23 / 34
第23話 企み
しおりを挟む
春日さんが早川について行ったのを、俺は見ていた。
胸が引き裂かれるような思いだった。
目の前で好きな女が別の男と行ってしまう。
でも、俺はそれを止められるような立場じゃない。
俺は契約期間中は彼女の上司で、早川の上司でもある。
しかも周りには他の部下もいる。
恋人でもない俺が、二人を引き離す権利もない。
身動きが取れない状況がもどかしかった。
俺が自由になったら、あの子は俺を選ぶのか……?
あの子の心はどう見ても早川に向いている。
俺が足掻く意味はあるのか?
ただ、とにかく今妻との関係をこのままにしていたら、俺は何も前に進めない。
彼女の契約期間終了の日も間近に迫っている。
妻とのこの関係の決着をすぐにでもつけよう。
例え最終的に俺が選ばれなかったとしても。
***
飲み会が終わった深夜。
家に帰ると、ついさっきまで出かけていたような彼女の姿があった。
「あ、帰ってきたんだ」
彼女が俺に話しかけたのはかなり久しぶりな気がする。
「帰ってきたらまずいのか」
「別に。あなたも最近彼女できたんでしょ?」
「は……?」
「表情でわかるよ」
妻とほとんど話さないのになぜわかる。
「もしそうだとしたらなんなんだ」
「私ね、彼と別れるの。だから、前みたいにあなたと仲良くしたいの」
何言ってるんだこの女は……。
「俺のことを顧みず、他の男とよろしくやって、それでまた俺との関係を修復すると……」
俺の怒りが頂点に達した。
思い切り机に拳を振り下ろしていた。
「俺をバカにするのも大概にしろ」
俺はずっとしまってあったものを出した。
「何これ」
「見ればわかるだろう」
もう自分の欄には名前を書いてある。
ずっと持っていたが出せずにいた。
やっと突きつける覚悟ができた。
妻に俺の気持ちを。
「私は離婚するつもりはない」
「いい加減にしろよ」
「離婚するメリットが私にはない」
メリット……?
「俺の事はどうでもいいんだな」
「そんなことない。彼と別れてやっとわかった。あなたがどれだけ私を大切にしていたか」
今更そんなことを言っても遅い。
「金はいくらでもやる。俺の気持ちは変わらない」
「そう……そんなにあの女の子が好きなのね」
「は……?」
その時妻が見せたスマホ画面に、春日さんの姿が映った画像が写っていた。
「俺を尾行していたのか」
「気になったの。どんな子か」
まるで彼女を人質に取られた気分だ。
でも──
「俺は彼女とそういう関係ではない」
あの時、彼女が俺を止めてくれたのが救いだった。
俺はこの時のために、また用意していたものを出した。
封筒を差し出し、彼女がそれを見ると、表情が固まった。
「あなたも私を尾行してたんじゃない」
「俺は雇っていた。そんな暇はない」
決意を固めた日に実行に移していた。
「認めない」
「認めないなら、正式な場でやり合おうか」
その覚悟も固めた。
妻は俺を睨んだ。
「こんな男だとは思わなかった」
「それはこっちのセリフだ。まだ離婚を拒否するなら、両家にも言わせてもらう」
彼女は悔しそうな顔をしている。
「そう……あなたがそう出るなら私にも考えがある」
彼女は含みのある笑みを浮かべた。
嫌な予感がした。
でも、俺は春日さんを絶対に守る。
何があっても。
胸が引き裂かれるような思いだった。
目の前で好きな女が別の男と行ってしまう。
でも、俺はそれを止められるような立場じゃない。
俺は契約期間中は彼女の上司で、早川の上司でもある。
しかも周りには他の部下もいる。
恋人でもない俺が、二人を引き離す権利もない。
身動きが取れない状況がもどかしかった。
俺が自由になったら、あの子は俺を選ぶのか……?
あの子の心はどう見ても早川に向いている。
俺が足掻く意味はあるのか?
ただ、とにかく今妻との関係をこのままにしていたら、俺は何も前に進めない。
彼女の契約期間終了の日も間近に迫っている。
妻とのこの関係の決着をすぐにでもつけよう。
例え最終的に俺が選ばれなかったとしても。
***
飲み会が終わった深夜。
家に帰ると、ついさっきまで出かけていたような彼女の姿があった。
「あ、帰ってきたんだ」
彼女が俺に話しかけたのはかなり久しぶりな気がする。
「帰ってきたらまずいのか」
「別に。あなたも最近彼女できたんでしょ?」
「は……?」
「表情でわかるよ」
妻とほとんど話さないのになぜわかる。
「もしそうだとしたらなんなんだ」
「私ね、彼と別れるの。だから、前みたいにあなたと仲良くしたいの」
何言ってるんだこの女は……。
「俺のことを顧みず、他の男とよろしくやって、それでまた俺との関係を修復すると……」
俺の怒りが頂点に達した。
思い切り机に拳を振り下ろしていた。
「俺をバカにするのも大概にしろ」
俺はずっとしまってあったものを出した。
「何これ」
「見ればわかるだろう」
もう自分の欄には名前を書いてある。
ずっと持っていたが出せずにいた。
やっと突きつける覚悟ができた。
妻に俺の気持ちを。
「私は離婚するつもりはない」
「いい加減にしろよ」
「離婚するメリットが私にはない」
メリット……?
「俺の事はどうでもいいんだな」
「そんなことない。彼と別れてやっとわかった。あなたがどれだけ私を大切にしていたか」
今更そんなことを言っても遅い。
「金はいくらでもやる。俺の気持ちは変わらない」
「そう……そんなにあの女の子が好きなのね」
「は……?」
その時妻が見せたスマホ画面に、春日さんの姿が映った画像が写っていた。
「俺を尾行していたのか」
「気になったの。どんな子か」
まるで彼女を人質に取られた気分だ。
でも──
「俺は彼女とそういう関係ではない」
あの時、彼女が俺を止めてくれたのが救いだった。
俺はこの時のために、また用意していたものを出した。
封筒を差し出し、彼女がそれを見ると、表情が固まった。
「あなたも私を尾行してたんじゃない」
「俺は雇っていた。そんな暇はない」
決意を固めた日に実行に移していた。
「認めない」
「認めないなら、正式な場でやり合おうか」
その覚悟も固めた。
妻は俺を睨んだ。
「こんな男だとは思わなかった」
「それはこっちのセリフだ。まだ離婚を拒否するなら、両家にも言わせてもらう」
彼女は悔しそうな顔をしている。
「そう……あなたがそう出るなら私にも考えがある」
彼女は含みのある笑みを浮かべた。
嫌な予感がした。
でも、俺は春日さんを絶対に守る。
何があっても。
0
あなたにおすすめの小説
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
元カノと復縁する方法
なとみ
恋愛
「別れよっか」
同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。
会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。
自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。
表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!
隣の夫婦 ~離婚する、離婚しない、身近な夫婦の話
紫さゆり
恋愛
オムニバス形式です。
理解し合って結婚したはずの梓、同級生との再会が思わぬことになる雅美、年下の夫のかつての妻に引け目を感じる千晴、昔の恋の後悔から前向きになれない志織。
大人の女性のストーリーです。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる