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パーフェクトな、罪の味 ~オタカフェのフルーツパフェ~
コーヒー牛乳プリンは、罪の味
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次の日、わたしはまたオタカフェ作戦会議に呼ばれました。
「これさあ、ウチが出そうとした商品だよね……」
オカシオ伯爵が、肩を落とします。
我々が食べているのは、小さな瓶に入ったプリンでした。
ウル王女が運営するスパで出す、テイクアウト商品だとか。
カラメルは、ありません。
なのにほろ苦さと甘さが絶妙にマッチングしています。
それもそのはず、このプリンは、コーヒー牛乳を固めて作られたものですから。
これは、罪深い。
お風呂上がりなどに、最適ですね。
コーヒー牛乳でプリンを作った、というコンセプトもすばらしい。
甘さが保証される上に、ほんのりした苦味が期待できます。
子どもだけではなく、大人が食べてもおいしいでしょう。
なにより、「茶色」というのが気に入りました。
スイーツで茶色という、尊さ。
茶色いは尊いのです。
「この発想はあったんだよなぁ。コーヒー牛乳って味も濃いし、プリンとして最適の素材だと思ったんだよね」
オカシオ伯爵は、頭を抱えました。
「あなたが却下したんでしょ? オカシオ伯爵!」
「瓶代が、バカにならないと思ったの! ウチは食器のラインがないんだよ!」
ウル王女によると、瓶は返却してくれたらそこにプリンを固めていれてあげるとのことです。
なるほど、経済的です。
オフロに入っている間に、プリンが出来上がっているという寸法。
ウル王女は、商売上手ですね。
「その手があったかぁ。やるなあ。王女にしておくのがもったいないよ」
「そうね。あなたと経営者を入れ替えてほしいくらいだわ」
ここまで会議が難航すると、カレーラス子爵もオカシオ伯爵に対して辛辣になってきます。
「コーヒーも、牛乳と足すと味が落ちるでしょうが! 保存するとしても、もっと雑味が出てしまう。本格的なコーヒーからは遠くなるじゃんか!」
「なんであんたはこうも、アレもダメこれもダメと……」
以前のオカシオ伯爵は、こんな日和った人ではありませんでした。
大胆な戦略で、大きい事業を次々と成功させています。
ただ、うまくいきすぎて慎重になりすぎているだけなのでした。
守るものが大きくなりすぎて、どうして足踏みしてしまうのです。
「ボクだってねえ、好きでダメ出ししているわけじゃないんだよ! ただ、ボクがしくじると従業員全員のクビが飛んじゃうだろ?」
めんどくさい人ですね。
今日は伯爵もお疲れだというので、また明日ということに。
わたしにも、シスターの役割がありますからね。
仕事を終えると、カレーラス子爵とヘルトさんから呼び出されます。
「シスターエンシェント、ちょっとこのコ借りるわ」
「ええ、どうぞ」
我が上司とも、子爵は顔見知りでしたか。
そのまま、夕飯をごちそうになりました。
ああ、麻婆豆腐が天罰い! でも罪深いですね。
「昔のオカシオさんは、ホンットに後先考えない人でね」
戦地に置き去りにされて孤立した子爵を、単身で助けたのだとか。
そればかりか、そのまま敵軍を二人だけで壊滅させたそうです。
たくましいですね。今の伯爵からは考えられません。
「気にしないでね、クリス。この人、酔うといつも昔話ばっかするから。いわゆる老人会よ」
ヘルトさんが、手をヒラヒラとさせました。
「なにが老人会よ。いいこと? あんたもいずれ、こうなるのよ。聞かれてもいない武勇伝とか語りだすのよ」
「ならないわよ。あたしは師匠とは違うもの。しゃべる相手は選びますぅ」
「なんですってぇ!?」
ヒートアップしそうなので、「まあまあ」と二人をなだめます。
「あんたも大変よねぇクリスちゃん。友だちとか、いないの?」
