カリスマ女社長から「キミしかいないんだ」とせがまれて、月収三〇万でポンコツ美人社長のゲームコーチに配属された。これは辞令ですか?

椎名 富比路

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第七章 コレは社員旅行ですか? 合宿にしか思えないのですが?

疑似デート後半戦は、二次元で

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「お見事でした。いい絵が撮れましたよ!」
「さすが花咲さんね。事前に練習してきたみたいに、手慣れていたわ!」

 超高速編集を終えて、あっという間にメンバー用動画のアップは終わった。

「次は、ベンチでお話するシーンを撮りましょう」

 続いて、オレと社長は道の駅まで戻る。ベンチに座って、おやつタイムになった。恋人同士が語らう場面を撮りたいそうな。

「このイチゴクレープだが、オーソドックスながらうまいな」
「緊張しているときは、ベタなスイーツに限るぜ」

 まったりしすぎな空気が、オレたちの間に吹き抜けていく。

 よりにもよって、二人とも同じクレープを買ってしまうとは。なぜ違うモノを頼まなかったのか。食べさせたいとかできただろうに。テンパってるとダメだな。トッピングすら同じというダメっぷりである。

「コーヒーに合うなぁ」
「合うなぁ」

 しかしまあ、話題が出てこない。こんなとき、恋人同士なら何を話すんだ?

 オレはゲーム指導の時こそ饒舌に語れても、女性のエスコートに関しては素人以下なのである。

 社長の方も、クレープを食んでいるだけで終わりそうだ。

「デートは、初めてか?」
「そうだな。交際自体、したことなくて」
「私もなんだ。こんなとき、何を話せばいいのか」

 まずいぞ。楽しいデート場面を演出するにしても、きっかけがないと。おまけに、どちらも恋愛は初心者ときた。

「マヒルちゃん、何かアイデアはないかな?」
「急に言われても、困るっす。カレシできたら即ベッドインだったので」

 やばい。まるで参考にならないじゃん。ハードルが高すぎる!

「恋人同士とは、かくも軽々しく体を許すものなのか?」
「特に抵抗はなかったので」

 マヒルちゃんの振り切れてアバウトな貞操観念に、イーさんも困惑していた。

「今は?」
「仕事が生きがいなんで、交際とかは考えられないっす。恋愛の仕方とか忘れたっすね!」

 あっけらかんと、マヒルちゃんは語った。

「うーんどうするか? ご趣味は?」
「ゲームだ……ってイーさん、お見合いじゃないんだから」
「おっと。いかんいかん。硬くなっていた」

 こんなにフワフワしたイーさんは、初めて見る。初々しいが、仕事になるのか?

 時間をつなぐためにチビチビ食べていたクレープも、底をつく。本格的に、話題がなくなってきたぞ。

 ぴよぴよさんが、スナックのアソートを用意してくれた。甘いものばかりだったので、塩気がほしいと思っていたところである。

「共通の話題を話してたら、いいカンジなるよ。なにかあるでしょ」

 ぴよぴよさんからも「とにかく何か会話を」と指摘された。

 といってもなぁ……。

 そんなときである。アンちゃんが自分のゲーム機を、オレのテーブルに置いた。

 隣で、グレースさんもイーさんのノートPCを用意する。

「もうさ、いっそゲームで一緒に遊んだら?」

 アンちゃんの言葉に、オレはハッとなった。そうだ。もともとオレたちは、ゲームでつながっていたんじゃないか。ゲームがコミュニケーションツールだったはずだ。

「そうか……いいですね。社長、思う存分遊んでください!」
「いいのか?」
「このまま辛気臭いムードになるよりはずっといい絵が撮れます!」

 渋々、イーさんはコントローラーを握る。

「本当にいいのか、ハナちゃん?」

 困り顔で、イーさんが尋ねてきた。

「やろうイーさん。久々に『幻想神話』でもプレイしようぜ」

 オレは、アンちゃんの意図に感謝する。

「いい案だ。このごろ忙しかったからな!」

 幻想神話にログインして、協力プレイで進んでいく。 

「やっぱり幻想神話はいいな、ハナちゃん! 覚えることが少ないから、復帰後もすぐに遊べる!」
「オレも同じことを考えていたぜ!」

 代わり映えしないといえば、それまで。しかし、しばらく放置していても速攻で操作感を思い出せるって、すごく重要なんじゃないか? 

「じゃあ……最近遊んだゲームで、楽しかったのは?」
「『クラセちゃん』だな! こばやかわは、ソロプレイで気兼ねなく使っているぞ」
「わかる!」
「だろ?」

 チートキャラはときどき、無性に使いたくなる。

「ゲーム内課金については、どう思う?」
「生きがいなら、いいんじゃないか? どんなゲームもだが、義務感や惰性でプレイするのは精神的によくない」

 イーさんって案外、課金に好意的なんだな。

「デートしてみたいゲームキャラって?」
「そうだな……ハナちゃんが遊んでいたミステリ系のゲームがあっただろ? あの主人公とかいいな。ダンディで好きだ。ああいう大人が近くにいたら、私は道を踏み外さなかっただろう」

 しみじみと、イーさんは答えた。

「ゲームの話ばかりだな?」
「私たちらしくて、いいじゃないか」

 オレが申し訳なく思っていると、イーさんは軽快に笑う。

「ただでさえ恋愛経験が乏しいんだ。楽しい話題で盛り上がる方がいいだろ?」
「かもしれないな」

 仕方ないので、その後もゲームの話ばかりをした。ちっともデートって感じじゃない。

 それでも、社長は楽しそうに話してくれた。
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