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お父様との約束
しおりを挟む「お父様、お願いがあります。もう一度グラナダへ私を行かせてください。あと数日も掛からず壁画が完成します。よろしくお願いします。」と頼み込んだ。
「しかし。。。」と呟きながら顎に手を当てて考え込む。
「私にひとつ考えがあります。マリアンナ教会まで送って頂けたらもう教会からは完成するまで一歩も外へ出ません。あとサンダース子爵家の荷物も引き上げて貰って構いません。ただグラナダを発つ日の最後の挨拶だけはさせて下さい。」お願いします。と頭を下げた。
「わかった。ただ一つだけ条件を付けさせて欲しい。」とお父様が言い出した。
「一度ちゃんと然るべき機関でお前の健康状態を診察して貰い、今後のお前の人生の相談をきちんとやりたい。もちろんグラナダから帰って来てからで構わない。今の状態は父としても不安なことをフローレンス分かってくれ。」と哀願された。
「分かりました。今回のグラナダの件はお父様に途方もない心配をかけているという自覚はあります。壁画を完成させたらお父様のおっしゃる通りにします。あとクリス侯爵様にタウンハウスの件はお断りしていたとお伝え下さい。」
「私は明日にでもグラナダへ戻ります。あと荷物も壁画が完成すれば早く引き上げたいので最終日にマリーを寄こして下さると早いと思います。」
と重ねてお願いしておいた。
次の日の早朝に家を出発した。
途中で一度休憩を挟みながらも午後2時過ぎにはマリアンナ教会へ到着した
「すいません。フローレンスです。只今戻りました。」と教会の入り口で声をかけると、サラさんが出てきた。
「フローレンスさん、壁画作業が間に合ってよかった。さあナタリーさんもマックさんも待ってるわ。」と一緒に礼拝堂まで来てくれた。
「フローレンスさん戻ってこれてよかった。」と最初にマックさんが喜んでくれた。
「フローレンス待ってたわ。さあやってしまいましょうね。」とナタリーさんも笑っている。
「はい、よろしくお願いします。」とフローレンスも笑った。
そしてカーネルさん、サラさんに向き合い
「すいません、私にあまり時間がなくてこの壁画を急いで描き切ってしまいたいと思っています。この教会で2日間ほど寝泊まりさせて下さい。どうかお願いします。」と頭を下げて頼んだ。
最初に口を開いたのはサラさんだった。
「フローレンスさんが訳ありなのは何となく気が付いていたわ。ここまで来たら最後まで私はやって欲しいわ。最低限の飲食と寝床は用意します。フローレンスさん頑張って。」と認めて貰えた。となりでカーネルさんも頷いていた。
「私は近くだからいつものように通うわよ。フローレンス。それでいいでしょ?」とナタリーさんが申し訳なさそうに言ってきた。
「もちろんです。」と完成させられる喜びに満面の笑顔が溢れるフローレンス。
「僕は明日、明後日は朝7時から早出するよ。最終日は終わるまで帰らない。」とマックさんもそう言った。
「皆さんよろしくお願いします。」と改めてお願いした。
壁画の方はもう残りがフローレンスの手掛けた部分がほとんどだった。それを3人で手分けし黙々と作業に取り掛かった。
その夜、皆が帰った後も壁画を描き続けるフローレンスの姿があった。教会の消灯時間に合わせてサラが夜食を礼拝堂に運び込んだ。
「あんまり無理はしないでね。フローレンスさん。」と声をかけるがフローレンスは壁に向かったきり手を動かし続け返事をしなかった。
この日はフローレンスは一睡もせず一晩中描き続けた。
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