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33、目覚めたブルックリン
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明るい光の中でふわ、ふわと浮かんでいる。「・・・・ブルックリン。ブルックリン」と私を呼ぶ声がする。
あの声はお父さん?
「さあ、お前の力が必要だ。起きるんだ、お前を待ってる人達がいる」と頭の中で声がする。(あ~、でももう疲れたよ。起きたくないな~眠ってたいよぉ~)そんな気持ちもある。
ブルックリンの頭の中にお父さんと過ごした思い出がクルクルと回っている。
弟達と森で遊んでいると大きな木の根っこにつまづいてしまい、足首を思いっきり捻って起き上がれなくなった時に、大急ぎに駆け付けてくれて、その大きな背中にブルックリンを背負うとそのままお医者様に連れて行ってくれた事やお母さんの言う事を聞かなくてゲンコツで頭をゴツんとしばかれた事。
ブルックリンが高熱を出して寝込んだ時、お母さんが弟や妹のお世話で手が離せなくて、代わりにお父さんが心配そうに側に着いて看病してくれた事。そんな様々な思い出が一気に思い出されて来た。
「ーーーー確かにお前はよく頑張ってきたよ。さすが俺の子だ。でもこれからはみんなの為に戦うんだ。お前が起き上がるのを待っている人達がいるんだ」お父さんがそう言うとブルックリンの手を握り笑っていた。握られたその手がぽかぽかと温かく感じた。
「ーーーーさあ、行ってこい」とお父さんが笑ってる。
「うん、行ってくるねお父さん」
「お父さんはいつもブルックリンを見守っているぞ、何てったって私の娘は天下無敵だからな」お父さんがそう話すと景色が切り替わり、見慣れない天井が目に入った。辺りを見渡すと、側には何故かエドワードがブルックリンの手を握りしめて眠っていた。
(・・・・っなっなんで??エドワードがここにいるの?ここはどこ?何があったの?)と頭の中が混乱している。
一度深呼吸して部屋を見渡すと、豪華な作り付けのチェストにファブリックも良いものが使われている事ぐらいは、ブルックリンでも分かった。着ている服でさえ良いものだと分かった。
「ーーーーああ、やっと起きたか。気分はどうだ?」とエドワードが目を擦りながらブルックリンの方を見ている。
「どうして私がここにいるの?どうしてエドワード君がここにいるの?」とエドワードの方をじっと見つめながら話した。
「ブルックリン、君は仕事中に倒れたんだよ?全然覚えてない?」ガタッと彼は椅子を座り直すと落ち着いて話し始めた。
「ごめんなさい、私、本当に全然わからないの。それよりエドワード君、ここはどこなんだろう?」とエドワードに問いかけると、「それよりブルックリン喉乾いてない?お水で良かったらここに有るけど?」と机の上の水差しを目線で追った。
「そう言えば喉がカラカラだ。お水貰える?」そう言うが早いかエドワードは水差しからお水をコップに注ぐとブルックリンに手渡した。
「・・・・ありがとう」と言うとブルックリンは水を貰い一息で飲み干した。体に沁み渡る感覚がある。ああ美味しい。
(私、よっぽど喉が乾いてたのね。どれぐらい眠っていたのかしら?)そんなことを考えていると、エドワードから話し出した。
「ブルックリン、君は3日間ほど眠っていたんだよ。心身ともに衰弱していたし、魔力も枯渇寸前だった。一体どうしてあんな無茶な働き方をしたんだ?」とまるでエドワード自身に問いかけるように淡々と話している。
「うん、ーーーー最初のうちはちゃんとお給料も出てたし、勤務時間も守って貰えてたの。その辺は普通だったんだと思う。でも私が魔法陣を描くようになってから店の店主、キンバリーさんの態度が一変したの」飲み干したコップを両手に抱えて話す。
「店の魔法陣が話題になって人伝に聞いたお客さんが買いに来るようになってからは、休む間もなく働かされて、家に帰るのも眠りに帰るだけになって行ったの。でも・・・・私のお給料がないとお母さんや弟達が・・・・」ああ嫌だ、泣きたくなんて無いのに涙が溢れる。
「・・・・うっ、ううっ・・・」暫く涙を手で拭ってたけど横からエドワードがハンカチを差し出してくれた。
「ーーーーありがとうエドワード君」とハンカチを受け取り涙を拭く。その様子を見ていたエドワードはブルックリンの肩をポン、ポンと叩くとゆっくりと話しかけた。
「よく聞いてブルックリン。ここは魔法塔の付属の病院の一室だ。君はあの店で気を失ってから、ここで光属性の魔法使いの治療を受けたんだ。君に随時2~3名の魔法使いが付いてたんだよ。・・・・それぐらい君は消耗してた」思わずエドワードの顔を見つめる。
「君の家へはこの魔法塔の主であるアーチャーの采配で、ナニーを1名派遣してあるから心配は要らないし、これからはここで働いてもらう事になるらしいから、お給料は以前の所に比べると破格と言って良いと思うよ」
「ーーーーえっ??どうして?」
「うん、僕が言えるのはここまで。また後でアーチャーが来るから後は本人に聞いて?じゃあ僕は仕事に戻るよ。もう少し寝た方がいい。顔色があまり良く無いから」と話すと部屋から出て行った。
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