カリスマ女社長から「キミしかいないんだ」とせがまれて、月収三〇万でポンコツ美人社長のゲームコーチに配属された。これは辞令ですか?

椎名 富比路

文字の大きさ
40 / 48
第七章 コレは社員旅行ですか? 合宿にしか思えないのですが?

ひめにこ、画面を飛び出す

しおりを挟む
『みんなー、ひめにこなのじゃー。今回は、レトロゲーム記念館という場所に来ておるぞー』

 画面の向こうに、「社長」が手を振っている。ただし、無言で。

『この記念館は、古くなって廃棄されたアナログゲームが多数揃っておるぞ。ぜひみんなも来ておくれー』

 マヒルちゃんの吹き替えに合わせて、社長が身振り手振りで記念館の内容を紹介する。

 実は、マヒルちゃんでは「胸のサイズが合わなすぎる」という。社長がF、マヒルちゃんは、あてもBとCの間らしい。

「頭から上を映さない」という条件で、社長はひめにこの衣装を着ることを承諾した。差分の中にあった、白いセーラー服だ。とはいえ、JK設定なのにバストだけ規格外である。

『今日は解説役に、ギャング梶原殿が来ておるぞ。みんな拍手~』
「どうも、ギャング梶原です」

 落ち着いた表情で、ギャング梶原さんがカメラに挨拶をした。

『今日は、よろしく頼むぞよ~』
「よろしくお願いします」

 二人が挨拶をかわす部分まで撮って、ぴよぴよ夫さんがOKを出す。

「恥ずかしい!」

 飯塚社長が、その場にうずくまる。

「バッチリです、社長!」
「なんか褒められても、素直に喜べないな」

 立ち上がって、自分の穿いているスカートを摘まむ。

「しかし、生身動画は企業側の要望だったとは」

 取材先の記念館側が、「可能であれば、遊んでいる様子を撮ってもらいたい」と言ってきた。その方が、楽しんでもらえるのではないかと。

 なるべく手許を映さず収録することも可能だ。しかし、それだと「どうやって遊ぶのか」がわかりづらい。そこで、コスプレをした誰かがプレイするのがいいだとうとなった。

 だが、ひめにこのスリーサイズの関係上、できるのは社長しかいない。

「後ろ姿は映しますが、正面は絶対に撮らないので」
「うむ。『ひめにこ』の顔がリアルに表示されては、幻滅するギャラリーもいるだろう」

 腕を組みながら、社長も納得する。

「では、本番行きます」

 撮影が続行された。

『昔は、駄菓子屋というのがあって、そこで駄菓子を食べながらゲームをするという時代があったそうじゃのう。じいちゃんから聞いたぞ』
「うわあ、俺ギリギリ世代ですわ」

 ギャング梶原さんが、吹き出しながら語る。おお、世代間ギャップがスゴイ。

「ひめにこちゃん、コレ知ってます?」

 梶原さんが指さしたのは、穴が六個空いている筐体である。

『モグラ叩きかの? しかも、相当使い込まれたタイプじゃのう?』
「名前しか知らない感じですか?」
『これ、うちのママの世代でも、ゲーセンになくなっておったぞ。ワニを殴るやつは知っておるが』

 やはり、モグラ叩きはレトロ中のレトロなんだな。

「やってみてください」
『よし、初挑戦するぞよ』

 筐体に添え付けてあるハンマーを、ひめにこ姿の社長は持ち上げた。

『えいっえいっ。こりゃあ難しいぞな。昔の仕様かのう?』

 運動神経が鈍いのか、社長はなかなか高得点を取れない。

『ふうん!』

 ヤケになった社長が、豪腕を振るった。

「うお!?」

 オレも思わず、驚きの声を上げてしまう。

 最後の一発は、せつない。

『ぬう、つい本気を出してしまったわい。すまんのう、スタッフの声が入ってしもうて』

 半笑いで、マヒルちゃんがそうアテレコする。マヒルちゃんを笑わせてどうする?

『次は……なんじゃこれは?』

 馬のオモチャに乗って、レースをするゲームらしい。馬は塗装が剥げていて、年期がうかがえた。

『なるほど、健康器具みたいなヤツかのう? どれどれ梶原殿、レースしようぞ』
「いいですよ!」

 ちょうどマシンは二台ある。レース開始。

 突然、馬がガクンと跳ね上がる。

「うはう!?」

 声を出さないようにしていた社長が、馬の挙動に悲鳴を上げた。口を押さえたくても、馬の動きが不規則すぎて声が出てしまう。

「うわーうわーっ!」

 これは、音を消して録画にアフレコだな。

「社長大丈夫ですか?」
「ムリムリ! こんなの黙って遊べない!」

 飯塚社長も、さすがに音を上げる。とはいえ、レースには勝利した。
 巨漢な梶原さんに、馬が参ってしまったようである。 

『おおーっ。お菓子がいっぱいあるぞよ、お菓子。見てみよ皆の衆。やってみようぞ』

 クレーンを操作して駄菓子をゲットするゲームを、ひめにこが見つけた。心なしか、テンションが高い。

『やってみようぞ。一〇円でプレイできるのかえ。これはお得じゃな』

 驚きの安さに、ひめにこが驚愕していた。

『ラムネ一個しか獲れんかった』

 一〇〇円プレイして、手に入ったのはラムネの袋一つだけ。

 一旦撮影が終わり、社長はアンちゃんの元へ。

「アンちゃん。付き添ってくれたお礼だ。あげよう」
「いいの? ありがと!」

 ひめにこがもらっても、仕方ない。アンちゃんにあげるのがちょうどいいだろう。

 お昼は、近くの海鮮レストランで済ませた。

 ちなみに、社長には半袖のラップコートを着てもらっている。この間の買い物で着たラップドレスのコート版だ。

「お寿司お寿司」

 アンちゃんが、サーモンをバクバク食いながら楽しんでいる。

「花咲さん」

 ぴよぴよ夫さんがオレの隣に座り、声をかけてきた。

「お昼からはメンバー限定動画を撮りますので、手伝ってくださいね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました

黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。 彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。 戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。 現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと! 「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」 ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。 絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。 伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進! 迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る! これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー! 美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。 人生、逆転できないことなんて何もない!

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

処理中です...