恋に堕ちる─別れさせ屋としての最後の仕事。彼と出会って私はまた恋をする。─

七転び八起き

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第23話 企み

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 春日さんが早川について行ったのを、俺は見ていた。
 胸が引き裂かれるような思いだった。
 目の前で好きな女が別の男と行ってしまう。

 でも、俺はそれを止められるような立場じゃない。
 俺は契約期間中は彼女の上司で、早川の上司でもある。
 しかも周りには他の部下もいる。

 恋人でもない俺が、二人を引き離す権利もない。
 身動きが取れない状況がもどかしかった。

 俺が自由になったら、あの子は俺を選ぶのか……?
 あの子の心はどう見ても早川に向いている。
 俺が足掻く意味はあるのか?

 ただ、とにかく今妻との関係をこのままにしていたら、俺は何も前に進めない。
 彼女の契約期間終了の日も間近に迫っている。
 妻とのこの関係の決着をすぐにでもつけよう。
 例え最終的に俺が選ばれなかったとしても。

 ***

 飲み会が終わった深夜。

 家に帰ると、ついさっきまで出かけていたような彼女の姿があった。

「あ、帰ってきたんだ」

 彼女が俺に話しかけたのはかなり久しぶりな気がする。

「帰ってきたらまずいのか」
「別に。あなたも最近彼女できたんでしょ?」
「は……?」
「表情でわかるよ」

 妻とほとんど話さないのになぜわかる。

「もしそうだとしたらなんなんだ」
「私ね、彼と別れるの。だから、前みたいにあなたと仲良くしたいの」

 何言ってるんだこの女は……。

「俺のことを顧みず、他の男とよろしくやって、それでまた俺との関係を修復すると……」

 俺の怒りが頂点に達した。
 思い切り机に拳を振り下ろしていた。

「俺をバカにするのも大概にしろ」

 俺はずっとしまってあったものを出した。

「何これ」
「見ればわかるだろう」

 もう自分の欄には名前を書いてある。
 ずっと持っていたが出せずにいた。
 やっと突きつける覚悟ができた。
 妻に俺の気持ちを。

「私は離婚するつもりはない」
「いい加減にしろよ」
「離婚するメリットが私にはない」

 メリット……?

「俺の事はどうでもいいんだな」
「そんなことない。彼と別れてやっとわかった。あなたがどれだけ私を大切にしていたか」

 今更そんなことを言っても遅い。

「金はいくらでもやる。俺の気持ちは変わらない」
「そう……そんなにあの女の子が好きなのね」
「は……?」

 その時妻が見せたスマホ画面に、春日さんの姿が映った画像が写っていた。

「俺を尾行していたのか」
「気になったの。どんな子か」

 まるで彼女を人質に取られた気分だ。

 でも──

「俺は彼女とそういう関係ではない」

 あの時、彼女が俺を止めてくれたのが救いだった。
 俺はこの時のために、また用意していたものを出した。
 封筒を差し出し、彼女がそれを見ると、表情が固まった。

「あなたも私を尾行してたんじゃない」
「俺は雇っていた。そんな暇はない」

 決意を固めた日に実行に移していた。

「認めない」
「認めないなら、正式な場でやり合おうか」

 その覚悟も固めた。
 妻は俺を睨んだ。

「こんな男だとは思わなかった」
「それはこっちのセリフだ。まだ離婚を拒否するなら、両家にも言わせてもらう」

 彼女は悔しそうな顔をしている。

「そう……あなたがそう出るなら私にも考えがある」

 彼女は含みのある笑みを浮かべた。
 嫌な予感がした。

 でも、俺は春日さんを絶対に守る。

 何があっても。
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