228 / 269
第四部 シスタークリスと夏 流しそうめんは罪の味
トコロテンとシャインマスカットは、罪の味
しおりを挟む
「その。流すデザートとは?」
「まずは、トコロテンだ。流すって言っても、押し出すに近いかな?」
ソナエさんが寒天を四角い型に入れて、グッと後ろから押し出しました。ガラスの器に、透明なそうめん状の寒天がデロっと載ります。
「ここに、黒蜜をかけるんだ」
黒蜜とは、黒砂糖を溶かしたものだとか。
「おおお。蠱惑的な色合いですね」
「そうだな。酢じょう油で食ってもうまいが、デザートだから黒蜜にした」
「いただきますね」
ズズっと食べるデザートなんて、これまた面妖ですね。
では、トコロテンをすすります。
「あ~っ、これまた罪深い!」
なんの味がしない寒天に、濃厚な黒蜜が合わさって。
味はゼリーに近いでしょうか。ただ、食感はゼリーとはまた違いますね。
すすって食べるためか、独特の風味になっています。
糖分を吸うことによって、甘味の混ざった空気が鼻を抜けていくんでしょう。
「おいしい!」
子どものサジーナさんには苦手かなと思いましたが、二杯目をいただいていました。これはこれは。好き嫌いがないのは、立派なことです。
「続いては、なにがあるのです?」
「ブドウだ。流しながら冷やす」
マスカットが、竹から流れてきました。
「ホントはサジーナがトコロテンを食べられなかったら、先に流す予定だったんだよ。でも食えたから後でいいなって」
「こちらも風流ですね」
コロコロと竹を駆け抜けるマスカットを、お箸でいただく。なんとも珍妙ではありませんか。
「いただきます……ん? 皮をめくれませんっ」
「それ、皮ごと食えるぞ」
「ホントですか? おお、ホントだ。これは罪深い」
これ、ホントにおいしいです! 舌がしびれるほどすごく甘いのに、皮が一気にサッパリな風味へと変えてくれます。皮のシャキシャキした食感も、たまりませんね。
こんな食べ物があったとは。
「シャインマスカットってんだ。あたしももらいものだから、原産はよく知らないんだが、食ってみたら超うまくてさ。甘いのに、酒に合うんだよ」
わかります。サクサクした皮のサッパリ感は、お酒向きでしょうね。
ごちそうさまでした。
「では、我々はいっぱい食べたので、ソナエさんとハシオさんが食べてください」
「おっ、流してくれるか?」
「ええ。おまかせを」
今度は、わたしがそうめんのザルを持ちます。サジーナさんに、流してもらいましょうかね? ずっとやりたそうにしていましたし。
「あんたに頼んだら、上で全部食われちまうと思って、先に食ってもらったんだ」
それはいい選択でした。
(流しそうめん編 完)
「まずは、トコロテンだ。流すって言っても、押し出すに近いかな?」
ソナエさんが寒天を四角い型に入れて、グッと後ろから押し出しました。ガラスの器に、透明なそうめん状の寒天がデロっと載ります。
「ここに、黒蜜をかけるんだ」
黒蜜とは、黒砂糖を溶かしたものだとか。
「おおお。蠱惑的な色合いですね」
「そうだな。酢じょう油で食ってもうまいが、デザートだから黒蜜にした」
「いただきますね」
ズズっと食べるデザートなんて、これまた面妖ですね。
では、トコロテンをすすります。
「あ~っ、これまた罪深い!」
なんの味がしない寒天に、濃厚な黒蜜が合わさって。
味はゼリーに近いでしょうか。ただ、食感はゼリーとはまた違いますね。
すすって食べるためか、独特の風味になっています。
糖分を吸うことによって、甘味の混ざった空気が鼻を抜けていくんでしょう。
「おいしい!」
子どものサジーナさんには苦手かなと思いましたが、二杯目をいただいていました。これはこれは。好き嫌いがないのは、立派なことです。
「続いては、なにがあるのです?」
「ブドウだ。流しながら冷やす」
マスカットが、竹から流れてきました。
「ホントはサジーナがトコロテンを食べられなかったら、先に流す予定だったんだよ。でも食えたから後でいいなって」
「こちらも風流ですね」
コロコロと竹を駆け抜けるマスカットを、お箸でいただく。なんとも珍妙ではありませんか。
「いただきます……ん? 皮をめくれませんっ」
「それ、皮ごと食えるぞ」
「ホントですか? おお、ホントだ。これは罪深い」
これ、ホントにおいしいです! 舌がしびれるほどすごく甘いのに、皮が一気にサッパリな風味へと変えてくれます。皮のシャキシャキした食感も、たまりませんね。
こんな食べ物があったとは。
「シャインマスカットってんだ。あたしももらいものだから、原産はよく知らないんだが、食ってみたら超うまくてさ。甘いのに、酒に合うんだよ」
わかります。サクサクした皮のサッパリ感は、お酒向きでしょうね。
ごちそうさまでした。
「では、我々はいっぱい食べたので、ソナエさんとハシオさんが食べてください」
「おっ、流してくれるか?」
「ええ。おまかせを」
今度は、わたしがそうめんのザルを持ちます。サジーナさんに、流してもらいましょうかね? ずっとやりたそうにしていましたし。
「あんたに頼んだら、上で全部食われちまうと思って、先に食ってもらったんだ」
それはいい選択でした。
(流しそうめん編 完)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
37
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる