112 / 269
パーフェクトな、罪の味 ~オタカフェのフルーツパフェ~
小さい罪たち
しおりを挟む
「何度か、失敗しちゃえばいいんですよ」
「え? キミは何を言って?」
わたしが提案すると、伯爵は眉をひそめました。
「そもそもあなたは、ご自身が最大のしくじりを犯していると理解していません。そこから変えていかないと」
「ボクのミスとは?」
「挑戦をしないこと」
現状維持、足踏みしていること。
それこそが、彼にとって最大のミスだったのです。
「まずは意識を変えて、色々とテストすることです」
ウル王女だって、どれほどの失敗を続けてきたか。
彼女が歩んできた道は、決して平坦ではなかったのでした。
どれだけおいしくても、ボリュームの大小だけで売上に響いてしまいます。
そのさじ加減に、彼女だどれだけ苦心しているか。
バランスを読み間違えれば、破産が待っています。
わたしが語ると、その場がシン、と静まり返りました。
「ミスったら、どうするんだ?」
「あなたが責任を取ればいいだけです。社員を信じて、罪はすべてご自身がかぶる」
伯爵には負担でしょうが、何もしなければジリ貧です。
在庫と負債を抱え、沈んでいくだけ。
「口上は立派だ。しかし、成功する保証がどこにある? ミスを続ければ、今度こそウチは赤字なんだよ?」
「大丈夫です。かつてそうやって失敗し、立ち直った人をお呼びしましょう」
とても信頼できる人だと、伝えておきました。
後日、その人をゲストとして連れてきます。
「どうも、モーリッツ・シュセルです……」
わたしが連れてきたのは、かつてのパーティ仲間でした。
「これはモーリッツさん、おウワサはかねがね」
「いえ。オレは大したことは」
「で、シスターからの依頼であなたがいらしたということは」
「はい。オレも、シスタークリスのいうとおりかと」
やはり、経験者の言葉となると重みが違いました。
「メニューを見せてもらいました。一つ一つは整っていると思います。ただ、冒険心は足りない」
「ふーむ、そうか」
「コーヒーが売りなので、地味なメニューでもお客は満足すると思います。が、カフェと言ってもオタカフェです。華やかさはほしい」
「そうなんだよ。女性客の心を掴む必要性は、感じているんだ。しかし、どうにもわからん」
伯爵的には、お手上げという様子だった。
「では、女性客自身に決めてもらいましょう」
「なんですって?」
「小分けですよ。デザートを小分けでお出しするんです」
好きなものをトッピングしてもらうのだとか。
「ですが、それではスパのプレートと変わらないじゃないですか?」
「そこで、これです」
モーリッツさんが用意したのは、大きめのグラスでした。
「ここに各自に、ほしいデザートを詰めるだけ詰めてもらうんです」
コーンフレークをベースに、カットフルーツやチョコソース、アイスや生クリームなどを入れ放題にするとのこと。
「それでは赤字になるのでは?」
「いいんです。そうやって楽しんでもらって」
「不人気の商品も、出てしまうのでは?」
「構いません。それが狙いなので」
後日、このビュッフェスタイルのデザート詰め放題が実行に移されました。
いちご・バナナ・桃と、女性客らが思い思いのデザートをグラスへ放り込みます。
生クリームを流し込み、チョコやベリーソースでコーティングしていきました。
仕上げにスナックをトッピングしていきます。
あああ。小さいながらも、罪ができあがっていきますね。
「うんうん。正解はありませんが、彼女たちなりの最適解に近づいている気がします」
手応えバッチリという感じで、モーリッツさんはうなずいていました。
「ああ、在庫がこんなに」
伯爵の方は、あまりご機嫌ではないようですね。
わたしがいただきますから、ご安心を。
しかし、もっとも大事な仕事があったのは、子爵たちでした。
ヘルトさんと協力して、女性客が作ったオリジナルデザートを写真に収めていきます。
「何をしているので?」
「あれは試作品です。お客様に作っていただいたんですよ」
