カリスマ女社長から「キミしかいないんだ」とせがまれて、月収三〇万でポンコツ美人社長のゲームコーチに配属された。これは辞令ですか?

椎名 富比路

文字の大きさ
39 / 48
第七章 コレは社員旅行ですか? 合宿にしか思えないのですが?

夏野菜カレーと花火、ときどきトラブル

しおりを挟む
 浜辺でアイスを食ったあと、オレたちは社長の別荘へ向かう。

 マヒルさんは酒が入ることを想定して、あらかじめ別荘の駐車場にバイクを駐めてあった。

「今日は、私が料理を作ろう」

 飯塚社長が宣言し、オレが手伝う。

 マヒルさんは仮眠、グレースさんと梶原さんはアンちゃんの宿題を見てあげている。特に絵日記だ。

 ぴよぴよ夫妻は、「赤ん坊に母乳をあげる」というので部屋にいる。

 夕飯は、カレーを作った。調理はさほど難しくない。昼間の焼肉で残った肉や野菜などを全部ぶち込んだのである。よって、具材を切る手間もまったくない。
 ルーだけ用意すればいいから、あっという間に完成した。
 具もスイートコーンとかピーマンばかりで、ほとんど「夏野菜カレー」といえよう。ライスも焼きおにぎり分の余りだし。

「カレーを想定して夏野菜を買っておくなんて、合理的ですね」
「あっ……いや、単に私の好きな野菜ばかりを買っただけなんだが……」

 それでも、社長はすごいと思う。

 圧力鍋の火を止めて、みんなを呼ぶ。

「では、今日は社員旅行に来てくれてありがとう。いただきます。乾杯」

 社長が、コーラを持って乾杯の音頭を取る。

「乾杯。いただきまーす!」

 みんな、社長の作ったカレーを絶賛した。

「マジでうまいです。ありがとうございます社長」
「よかった。気に入ってもらえて」

 社長もうれしそう。

 ルーは甘口も用意しようと考えた。が、グレースさんから「娘は中辛なら大丈夫」だと聞いてある。味が物足りなければ一味を入れてくれと、周りには頼んでおいた。

「中辛、ちょうどいいっすね。ガツガツ食うならこれかも。酒に合わせるなら、一味入れたらイイカンジっす」

 普段は辛口しか食わないというマヒルちゃんも、中辛のカレーに満足気味である。

「これ、ペーストで何か苦いのが入ってる」

 カレーをハムハムしながら、アンちゃんはビックリしていた。

「すまん、ナスだそれ。やっぱイヤだったか?」

 グレースさんが、子どもにナスを食わせてあげたいと言っていたので。ナスは具でも入っているが、ミキサーでペーストにしたモノも入れている。

「めっちゃうまい」
「だろ? アンちゃんも大人になったね」
「ピーマンも食べられた」
「えらい!」
 

 夕飯を済ませた後は、庭で花火をする。コンビニで買ってきたのだ。


 マヒルちゃんとアンちゃんが、どちらの花火が長くもつか競争している。

「いやあ、たまにはこうやってのんびりするのもいいですね」
「そうだな。いかにいつもの生活が騒々しいのかわかるな」

 オレと社長も、線香花火を見つめ合っていた。

「明日は、出張するぞ。レトロゲーム記念館にいく」

 社長が、翌日以降のスケジュールを全員に知らせる。

「なにそれ、めっちゃ楽しそうっすね!」

 ほとんどがアナログゲームばかりだから、人によっては退屈かもしれないという。

「それはそれっしょ。楽しんだモノ勝ちっす」
「ありがとう。午後は宿を借りて、温泉だ」

 水着回の後は、温泉回か。なんてぜいたくな。

「その後、花火大会をする」
「ああ、コンビニに張り紙してましたね」

 近所の神社で、納涼花火大会があるという。

「浴衣をレンタルするから、希望者は申し出てくれ。おっ、全員か。じゃあ、今日はこれで……」

 花火も終わって寝ようかと思っていた、そのときだ。


「社長……大変です」


 大広間にいたグレースさんが、物々しい顔つきで社長を呼ぶ。

「何があった?」
「来ていただければわかるかと」

 グレースさんの呼びかけに応じて、全員がいそいそと後片付けをする。


 大画面テレビには、台風の情報が流れていた。


「道路封鎖だと!?」


 土砂で道路が埋もれてしまい、復旧に時間が掛かるという。二日後は仕事だというのに、三日は足止め状態となってしまった。このままでは、収録ができない。

「そんなバカな! 我々は、台風の進行とは逆の位置とタイミングでこの旅行を企画したはずだ」
「どうやら、軌道が変わってしまったようですね」

 ニュースを見ると、このまま首都直撃と報道していた。

「台風がかすりもしないように、わざと遠回りのルートにしたのに!」

 社長が悔しがる。

「こうなったら、現地で編集しましょう!」

 オレは、そう提案してみた。

「それしかないか。ぴよぴよ先輩、可能か? 機材は?」

 社長が聞くと、ぴよぴよ夫妻はOKサインを出す。

「今だったら、リモートワークもできます。幸い我々は、いざというときのためにノートPCを常時持っています。収録は可能ですよ」
「それにね、ひめにこちゃんの新衣装だって、ほら」

 ぴよぴよめさんが、ひめにこの水着差分を用意してくれた。

「うむ。アバターはこれでいいな」

 ひめにこのアバター表示だって、スマホ一台あればいい。

「ただ、ひとつだけ問題が」

「どうした?」
「遊んでいる様子を流すとき、どうしても生身になっちゃうんだ」

 記念館に置いてあるゲームは、大半が「エレメカ」という種類のマシンだ。エレメカの構造上、どうしても手許を映す必要があるらしい。

「手許を流しているバーチャル配信者なんて、いくらでもいるだろう?」
「できれば身体のアップも欲しいんです。臨場感が出るから」

 ぴよぴよ夫妻は、こういう事態がいつ起きてもいいように、生身用の衣装も用意しているという。

「なるほど。いいなそれ。よし、そういうことだから、マヒルちゃん頼む」
「うす」

 何も反論せず、マヒルちゃんはいい返事をした。

「それがね、マヒルちゃんだと『ひめにこ』のコスは無理があって……」

 ぴよぴよめさんの視線が、マヒルちゃんと社長の胸を交互に移動する。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...