月25万の不労所得を得てセミリタイアした元女上司を宗教勧誘から助けたら、「話し相手」として雇ってくれた

椎名 富比路

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第二章 管理人の仕事も手伝う

第16話 同棲騒動

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 健斗けんとは今、ボクが昔住んでた家の前にいるんだとか。
 引っ越したと知らず、寄ってしまったんだって。

「わかった。電車に乗って、駅まで行ってくれ。迎えに行くから」

 ボクは通話を切る。 

「健斗って、茂出木もてぎくんか?」

「はい。交際相手の家から、追い出されちゃったんですって」
 
 詳しい話は後で聞くことにして、とにかく健斗を拾うか。

「すいません、白けさせてしまって。ここはボクが持ちます」

「いやいい。今日はここまでにしよう。お祝いはまた後日、ということで」

「ありがとうございます」

「私はコンビニに寄って、ビールを買っておく。迎えに行ってやれ」

「先輩一人で大丈夫ですか?」

「問題ない。家は近いし、店員とも知り合いだ」

 穂村ほむら先輩と一旦別れて、ボクだけで駅へ向かった。

「すまん、がく~。世話になる」

 駅の入口で、茶髪のイケメンを見つける。健斗だ。

「まったく、どうしたんだよ?」

 リュックだけ背負い、健斗は憔悴しきっている。

「とにかく、ボクの家に行こう」

 部屋に戻ると、もう穂村先輩がいた。

「あ、穂村先輩じゃないですか」

「久しいな」

 健斗が、ボクを怪しむ。

「違うって。同じ部屋には住んでいないから」

「今、おきくんは、私の所有するアパートに住んでいるんだ」

 ウソは、言っていない。しょっちゅう穂村先輩がボクの部屋に押しかけてくること以外は。

「マジっすか。いいなあ」

 素直に、健斗は信じてくれたようだ。単純でよかった。

 しかしコイツ、ボクよりいい家に住んでいるじゃないか。ペット同伴可だし。

 って、追い出されたんだっけ。

「詳しい話を、聞こうじゃないか」

「実は、カノジョと同棲することになったんです」

「いいじゃないか」

「よかねえよ。イレギュラーだったんだ」

 聞けば、健斗は祖父の遺産を少しだけ相続したという。

「ペットを飼える家が、ずっと欲しくてな。ウチは祖父がアレルギー持ちで、飼えなかったんだ」

 わずかな遺産を使って、晴れて家を出た。ペット可の賃貸へ、引っ越すことに。

 ところが、カノジョまで来てしまったのだ。

「同棲するつもりなんて、なかったのにな」

 カノジョは結婚を迫っているが、健斗はまだその気がない。

「いわゆる、あれだよ。『わたしと仕事、どっちが大切なのよ!』ってやつだ」

「定番だな」

「はい。そうなんですよ!」

 健斗は缶ビールを、テーブルにガンと置く。わずかにビールがこぼれてしまって、「すまんすまん」とヘタレ気味にタオルで拭く。

 それでケンカになり、家を追い出されたというわけか。
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