神が愛した、罪の味 ―腹ペコシスター、変装してこっそりと外食する―

椎名 富比路

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第二章 完 秋季限定キノコピザは、罪の味 ~シスタークリス 最大の天敵現る?~

おもてなしウマい吸血鬼

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 謎のスーパーシェフ「Oオー・ルドマン」ことルーク・オールドマン侯爵による料理が始まりました。

 普段は素性を隠して、各レストランを練り歩いては腕を振るうそうです。

「どうしてそのようなマネを?」
「こいつの場合、完全な趣味だよ」

 戦闘や女性との交流以外で、することがなくなったらしいですね。

「誰が呼んだか、『おもてなしウマい吸血鬼』と」

 ウワサに尾ひれがつき、やがて吸血鬼の冠は消えて謎のシェフルドマンの名が広まったとか。

「それにしては、本格的すぎませんか?」

 見た感じ、侯爵の動きにまったくムダがありません。
 腕は確かなようです。

「いいことを教えておく、シスター。料理のできる紳士は、モテるのだよ」

 侯爵はドヤ顔を決め、牙をキラーンと光らせます。

 うん。気障キモい。

 キモさ倍増ですね。これで女がなびくと思っているのですから。

「それにしても、人間形態のドレミー殿もお美しい。ショートヘア巨乳とか、わかっている」

 指にソースをつけて味見をしながら、侯爵はドレミーさんに熱視線を送っています。

 ああ気障キモい。寒気が。

「おや?」
「よお。一応連れてきたぜ」

 魔王二人揃い踏みの中、なんと国王父娘が現れたではありませんか。

「クリスさんにミス・ローザ、今日はご同席させていただきますわ」
「ウル王女まで。どこで聞きつけたんですか?」
「わたくしの情報網を、甘く見てはいけませんわ!」

 どうしてこの人は、わたしの生活サイクルまで把握しているのでしょう。

 他のお客さんも、続々と集まってきました。

「オレたちも来たぜ」と、ミュラーさんが声をかけてきます。
「クリスちゃん、アタシたちが来たからには、もう安心よ! 魔王なんて、とっちめてやるから!」
「あんたは狩られる側でしょ、師匠」

 ヘルトさんと子爵まで。

「あれが魔王ね。いいオトコじゃない! 伯爵には負けるけど」

 ブレませんね、カレーラス子爵は。

「ごめん師匠、狩られる側じゃなかったわ。掘られる側ね」
「おだまり!」

 どうやら皆さん、わたしを守りにきたようですね。
 ヴァンパイアハントならわたしの方が勝手を知っています。
 お気遣い無用ですのに。

「本音はなんですか?」
「こんなおもしれえ余興、見ない手はねえ」

 さすが国王ですね。何も包み隠しません。
 だからギャラリーを増やしたと。

「して、ゴロンさんという方は?」
「あそこっすね」

 ウル王女に、ハシオさんが教えます。
 ハシオさんは、キレイなドレス姿になっていました。

「お召し物をご用意しました。試着室まで、同席願えますか?」
「ええ。いいんですか?」
「もちろん。たまにはオシャレもいいものですわ」
「あはは。ではシスター、行ってまいります」

 ゴロンさんが、ウル王女たちに引っ張られていきます。

「まあ、国王を待たせて立ち話もなんだ。まずは一口、召し上がられよ」

 料理は、さっそく一品目ができあがりましたね。

 執事さんが、我々のために料理を用意してくださいます。

「シスター、おまたせしたっす。どうです?」

 ゴロンさんのおめかしが、終わったようですね。

「まあ!」

 わたしは、息を呑みました。

 出前ニャンのトレードマークである、オレンジのドレス姿です。

 化粧をしてあげるだけで、ここまで変わるとは。別人のようです。

「いやはや、お見事ですね」
「ちょっち、時間かかっちゃったっすけど」

 照れながら、ハシオさんがやりきった顔に。

「うむ。この料理にふさわしい衣装である。着席なさい」
「失礼します。シェフ」

 ゴロンさんが席に座ったところで、一品目をいただきます。

「シスターに問う。アンデッドの料理など口に合わぬ、などとは言わぬな?」
「もちろんです」

 わたしは、アンデッドの作るチャーハンの常連ですよ。

「ならばよかった。きっと気に入ってもらえるよう努めよう」

 ああ、これですよ。

『秋季限定 キノコピザ』が目の前に。
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