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53、フェアリーとの再会
しおりを挟むーーーーここはいつもの魔法塔ではなくて。
ブルックリンとガブリエラは所在なさげに騎士団の詰め所にいた。魔法塔はいつも大変静かだが失礼ながらここはうるさい。怒号が響き渡り奇声らしき物も聞こえてくる。
(・・・・汗臭い。帰りたい。帰りたい。)ブルックリンは声に出してしまいそうな自分を叱咤し健気に耐えていた。隣のガブリエラは涼しい顔だ。なぜ?どうして耐えられるの?
「すいません、お待たせしてしまったかな?私は今回君たちと同行する事になった騎士団長のハンクスだ。君たちの上司にあたるアーチャーとは旧知の仲だ。奴から話は聞いている。今回は気を引き締めていくつもりでいるからよろしく頼むよ。」と言いながらハンクス団長は大きな手を差し出してガブリエラとブルックリンそれぞれに握手した。
「今回の外交に我が騎士団からは、私を含めこの8名が一緒だ。」と他の騎士を紹介された。ブルックリンは「あっ!!」とうっかり声が出そうになった。なぜかと言うと会いたかった人がそこにいたからだ。
「ブルックリン久しぶり~~。」と笑っていたのはフェアリーだ。わぁ懐かしい。
「フェアリー久しぶり。ここで会えるなんて夢にも思わなかったわ。」とブルックリンも嬉しさを隠せない。
(・・・・あっといけない仕事中だわ。)
「はは、君たちは知り合いだったようだな。懐かしい挨拶は後にしてこれから打ち合わせに入ろうか?」とハンクス団長が笑いながら言った。
それからお互い自己紹介を済ませるとハンクス団長のリードで打ち合わせが始まった。
「明後日の朝9時に全員騎士団の訓練所に全員集合してもらう。今回はガブリエラ女史の移動用魔法陣だ。ガブリエラ女史悪いが当日はよろしく頼むよ。」とハンクス団長がガブリエラに向かってそう言った。
そう、今回なぜブックリンだけでなくガブリエラも一緒なのかと言う理由がそこにあった。
なんとガブリエラの移動用魔法陣はエグいほどの精度と錬成の速さを誇る。それに関してはアーチャーを凌ぐと言われるほどなのだ。
(・・・私も最初見た時はびっくりしたわ。ーーーーずば抜けて頭が良いって言うのはあぁ言う事なんだと思う。)
ガブリエラは「ふふっ、お安い御用よ。ピンポイントで楽しい旅をお約束するわ。皆さん安心しててね。」と笑った。
今回は初日に同盟を締結させ、その夜に関係者でパーティが行われる。もちろんブルックリンとガブリエラも参加予定だ。と言うのかあちらの精鋭の魔法使いを何名か紹介されるらしい。(あぁ~~面倒くさい。ガブリエラ談)
今回ブルックリン達が訪れるのは隣国「シュテルン」である。文明の発達度合いはどっこいどっこいで魔法はこちらの方がおそらく発達している。
今回はお互いの国の国民が魔法がなくても日常が過ごせて尚且つ魔法研究も充実させようと言う内容の同盟を結ぶことが目的だ。
お互いの国の魔法使いがそれぞれの国の書類に不都合や不備がないかどうかチェックして(紙に呪文が隠されていて紙が国へ持ち帰られた時に疫病が発生したり、こちらの情報を漏洩させるような魔法陣が自動的に描かれたりしないかどうか。など)をする。
もちろんこの同盟が結ばれる様子をお互いの魔法使いが自国にその様子を中継させる事も今回わかっている。
ガブリエラが「ブルックリン、書類は全て私の魔法でチェックするわ。その間よろしく頼むわね。あまり時間をかけるつもりはないけど、何があるか分からないからね。」と言って来た。
「その間は任せて下さい。ガブリエラさんが集中できるよう私も頑張ります。」とブルックリンもその言葉に答えた。
(そうなのよね。騎士団の方々は側にいるのはありがたいんだけど魔法で攻撃されたらひとたまりも無いのよね。ガブリエラさんが書類の確認中は無防備になってしまうから、ここはしっかり防御の魔法陣を張っておかないと。)
そう考えながら今回ローリーに力を施されたローブとガブリエラのローブを見比べていた。(やっぱりガブリエラさんのローブにも入っているのね。私のより複雑な刺繍だし袖口や襟元にも入ってるわ!)
次の日は朝食を終えるとすぐに帰国する予定らしい。遊びに行くわけではないと頭では分かってるんだけど。・・・お土産、ローリーにお土産買えるかしら?
「ではこれで打ち合わせを終わるが何か質問ある奴はいるか?ない様だな。ーーーー当日までケガなんてするなよ?では解散。」
打ち合わせを終えるとブルックリンとフェアリーはお互いが駆け寄った。
その様子を見たガブリエラは「じゃあブルックリン、積もる話もあるでしょう?時間もちょうど良いし今日はもう上がったら?師団長には私から言ってといてあげるわ。じゃあお先に。」
そう話すガブリエラにフェアリーとブルックリンは一礼するとガブリエラは涼しい顔をして通り過ぎていった。
「ガブリエラさん?だった?良い人そうだね。・・・・・・ブルックリン、これから用事あったりする?良かったらご飯でも食べに行かない?」とフェアリーが誘ってくれた。
「うん、行きたい。積もる話もあるし。」
「じゃあ、これから30分後に私が魔法塔の入り口まで行くわ。それでどうかしら?」
「うん、分かった。じゃあ30分後にね!」と言って一旦その場でフェアリーと別れた。
ブルックリンは魔法塔にある自分の机に戻ると引き出しからポーチを取り出した。そしてお手洗いへ向かうとポーチからメイク道具を取り出しサッと軽くメイクをした。
それだけでもいいのだが「・・・う~ん。もう一つだなぁ。あっそうだ!」とロッカーから一枚のスカーフを取り出した。以前イライザのお屋敷で合コンの時にもらったものだ。
それを首にさらりと巻き付けると「あっ、さすがにこれはやばいか?」と言ってローブを外し魔法で小さくするとカバンに入れた。
お手洗いから出て改めて執務室を見るともう誰も居なかった。ガブリエラも帰っていた。
ちなみに昨日からエドはアーチャーに扱かれているらしいのだが詳しいことは分からない。
一度ガブリエラに尋ねた事があったが「私も詳しくは分からないんだけど、死ぬほど苦しい特訓をさせられてるらしいよ?って言うかあんまり知りたくないよね?」とブルックリンに言っていたのでその辺りは激しく同意だ。
いそいそと魔法塔の入り口に向かうとはぼ同時ぐらいに向こうからフェアリーも来た。
「さぁ、どこ行く?何食べる?」とフェアリーも楽しそうだ。
ブルックリンは少し飲みたかったので寮の近くの居酒屋を指定した。
話によるとフェアリーも最初は飲めなかったが騎士団の連中に鍛えられ一人前に飲めるようになったらしい。よし、そこに行こう。と話が決まりフェアリーと一緒歩き出した。
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