10 / 34
第10話 遠雷
しおりを挟む
沢村さんとの時間を過ごして帰ってから束の間。
あの状況を思い出してまた落ち込んでしまった。
早川さんと依頼人は一体どうなったんだろう。
気になった私は、仕事用に使っていたスマホの電源をつけた。
そして、早川さんと美術館に行った時に交換した連絡先を開き、最後のメッセージを見た。
水族館での待ち合わせの話で終わっている。
試しにメッセージを送ろうとした。
その時、我に帰って、捨てアカウントを消した。
もしまだ二人が一緒にいたら大変な事になる。
送る前にちゃんとした判断ができてよかった。
私はもうあの人に関わってはいけない。
そうまた胸に誓って眠りについた。
***
朝起きて、仕事に行く準備をして、電車に揺られて出勤。
別れさせ屋になる前も私はちゃんとした仕事はしていた。
ただ、あそこで働いて私は変わってしまったのかもしれない。
いや、恋人と親友に裏切られてからか。
恋は怖い。裏切られた時の心の傷が未だに癒えない。
会社について、オフィスのエントランスに行くと、後ろから声をかけられた。
「春日さんおはよう」
沢村さんだった。
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
沢村さんの顔を見るとホッとする。
その時、視線を感じた。
早川さんだった。
「早川おはよう。」
「おはようございます」
心なしか、早川さんの表情が暗い。
「早川大丈夫?なんかあった?」
沢村さん、気配りができて優しくていい上司だ。
ただ、その理由を知っている私にはここにいるのは拷問だ。
「大丈夫です。ありがとうございます」
早川さんと目が合ったけど私は目を逸らしてしまった。
罪悪感が溢れてくる。
エレベーターから降りて足早にオフィスに向かおうとした。
「春日さん」
早川さんに呼び止められた。
「はい」
この人に関わるのが怖い。
「昼に話したいことがある」
話したい事って──
胸騒ぎがする。
「じゃあ、また後で」
そう言って早川さんはデスクに行ってしまった。
私の事を言われたんだろうか。
だんだん追い詰められていく。
怖い。
午前中はそんな恐怖と戦いながら、なんとか仕事をこなした。
昼休みになると、早川さんに呼ばれた。
早川さんについていく。
エレベーターでまた最上階に行って、屋上への階段を登る。
ドアを開けると、空が今にも泣き出しそうだった。
「雨降りそうだな」
「そうですね……」
雷の音が遠くから聞こえる。
早川さんはフェンスの方に行って、タバコに火をつけた。
早川さんを見てるとわかる。
自分の心が揺れ動いているのが。
「ちょっと心配だったから話したくて」
「え……」
「香織が……彼女が、君の事を疑っている」
あの人は早川さんにも言っているんだ。
もうここにいるのは危険すぎる。
「何かあったら教えて欲しい」
そんなこと言われても。
「彼女は事務所にも電話をかけてて、私の事を追求してます」
早川さんは驚いている。
「そんな事までしているのか……。自分で依頼しておいて、逆恨みだな」
「私が依頼を受けなければよかったんです」
この人に興味を持ってしまったせいでこんな事に。
「でも春日さんが受けなかったら他の人が来てたかもしれない。それでも結果は同じだ」
早川さんが近づいてきた。
「俺に興味があったってどういう事?」
それを今聞くの……?