「え? キミは何を言って?」
わたしが提案すると、伯爵は眉をひそめました。
「そもそもあなたは、ご自身が最大のしくじりを犯していると理解していません。そこから変えていかないと」
「ボクのミスとは?」
「挑戦をしないこと」
現状維持、足踏みしていること。
それこそが、彼にとって最大のミスだったのです。
「まずは意識を変えて、色々とテストすることです」
ウル王女だって、どれほどの失敗を続けてきたか。
彼女が歩んできた道は、決して平坦ではなかったのでした。
どれだけおいしくても、ボリュームの大小だけで売上に響いてしまいます。
そのさじ加減に、彼女だどれだけ苦心しているか。
バランスを読み間違えれば、破産が待っています。
わたしが語ると、その場がシン、と静まり返りました。
「ミスったら、どうするんだ?」
「あなたが責任を取ればいいだけです。社員を信じて、罪はすべてご自身がかぶる」
伯爵には負担でしょうが、何もしなければジリ貧です。
在庫と負債を抱え、沈んでいくだけ。
「口上は立派だ。しかし、成功する保証がどこにある? ミスを続ければ、今度こそウチは赤字なんだよ?」
「大丈夫です。かつてそうやって失敗し、立ち直った人をお呼びしましょう」
とても信頼できる人だと、伝えておきました。
後日、その人をゲストとして連れてきます。
「どうも、モーリッツ・シュセルです……」
わたしが連れてきたのは、かつてのパーティ仲間でした。
「これはモーリッツさん、おウワサはかねがね」
「いえ。オレは大したことは」
「で、シスターからの依頼であなたがいらしたということは」
「はい。オレも、シスタークリスのいうとおりかと」
やはり、経験者の言葉となると重みが違いました。
「メニューを見せてもらいました。一つ一つは整っていると思います。ただ、冒険心は足りない」
「ふーむ、そうか」
「コーヒーが売りなので、地味なメニューでもお客は満足すると思います。が、カフェと言ってもオタカフェです。華やかさはほしい」
「そうなんだよ。女性客の心を掴む必要性は、感じているんだ。しかし、どうにもわからん」
伯爵的には、お手上げという様子だった。
「では、女性客自身に決めてもらいましょう」
「なんですって?」
「小分けですよ。デザートを小分けでお出しするんです」
好きなものをトッピングしてもらうのだとか。
「ですが、それではスパのプレートと変わらないじゃないですか?」
「そこで、これです」
モーリッツさんが用意したのは、大きめのグラスでした。
「ここに各自に、ほしいデザートを詰めるだけ詰めてもらうんです」
コーンフレークをベースに、カットフルーツやチョコソース、アイスや生クリームなどを入れ放題にするとのこと。
「それでは赤字になるのでは?」
「いいんです。そうやって楽しんでもらって」
「不人気の商品も、出てしまうのでは?」
「構いません。それが狙いなので」
後日、このビュッフェスタイルのデザート詰め放題が実行に移されました。
いちご・バナナ・桃と、女性客らが思い思いのデザートをグラスへ放り込みます。
生クリームを流し込み、チョコやベリーソースでコーティングしていきました。
仕上げにスナックをトッピングしていきます。
あああ。小さいながらも、罪ができあがっていきますね。
「うんうん。正解はありませんが、彼女たちなりの最適解に近づいている気がします」
手応えバッチリという感じで、モーリッツさんはうなずいていました。
「ああ、在庫がこんなに」
伯爵の方は、あまりご機嫌ではないようですね。
わたしがいただきますから、ご安心を。
しかし、もっとも大事な仕事があったのは、子爵たちでした。
ヘルトさんと協力して、女性客が作ったオリジナルデザートを写真に収めていきます。
「何をしているので?」
「あれは試作品です。お客様に作っていただいたんですよ」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる