カリスマ女社長から「キミしかいないんだ」とせがまれて、月収三〇万でポンコツ美人社長のゲームコーチに配属された。これは辞令ですか?

椎名 富比路

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第五章 ホラーは苦手ですか?

人生初の、配信者デビュー!?

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 なんとオレまでが、配信の手助け役に駆り出された。

「マジですか?」
「口調口調!」
「コホン。どうしてだよ?」

 咳払いをして、オレは口調を改める。

「会社とのコラボだ」
「でも、リアル割れしねえか?」
「キャラは、我が社が作ったアバターでいいから」

 この間、クリエイター相手に使った「姫とメイド」アバターを、今回は使用するという。

「えっと、どこまで進んでるんだっけ?」
「第三章っすね」

 まったくプレイしていないな。別のゲームばかりしていたから。

「家だと、スタンダートのシナリオは全クリしているんすけど」

 全五章までが、現在遊べる。オレもシナリオだけは知っていた。

「あくまで『ひめにこ』がプレイしている体なんで、ネタバレしそうな展開は避けてるっす」

 社長の進行度合いに、マヒルさんも合わせてくれているみたいだ。
 配信の枠を取って、スタートする。

『ひめにこじゃ~。今日は久々に、幻想神話を遊ぶぞよ。今日はニコラ社の社長とも遊ぶのじゃ~』

 社長とオレに、マイクは向けない。あくまでもお手伝いという名目である。オレは広報ではない。ヘタに口を出せないのである。

 第三章のステージは、滅びた古城である。廃城の奥に住まう強力なアンデッドを倒すことが、目的だ。

「ぬ、う」

 ニコラ社員限定アバターと言っても、見た目が違うだけである。強さはまったく変わらない。製作会社に頼んで、そういう仕様にしてもらっている。

「ひっ!」

 壁から突然現れたゴーストに、イーさんが過剰反応した。

「イーさん、大声は出さない方向で。マイクが声を拾ってしまうので」
「わかってはいるんだ。しかし、どうにもこうにも声が漏れてしまうな」

 悪戦苦闘の末、ボス部屋に到着する。

『ポルターガイストじゃとお? じゃあ、家具の側には近づかんでおくかの……なあ!?』

 突然、部屋中の家具が浮き上がった。
 グルグルと回りながら、オレたちを取り囲む。
 オレたちは、逃げ場を失った。

 その直後……。

「ひゃあ!」

 動く家具に押しつぶされ、イーさんが大ダメージを受けてしまう。

 助けに行きたくとも、オレは動けない。
 壁役になって、ボスの攻撃を足止めしているからだ。

 もしかしてイーさん、オバケ系がダメな人か?

『なんじゃあ。社長が苦戦しておるなぁ』

 幽霊なんてへっちゃらなのか、ひめにこがイーさんの救助に向かう。
 家具の行動パターンを読み解き、次々に撃退した。

『今じゃぞ、社員! 鏡に写っているのが本体じゃ!』

 すべての家具を活動停止させたひめにこが、オレに指示を送る。

 オレはモップで、鏡を叩く。

 ぬおお、という情けない声を上げて、割れた鏡からピンク色の実体が現れた。

 オレが攻撃していた白い布のようなオバケは、ダミーだったのか。

『いけいけ、全員でタコ殴りにするのじゃあ!』

 ひめにこの号令で、全員集まってピンクオバケを袋叩きにする。

 そのパターンをサンド繰り返し、ようやくポルターガイストを弱らせた。

「ええい、さっきはよくも。くらえ!」

 とどめを刺したのは、イーさんだ。

 イーさん姫の王笏が、ポルターガイストの脳天にクリーンヒットした。

 今度こそ、ボスが昇天する。

「助かったぁ」
『よし、このままクリアぞよ~』

 最後はひめにこがゴール地点を見つけ出し、幽霊屋敷から脱出。
 今回の配信は終了した。

「ふう。どうやら、姐さんの弱点わかっちゃったぽいです」
「な、なんだと?」
「オカルト系苦手っしょ?」

 マヒルさんから指摘され、社長はわざとらしく咳払いをする。

「ま、まああまり得意ではないかな?」

 早口でまくしたて、社長が視線をそらす。 

「苦手じゃんよ。それじゃあ、姐さんには近々、ホラーゲームやってもらいますんで」
「な……なぜだ?」

 社長が、予防接種を受ける子どもみたいな顔になった。

「だってもう夏じゃん」
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