ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

七転び八起き

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第四章 従弟

第46話

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 私は新しくバイトを始めることにした。
 二次の合格発表まで期間があるし、家にいても悶々とするのが嫌だった。

 場所は最近近くにできた本屋のブックカフェ。
 本屋の匂いにコーヒーの香り、静かな空間。
 とても落ち着く。

 お客さんも穏やかそうな人が多くて、社員の人も、他のバイトの人も優しい。
 余計な事を考えなくて済むから、ここで働けてラッキーだ。

 でも、先生には凄い反対された。
 とにかく嫉妬深いし、勝手に妄想して落ち込むし。

 でも私も自由な時間が欲しい!
 私の意思が強かったからか諦めていたけど、バイトは送迎するとか言い出して、やっぱり自由がない。

 とりあえず、今はこの空間の、この時間を楽しく過ごしたい。

 バイトが終わってスマホを見たら、先生からのメッセージ。

『終わった?』

 あー急がなきゃ。

 その時、記憶にない番号からの着信。

 変な電話かもしれないからスルーしようとしたけど──

「もしもし……?」

 出てしまった。

「白乃さん……」

 この声は……遼君?

「どうしたの?」

 遼君の声は掠れていた。

「仕事の女の……元カレみたいなのに、ボコられた」

 え!?

「警察呼びなよ!」

 また嘘かもしれない。
 でも本当ならそうすべき。

「親にバレるから無理」

 でも……。

「血が止まらないんだ……」

 ダメだ。騙される。でも──

 私は、向かってしまった。

 ***

 遼君が教えてくれた場所は、隣の駅の雑居ビルの路地裏だった。

 遼君は──

 ボロボロだった。

 痣だらけで、地面に座り込んでいた。
 口の中も切ったみたいだ。
 赤く染まっている。

「遼君!」
「白乃さん来てくれたんだ」

 その瞳は、安心と救いを求めていた。

「ちゃんと警察呼んで、救急車も呼ぼう?」
「だめだ!」

 遼君は頑なだった。
 そのままヨロヨロ立ち上がって、足を引きずって歩こうとした。
 怪我した部分から、血が流れている。

 仕方なく、私は急いでドラッグストアに行って、色々なものを買い込んで遼君の場所に戻って、応急処置をした。

「どこか折れてるかもしれないから、病院行かないと」
「今日保険証持ってないし、痛みが続いたら行くよ」

 遼君の瞳は虚ろだった。

 その時、先生から電話がかかってきた。

『どこにいる?まだ?』
「すみません!バイトでトラブルがあって……まだ時間かかります」
『……待ってる』

 遼君が少し笑った。

「親みたい」

 確かに過保護だけど。そんなことより、

「遼君もうこの仕事辞めた方がいいよ」

 遼君はしばらくぼーっとしていた。

「うん。やっと辞める決心ができた」

 私は遼君に肩を貸して、ゆっくりと歩いた。
 タクシーを呼ぼうかと思ったけど、お金がなかった。

 もう、こうなったら──
 私は覚悟を決めた。

 ***

 しばらく近辺の椅子に座っていた。
 そしたら、真っ赤なスポーツカーが来て、中から冷酷な表情をした先生がでてきた。

「なんで嘘ついた?」
「すみません……」

 怖い!

 今度は先生は遼君を見た。

「お前の家に連れていく」
「は!?」

 先生と遼君は睨みあっていた。
 先生は遼君を無理やり後部座席に押し込んで、私は助手席に。

「家は?」
「教えねぇよ」

 これじゃ進めない!!

「確か私の家の近くなんだよね?」
「は?」

 先生の表情がまた怒りモードに。
 その後、家の近くまで車で行って、そこからまた言い合いになった。

「傷口開いたら大変だから、教えて?」

 私が聞いたら、遼君は教えてくれた。
 先生はそれにイライラしていた。
 先生は着いたら直ぐに降りて、遼君の家のインターホンを押した。

 いきなり!?

 そこから出てきたのは──
 先生にどこか面影のある中年男性だった。

「夏雄君、久しぶりだね~。結婚の事はびっくりしたけど、そういう事もあるよね~」
「お久しぶりです。その節はご迷惑をおかけし、申し訳ありませんでした。」

 先生は、よそ行きの笑顔だった。

「立派な大学を出て、しっかり教師をして、本当に君は素晴らしい」

 先生、そんなに高学歴なの?
 それは知らなかった。
 でも、それより、そのほめ方に違和感を感じた。

 そしてそのあと、その男性は、チラっと遼君を見た。

「お前今度は何をしたんだ……?」

 遼君は目をそらして黙っていた。

「夏雄君と比べてお前は、本当に落ちこぼれだな」

 その男性はそのまま奥さんを呼んで、慌てて来た奥さんが遼君を連れて行った。

 その時の遼君の顔は虚無だった。

 なんとなくわかった。
 遼君がなぜ夏雄先生に負の感情を持つのかが。
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