬢と肉を焼く~

カルビとライスのタッグは、罪の味

しおりを挟む
 わたしたちの前に、カルビとロース、そして待望のライスが。
 お茶碗に入ったライスがおでましですよ。

「白いごはんですって? ライスなんて食べたら、お腹が膨れてお肉が入らなくなるじゃないですか? お腹のたまり具合は、キャベツの比ではありませんわ」

 やはりというか、ウル王女がマウントを取ってきます。

「わかっていませんね、あなたは」
「なんですって!?」
「焼き肉といえば、白いライスですよ! あなたにも、それがきっとわかります!」

 ウル王女の正論パンチに対し、反論します。

「ええ、そこまでいうなら、試してみましょう」

 では、カルビを。
 このお店のお肉は、面積が広いですね! よくわかっています!

「カルビは一気に焼きましょう。焼くとすぐに固くなってしまうそうなので、蒸すように焼くのがポイントだそうです」
「やってみますわ!」

 王女は、カルビだけがのったお皿を、ロースターに傾けました。
 一気にじゅわっと焼いていきます。

「いい感じですよ。これをいただきましょう」
「では、今度こそタレにダイブですわ!」

 タレ皿に、焼きたてカルビが投下されました。
 ジュッと音を立てて、カルビがタレに浸かります。

 さて、お味は。


「……罪深うまいぃ!」


「おおおおおお、おいしいですわ!」


 一瞬しょうゆダレに漬けただけで、この深みですよ。
 なんという、コストパフォーマンスでしょう?
 お肉の柔らかさのなせる技です。

「で、これから一気にお米をかきこむ!」

 お茶碗を掴んで口の中にライスを詰め込んでいきました。

「うーん、これですよ! これこれ!」

 わたしは、これをやりに来た!

 しょうゆダレの濃い味付けに、白い米の甘みとふんわりがベストマッチング!
 この罪深うまさ、まさにエース級ですよ。

 タンパク質と炭水化物で頬をいっぱいにするという、この背徳感はたまりませんね。

「すごい顔をなさっていましてよ、クリスさん」

 ハムスターのように米を詰め込んだわたしのホッペを見て、ウル王女が若干引いていました。

「頬が落ちるとは、今の貴女のことを言うのですね?」
「あなたも試してみなさい。そしたら、この意味が伝わりますから」

 そう話したつもりでした。
 しかし、「モギュモギュ」と言葉になりません。
 これ以上は口を開けられないので、お箸で催促します。

「そんなにおっしゃるのでしたら……っん!?」

 お箸でお米を少々つまんで、王女も米と肉を融合させます。

「はああああ、これはおいしすぎます。では、こういうのはどうでしょう?」

 残った皿のカルビをドーンと込めの上に乗せて、王女はカルビ丼にしやがりましたよ。
 もうなにをすべきかを理解しました。
 やはり、彼女の順応さは段違いですね。

「うんうん、モグモグ。うんうん、パクパク」

 王族レディが、今はカルビを貪るグールと化しました。
 キャベツで小休止を挟む辺り、人間の理性は残っているようですが。

「ちょっと。わたしより、ご飯を口に詰め込んでいるではありませんか」

 巨大ハムスターとなった王女に、わたしは吹き出してしまいます。

「だって、このおいしさは止まりません」

 口をモゴモゴと言わせながら、王女はなおもライスを口に詰める作業を止めませんでした。

 御者さんが見たら泣きますね。

「そういえば、御者さんは食べられないんじゃ?」
「明日はオフにして差し上げました。好きなだけお肉を食べなさいと、お金は渡してあります」

 御者さんは、ご家族と別の焼肉屋で楽しんでいるそうです。
 三時間後に待ち合わせをしているとか。

「三時間も、お肉を?」
「いいえ。二時間でお風呂とデザートと行きましょう」
「いいですね!」

 銭湯で匂いを落とすことまで考えていらっしゃったとは。
 さすが王族ですね。

「さて、ご飯はロースのために残しておきましょう」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

「雑草係」と追放された俺、スキル『草むしり』でドラゴンも魔王も引っこ抜く~極めた園芸スキルは、世界樹すら苗木扱いする神の力でした~

eringi
ファンタジー
「たかが雑草を抜くだけのスキルなんて、勇者パーティには不要だ!」 王立アカデミーを首席で卒業したものの、発現したスキルが『草むしり』だった少年・ノエル。 彼は幼馴染の勇者に見下され、パーティから追放されてしまう。 失意のノエルは、人里離れた「魔の森」で静かに暮らすことを決意する。 しかし彼は知らなかった。彼のスキル『草むしり』は、対象を「不要な雑草」と認識すれば、たとえドラゴンであろうと古代兵器であろうと、根こそぎ引っこ抜いて消滅させる即死チートだったのだ。 「あれ? この森の雑草、ずいぶん頑丈だな(ドラゴンを引っこ抜きながら)」 ノエルが庭の手入れをするだけで、Sランク魔物が次々と「除草」され、やがて森は伝説の聖域へと生まれ変わっていく。 その実力に惹かれ、森の精霊(美女)や、亡国の女騎士、魔王の娘までもが彼の「庭」に集まり、いつしかハーレム状態に。 一方、ノエルを追放した勇者たちは、ダンジョンの茨や毒草の処理ができずに進行不能となり、さらにはノエルが密かに「除草」していた強力な魔物たちに囲まれ、絶望の淵に立たされていた。 「ノエル! 戻ってきてくれ!」 「いや、いま家庭菜園が忙しいんで」 これは、ただ庭いじりをしているだけの少年が、無自覚に世界最強に至る物語。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...