「彼女が、愛を確かめたいという依頼が特殊だったので、相手がどんな人か知りたいという、ただの好奇心でした……」
「で、どうだった?」
言葉に詰まる。
「あなたの言うとおりでした……まんざらじゃなかったんです」
言っちゃいけないのに止められない。
私はおかしくなっている。
「あの時も、今も、あなたに惹かれているんです」
「そうか……」
早川さんの表情は変わらなかった。
「ごめんなさい。余計な事を言いました。不快にさせてしまったら申し訳ありません。私は何も望んでいません。」
私はその場を立ち去ろうとした。
「二度と近づくなってあの時言ったけど」
その言葉に足が止まった。
「再会して思った。俺も君に惹かれているよ」
早川さんはそのまま私の横を通り過ぎて行ってしまった。
私は膝から崩れてしまった。
「そんな事言われても……」
どうしようもない。
先が見えないこの状況に戸惑うばかりだった。
あの状況を思い出してまた落ち込んでしまった。
早川さんと依頼人は一体どうなったんだろう。
気になった私は、仕事用に使っていたスマホの電源をつけた。
そして、早川さんと美術館に行った時に交換した連絡先を開き、最後のメッセージを見た。
水族館での待ち合わせの話で終わっている。
試しにメッセージを送ろうとした。
その時、我に帰って、捨てアカウントを消した。
もしまだ二人が一緒にいたら大変な事になる。
送る前にちゃんとした判断ができてよかった。
私はもうあの人に関わってはいけない。
そうまた胸に誓って眠りについた。
***
朝起きて、仕事に行く準備をして、電車に揺られて出勤。
別れさせ屋になる前も私はちゃんとした仕事はしていた。
ただ、あそこで働いて私は変わってしまったのかもしれない。
いや、恋人と親友に裏切られてからか。
恋は怖い。裏切られた時の心の傷が未だに癒えない。
会社について、オフィスのエントランスに行くと、後ろから声をかけられた。
「春日さんおはよう」
沢村さんだった。
「おはようございます。昨日はありがとうございました」
沢村さんの顔を見るとホッとする。
その時、視線を感じた。
早川さんだった。
「早川おはよう。」
「おはようございます」
心なしか、早川さんの表情が暗い。
「早川大丈夫?なんかあった?」
沢村さん、気配りができて優しくていい上司だ。
ただ、その理由を知っている私にはここにいるのは拷問だ。
「大丈夫です。ありがとうございます」
早川さんと目が合ったけど私は目を逸らしてしまった。
罪悪感が溢れてくる。
エレベーターから降りて足早にオフィスに向かおうとした。
「春日さん」
早川さんに呼び止められた。
「はい」
この人に関わるのが怖い。
「昼に話したいことがある」
話したい事って──
胸騒ぎがする。
「じゃあ、また後で」
そう言って早川さんはデスクに行ってしまった。
私の事を言われたんだろうか。
だんだん追い詰められていく。
怖い。
午前中はそんな恐怖と戦いながら、なんとか仕事をこなした。
昼休みになると、早川さんに呼ばれた。
早川さんについていく。
エレベーターでまた最上階に行って、屋上への階段を登る。
ドアを開けると、空が今にも泣き出しそうだった。
「雨降りそうだな」
「そうですね……」
雷の音が遠くから聞こえる。
早川さんはフェンスの方に行って、タバコに火をつけた。
早川さんを見てるとわかる。
自分の心が揺れ動いているのが。
「ちょっと心配だったから話したくて」
「え……」
「香織が……彼女が、君の事を疑っている」
あの人は早川さんにも言っているんだ。
もうここにいるのは危険すぎる。
「何かあったら教えて欲しい」
そんなこと言われても。
「彼女は事務所にも電話をかけてて、私の事を追求してます」
早川さんは驚いている。
「そんな事までしているのか……。自分で依頼しておいて、逆恨みだな」
「私が依頼を受けなければよかったんです」
この人に興味を持ってしまったせいでこんな事に。
「でも春日さんが受けなかったら他の人が来てたかもしれない。それでも結果は同じだ」
早川さんが近づいてきた。
「俺に興味があったってどういう事?」
それを今聞くの……?
「彼女が、愛を確かめたいという依頼が特殊だったので、相手がどんな人か知りたいという、ただの好奇心でした……」
「で、どうだった?」
言葉に詰まる。
「あなたの言うとおりでした……まんざらじゃなかったんです」
言っちゃいけないのに止められない。
私はおかしくなっている。
「あの時も、今も、あなたに惹かれているんです」
「そうか……」
早川さんの表情は変わらなかった。
「ごめんなさい。余計な事を言いました。不快にさせてしまったら申し訳ありません。私は何も望んでいません。」
私はその場を立ち去ろうとした。
「二度と近づくなってあの時言ったけど」
その言葉に足が止まった。
「再会して思った。俺も君に惹かれているよ」
早川さんはそのまま私の横を通り過ぎて行ってしまった。
私は膝から崩れてしまった。
「そんな事言われても……」
どうしようもない。
先が見えないこの状況に戸惑うばかりだった。
0
あなたにおすすめの小説
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話
紫さゆり
恋愛
オムニバス形式です。
理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。
大人の女性のストーリーです。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる