恋に堕ちる─別れさせ屋としての最後の仕事。彼と出会って私はまた恋をする。─

七転び八起き

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第13話 バカな女

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 私は次の日退院した。
 そして、家に帰る途中、派遣会社と沢村さんに退院した旨を伝えた。

 診断名は過労。
 心労が祟ってしまった。

 家に帰る途中に花屋に立ち寄った。
 最近気分が滅入りがちだから花を育てようと思った。
 ピンクのゼラニウムを買った。

 家に帰って、ベランダに花を置くと、部屋が明るくなった気がした。
 穏やかな日の日差しを浴びながら、好きな映画を見ていると、電話がかかってきた。

 母だった。

「もしもし」
「葵、実家に帰ってきなさい」

 キッパリと言われた。

「今更帰ってどうするの?」
「山中商事の御曹司さんはまだ葵のこと諦めてないわよ。玉の輿にのるなら今よ」

 母の同級生は地元の大きな会社の社長で、その息子が私のことを気に入って、地元にいる時に何度も求婚されていた。
 それが嫌だったから地元を出てきた。

 でも結局、地元を出てきてできた恋人と親友に裏切られて、落ちぶれて別れさせ屋で仕事をしていた。

 この世界に私の居場所はあるんだろうか。

 ならもういっそのこと──

「地元に帰ることを、考えておくよ」

 電話を切った後、カレンダーを見ながら考えた。
 契約期間満了日へのカウントダウン。
 あそこから離れれば私は解放される。

 早川さん──

 結局あの後どうなったんだろう。
 私は次どんな顔をすればいいんだろう。

 沢村さんにも助けてもらったし、なんとか週明けに出社しよう。
 そう心に決めた。

 ***

 深呼吸をして気持ちを切り替えて、私は会社の最寄駅に着いた。
 改札を抜けて真っすぐ歩くと──

 そこに早川さんが立っていた。
 真剣な眼差しだった。

「早川さん……」

 早川さんは頭を下げてきた。

「先日は申し訳ありませんでした」

 それは今まで見たことのない姿だった。

 なぜ私が謝られるの?

「謝らないでください!」

 そんな他人みたいに。

「もう、今後迷惑かけません」

 早川さんは虚な目で、そのまま会社の方に行ってしまった。

 目から涙が溢れた。

 私はその時、頭より体の方が先に動いた。
 全力で走って、早川さんの方へ。

「早川さん!」

 彼は驚いた顔で振り返った。
 全力で走ったせいでまともに言葉が出ない。

「何?」

 早川さんの姿を見ると、私の心がぎゅっと締め付けられる。

「……いいです」
「え?」

「私は別にこの想いが報われなくてもいいです。だから、今までと同じように接してください!」

 早川さんは困っている。

「俺と関わってもろくなことがない。また危険な目に遭うかもしれない」
「それでもいいんです」

 バカな女だ私は。
 でもそれくらいこの恋は止められないんだ。

 たとえ私が裁かれる側になっても──
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