恋に堕ちる─別れさせ屋としての最後の仕事。彼と出会って私はまた恋をする。─

七転び八起き

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第25話 変わりたい

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 その日また私は屋上にいた。
 とうとう派遣会社から連絡がきた。

『次はどうされますか?』

 実家に帰るつもりでいた、ずっと。

 でも私は──

「別の会社を紹介してほしいです」

 この会社から離れて、この地で別の世界に行ってみようと思った。

『わかりました。ではまたご連絡します』

 名残惜しいけど、私はこのままじゃダメだ。
 ずっとぐるぐる同じところを歩いてしまう。

 気がつくと隣に早川さんがいた。
 ライターで火をつけてタバコを吸っている。

「早川さん、一日どのくらい吸うんですか?」
「……箱半分いかないかな」
「そうなんですね。うちの父は一日一箱くらい吸ってて実家タバコ臭くて」
「俺もそのうちそうなるかも」
「え?」
「ストレス溜まると増えるんだよね」

 タバコにはストレスを緩和する作用があったような……

「それは、ストレス貯めちゃダメですね」
「春日さんといれば減るかも」

 サラッと言われたその言葉に、胸が高鳴った。
 苦しい……
 でも、私はここからもうすぐ離れる。

「ここの契約期間終わったらどうするの?」

 真剣な声で早川さんが聞いてきた。

「別の会社を紹介してもらいます」
「そうか……」
「屋上でお話しするのも、あと少しです」

 だから、一秒一秒を大切に過ごしたい。
 思い出に刻みたい。

「寂しい」
「え?」
「行くなよ」

 何も言えなくなってしまった。
 表情は何も変わらず、早川さんの言葉だけが空に浮かんでいく。

「いえ、私は、変わりたいんです」
「変わっちゃうの?」

 なぜ今日は色々言ってくるんだろう。

「今のままじゃダメだと思うんです」
「……俺もこのままじゃダメだな」

 早川さんがタバコを消した。

「じゃあ、また」

 そう言って、早川さんは振り返らずに行ってしまった。
 いつもより背中が少し寂しそうに見えた。
 もうこの時間がなくなると思うと寂しくて仕方がない。
 まだ気持ちの整理はできてない。

 早川さんと沢村さん。
 どっちつかずな状態をここで繰り返したくない。

 私が進んだ先にもしまた出会えたら……

 そう想いを馳せながら、昼の時間は過ぎていった。
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