「このコーヒー牛乳プリンを作った女性こそ、わたしの友だちでして」
空瓶を見せながらわたしが言うと、二人は「ああ」とため息をつきました。
「これさあ、ウチが出そうとした商品だよね……」
オカシオ伯爵が、肩を落とします。
我々が食べているのは、小さな瓶に入ったプリンでした。
ウル王女が運営するスパで出す、テイクアウト商品だとか。
カラメルは、ありません。
なのにほろ苦さと甘さが絶妙にマッチングしています。
それもそのはず、このプリンは、コーヒー牛乳を固めて作られたものですから。
これは、罪深い。
お風呂上がりなどに、最適ですね。
コーヒー牛乳でプリンを作った、というコンセプトもすばらしい。
甘さが保証される上に、ほんのりした苦味が期待できます。
子どもだけではなく、大人が食べてもおいしいでしょう。
なにより、「茶色」というのが気に入りました。
スイーツで茶色という、尊さ。
茶色いは尊いのです。
「この発想はあったんだよなぁ。コーヒー牛乳って味も濃いし、プリンとして最適の素材だと思ったんだよね」
オカシオ伯爵は、頭を抱えました。
「あなたが却下したんでしょ? オカシオ伯爵!」
「瓶代が、バカにならないと思ったの! ウチは食器のラインがないんだよ!」
ウル王女によると、瓶は返却してくれたらそこにプリンを固めていれてあげるとのことです。
なるほど、経済的です。
オフロに入っている間に、プリンが出来上がっているという寸法。
ウル王女は、商売上手ですね。
「その手があったかぁ。やるなあ。王女にしておくのがもったいないよ」
「そうね。あなたと経営者を入れ替えてほしいくらいだわ」
ここまで会議が難航すると、カレーラス子爵もオカシオ伯爵に対して辛辣になってきます。
「コーヒーも、牛乳と足すと味が落ちるでしょうが! 保存するとしても、もっと雑味が出てしまう。本格的なコーヒーからは遠くなるじゃんか!」
「なんであんたはこうも、アレもダメこれもダメと……」
以前のオカシオ伯爵は、こんな日和った人ではありませんでした。
大胆な戦略で、大きい事業を次々と成功させています。
ただ、うまくいきすぎて慎重になりすぎているだけなのでした。
守るものが大きくなりすぎて、どうして足踏みしてしまうのです。
「ボクだってねえ、好きでダメ出ししているわけじゃないんだよ! ただ、ボクがしくじると従業員全員のクビが飛んじゃうだろ?」
めんどくさい人ですね。
今日は伯爵もお疲れだというので、また明日ということに。
わたしにも、シスターの役割がありますからね。
仕事を終えると、カレーラス子爵とヘルトさんから呼び出されます。
「シスターエンシェント、ちょっとこのコ借りるわ」
「ええ、どうぞ」
我が上司とも、子爵は顔見知りでしたか。
そのまま、夕飯をごちそうになりました。
ああ、麻婆豆腐が天罰い! でも罪深いですね。
「昔のオカシオさんは、ホンットに後先考えない人でね」
戦地に置き去りにされて孤立した子爵を、単身で助けたのだとか。
そればかりか、そのまま敵軍を二人だけで壊滅させたそうです。
たくましいですね。今の伯爵からは考えられません。
「気にしないでね、クリス。この人、酔うといつも昔話ばっかするから。いわゆる老人会よ」
ヘルトさんが、手をヒラヒラとさせました。
「なにが老人会よ。いいこと? あんたもいずれ、こうなるのよ。聞かれてもいない武勇伝とか語りだすのよ」
「ならないわよ。あたしは師匠とは違うもの。しゃべる相手は選びますぅ」
「なんですってぇ!?」
ヒートアップしそうなので、「まあまあ」と二人をなだめます。
「あんたも大変よねぇクリスちゃん。友だちとか、いないの?」
「このコーヒー牛乳プリンを作った女性こそ、わたしの友だちでして」
空瓶を見せながらわたしが言うと、二人は「ああ」とため息をつきました。
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