恋に堕ちる─別れさせ屋としての最後の仕事。彼と出会って私はまた恋をする。─

七転び八起き

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第14話 凍りついた思考

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 会社に着いて早々、沢村さんに別室に呼び出された。

「体調どう?」
「はい、おかげさまで。沢村さんのおかげで助かりました。ありがとうございます」

 私は頭を下げた。

「二人の時は、そんなに畏まらなくていい」

 でも……

「沢村さんは派遣先の上司ですので」
「そう言われると辛いな」

 沢村さんの声のトーンが下がった。

「俺への牽制?」
「いえ、そういうわけではありません!」

 まずい、怒らせてしまった。

「春日さん、早川のこと好きなんだろ。見てればわかる」

 恥ずかしさを隠すために俯いてしまった。
 そんな露骨に態度に見せてないはず。

「いえ、私は早川さんにそんな気持ちは持ってません」
「じゃあ、俺のことちゃんと見て」

 至近距離で見つめられて息が詰まる。
 深い瞳に吸い寄せられそうになる。
 怖くなって目を逸らしてしまった。

「……怖がらせてごめん」

 沢村さんは部屋から出て行こうとした。

「困ったことがあったら、またいつでも相談して」

 その時の沢村さんは、優しくて頼りがいのある上司の表情だった。
 私を助けてくれているのに、彼の気持ちに応えられなくて申し訳なかった。

 ***

 昼休み
 私は屋上に行ってみた。

 そっと覗いてみると、早川さんがいた。
 タバコを吸いながら空を見上げている。
 その姿を見ているだけで胸がいっぱいになる。

 話せなくていい。
 ただ遠くから見るだけでいい。

 最後の日まで──

 その時、振り返った早川さんと目が合ってしまった。
 思わず身を隠してしまった。

「そんなところでこそこそしてないで、来なよ」
「はい……」

 嬉しい。
 私は少し距離を置いて早川さんの隣に行った。

「懲りないね」

 早川さんは少し笑った。

「はい……ごめんなさい」

 二人だけの時間が流れる。
 とても尊い瞬間。

「あの……彼女さんとはどうなったんですか?」
「平行線。別れさせ屋に頼もうかな」

 笑えない。

「もう春日さんに二度と関わらないように言っておいた。もしまた同じことをしたら、彼女の関係者にも言うと」

 こんなに拗れてしまうなんて。

「あんな仕事をしたのを心底後悔してます」

 こんな形で出会わなければ。
 もっとちゃんとした形で出会えていれば。

「そうだな。でもその仕事してなかったら俺たちは出会ってなかった。だから、後悔してほしくない」

 それを告げると、早川さんは行ってしまった。

 胸が苦しい。
 私も、あの人と出会ったことに後悔はしていない。
 彼女に罵られても、過去の自分に責められても、この気持ちは変えられないんだ。
 必死に気持ちを抑えながら、デスクに戻った。

「春日さん、最近沢村さんと仲良いよね」

 隣の先輩が静かな声で言ってきた。

「いえ……ちょっとトラブルがあった時に助けていただいて」

 まずい、だんだんと周りも気づいていく。

「本当のことはよくわからないけど、念のために言うね。沢村さん奥さんいるよ」

 その瞬間、思考が凍りついた。
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