恋に堕ちる─別れさせ屋としての最後の仕事。彼と出会って私はまた恋をする。─

七転び八起き

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第30話 再会

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「春日さん大丈夫!?」

 桜井さんが心配そうに覗き込む。

「すみません、少し体調が……」
「無理しないで。残りは私がやるから」
「いえ、大丈夫です!」

 深呼吸をして、気持ちを整える。
 仕事に集中しないと。

 でも、会場に戻ると、視線を感じた。
 沢村さんが、じっとこちらを見ている。

 披露宴が終わり、新郎新婦を見送った後、ゲストたちも次々と会場を後にしていく。

「お疲れ様でした」

 スタッフに挨拶をして、私も帰ろうとした時──

「春日さん」

 背後から声がした。
 振り返ると、沢村さんが立っていた。

「……お久しぶりです」
「久しぶり。ここで働いていたんだね」
「はい……」

 沈黙が流れる。
 あの日以来、一年ぶりの再会。

「元気そうで、よかった」

 沢村さんの表情は、あの時より穏やかだった。

「沢村さんも……」

 その後私たちは場所を変えた。

 ***

 ホテルのロビーの片隅で私たちは外の景色を見ていた。

「妻とは離婚した。半年前に」
「そう……ですか」

 あれからずっと気になっていた。

「離婚について真剣に話し合った後に、もう一度やり直そうとしていた。……でもやっぱり無理だった」

 一年ぶりに見た沢村さんを見ると、あの三か月の色々な思い出が蘇る。

「春日さんはあれからどうしてた?」

 突然向けられた視線に胸が跳ねた。

「仕事を覚えるのに必死でした」
「そうか……全然違う職種だと覚えるのも慣れるのも一苦労だな」

 頼もしい上司の表情。
 この人といると安心する。

「会社の人たちは元気ですか?」
「ああ。春日さんがいなくなってから、皆寂しがっていたよ。俺も含めて」

 顔が熱くなった。

「……早川は辞めたよ」
「え……?」

 その時、屋上にいた時の早川さんの姿が頭をよぎった。
 もうあそこにあの人はいないの……?
 呼吸が浅くなる。

「なんで辞めてしまったんでしょう……」
「理由は明確には言わなかったが、おそらく過去を清算するためかもしれない。俺の勘だが」

 過去を清算?
 私のことも?
 もうあの人には会えないの……?
 涙が溢れそうになった。

 連絡先はスマホに残っている。
 だけど、連絡する勇気はなかった。
 私自身の心は未だにあの時のまま止まっている。

 早川さんへの恋心。
 沢村さんへの想い。

 どちらか選ぶなんてできなかった。
 どちらも必要だったんだと、今は思う。

「早川に会いたい?」

 私の心を見透かしたように沢村さんが尋ねてくる。

「はい……ちゃんと無事に生きているか気になります」
「そうだな。あまり人に心を打ち明けるタイプじゃないからな、あいつは」

 沢村さんは、上司として早川さんをちゃんと見ていたんだ。
 私はあまりよくわかっていなかった。
 ただ、なぜかあの人とは、何も話さなくても通じ合っている何かを感じていた。

「気になるなら連絡してみるといい」
「はい……」
「ところで」

 沢村さんに顔を覗き込まれた。

「約束、覚えてる?」
「あ、はい!」

 一緒にまた海に行こうって言われていた。

「今度予定が合ったら行こう」
「はい。私も久しぶりに見たいです。海を」

 ちゃんと向き合いたい。
 私のこの複雑な感情と。
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