恋に堕ちる─別れさせ屋としての最後の仕事。彼と出会って私はまた恋をする。─

七転び八起き

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第24話 追いかけてくる過去

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 あの日、早川さんは酔いが覚めて自力で家に帰った。
 心配だったから、また早川さんの連絡先を聞いてしまった。
 でも連絡はしなかった。
 これはあくまで同じ職場にいる社員として、安否確認のため……と必死に自分に言い訳をしていた。
 次の日、何もなかったかのように普通に早川さんが出社していて安心した。

 でも──

 沢村さんの様子がおかしい。
 いつも穏やかな雰囲気なのに、少し緊張感がある。
 何かあったのか……。
 でもそれを聞く勇気がなかった。
 もし自分から足を踏み入れてしまったら、抜け出せなくなる怖さがあった。
 廊下で私とすれ違う時に、私に気がついてない。

「沢村さん大丈夫ですか……?」

 つい声をかけてしまった。

「あ、ごめん。大丈夫だ」

 それだけ言って彼は行ってしまった。
 心配だ……。

 私はそろそろ考えないといけない、契約期間が終わった後のことを。
 もう期限はかなり迫っていた。

 私は前は実家に帰ると決めていた。
 でも今は、まだここにいたいと思っている。

 ちゃんと決断して派遣会社にそろそろ言わないといけない。

 ***

 数日後

 会社帰り、百貨店に寄る途中、お店のショーウィンドウにウェディングドレスが飾られていた。
 真っ白でとても美しかった。
 私も着ることができるのだろうか。
 あんな仕事をしていたのに。

 ──結婚

 それが必ずしも幸せなものではないことを、あの仕事をやってて痛感した。

 私の幸せってなんだろう。
 今は何も思い浮かばなかった。

 ***

 用事が終わり、家に帰るとポストの中に宛先不明の封筒が入っていた。
 中を見ると、写真が数枚入っていた。
 写真には沢村さんと知らない女性が一緒にいる瞬間を撮影したものが入っていた。

 これは一体……

 このやり口、似ている。
 相手の不信感を煽って別れさせる手法。
 もしかしたら、これは別れさせ屋の仕業……?

 まさか。
 沢村さんの奥さん……?
 奥さんに私の存在がバレている?

 嫌な汗が伝った。
 まさか自分が標的にされるなんて思ってもみなかった。
 夫婦関係が破綻しているのは本当なの?

 私はスマホ画面を開いた。
 前沢村さんと交換した連絡先。
 交換したきり連絡はとっていなかった。
 私は電話をかけてみた。
 呼び出し音がしばらく鳴った後、通話になった。

「春日さん、どうしたの?」

 沢村さんの声を電話で聞けてホッとしている自分がいた。

「沢村さん、奥さんとはその後どうなってますか……?」

 突然聞かれてびっくりしたのか沢村さんは言葉に詰まっていた。

「あまり言いたくないが、よりを戻したいと言われて平行線になってしまっている」

 そういうことか。

「自宅のポストに沢村さんと知らない女性が写ってる写真が入ってました」
「……それはどんな見た目の女だ?」
「ベージュのワンピースの女性です」
「ああ。突然道を聞いてきた女か。やけに距離が近くて違和感があった」

 やっぱり……

「沢村さんの奥さん、恐らくですけど……別れさせ屋使ってる可能性あります」
「え?」
「やり方が似てます」

 暫く沢村さんは考えていた。

「それ、今から取りに行っていい?」
「え、今からですか?」
「うん。悪いけどすぐに回収したい」
「……わかりました」
「迷惑かけてごめん。すぐに向かう」

 電話が切れた後、私は窓の外を見つめながら、彼を待っていた。
 過去が現在に絡んで私の足を引っ張るのを、感じながら。

 ***
 しばらく待っていると、沢村さんから連絡がきた。

「今春日さんの家の近くのコンビニに停めてる」
「はい、今行きます」

 私は封筒を持ってコンビニに向かった。

 ***

 コンビニの駐車場には沢村さんの車が停まっていた。
 沢村さんは私に気がつくと車から出てきた。

「ごめん、こんな時間に来て」
「いえ……私の存在、奥さん知ってるんですね」
「……うん」

 しばらく私たちはその場に立ち尽くしていた。

「妻とのことで、君まで巻き込むことになるとは思わなかった。」
「いえ……私は大丈夫です」
「こうなった以上、決着がちゃんとつくまで君とは距離を置く。それまでは君への恋愛感情は忘れる。今はあくまで期限付きの上司と部下。それだけだ」

 沢村さんは車に乗った。
 車にエンジンがかかる。

「決着がついたら……また海に一緒に行ってくれる?」

 沢村さんの優しい瞳。

「はい。また一緒に海に行きたいです」

 沢村さんはそして、行ってしまった。

 無関係だったとはいえない。
 いつも助けてもらってばかりだった。
 だから私も何かできればいいのに……。
 自分の無力さを感じた。

 沢村さんの車を見送りながら、彼の行く先が明るい未来であることを祈った。
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