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袋の鼠
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──夜の王都
オペラ劇場周辺は紳士淑女で賑わっていた。
馬車から降りると、姉とカウリス様は腕を組んで歩いている。
二人で見つめあって幸せそうに話している。
何不自由なさそうな彼が、なぜあの屋敷であの夜会を開くのか不思議でならなかった。
「ユミリア、逸れるからこちらに来なさい」
父に促される。
劇場に入ると、天井が空のように高く、絵が描かれている。
オペラに来たことは初めてだ。
姉が私との行動を嫌がるせいで、家族での外出は私は基本的に屋敷で留守番をしていた。
劇場の席は、舞台を広く俯瞰できる特等席だった。
席は二人ずつに分かれていた。
姉とカウリス様は最前列、私と父は斜め後ろの離れた席だった。
暫くすると、舞台が幕を上げた。
オペラが始まる。
オペラを見ていたかったが、姉とカウリス様がコソコソ話しているのを見ていると、複雑な気持ちになり、私は席を立った。
「ユミリア、どうした?」
「ちょっと外の空気を吸いたくて」
私は劇場から出ようとした。
──その時
「どこに行くの」
腕を掴まれた。
カウリス様だった。
「外の空気を吸いに」
私は目を逸らした。
「俺から逃げようとしてるの?」
「え?」
「ずっと気にしているよね」
「それは…….あなたのせいです」
「そんなに怖がらせたかな」
カウリス様は少し笑みを浮かべている。
その表情は昨日のあの屋敷の時のよう。
「怖いです。あなたは姉の婚約者です。私には近づかないでください」
公爵令息といえど、私を弄んでいい理由にはならない。
「ねぇ、逃げると追いかけたくなるんだよ、男は」
カウリス様は全く動じない。
「姉を放置したままで大丈夫なんですか?」
「大事な取引相手を見かけたと言ったら信じている。オペラに夢中で、今なら問題ない」
彼は私を見据える。
獲物のように。
私は走った。
どこかに隠れてオペラが終わるまでの間、身を潜めようとしていた。
劇場の階段を登り、廊下を駆け抜け、目に入った部屋に飛び込んだ。
ドアを閉めようとした時、隙間に何か挟まった。
紳士用の靴だった。
まさか──
ドアが開くと不敵な笑みを浮かべたカウリス様がいた。
足音なんて聞こえなかった。
私は袋の鼠になってしまった。
オペラ劇場周辺は紳士淑女で賑わっていた。
馬車から降りると、姉とカウリス様は腕を組んで歩いている。
二人で見つめあって幸せそうに話している。
何不自由なさそうな彼が、なぜあの屋敷であの夜会を開くのか不思議でならなかった。
「ユミリア、逸れるからこちらに来なさい」
父に促される。
劇場に入ると、天井が空のように高く、絵が描かれている。
オペラに来たことは初めてだ。
姉が私との行動を嫌がるせいで、家族での外出は私は基本的に屋敷で留守番をしていた。
劇場の席は、舞台を広く俯瞰できる特等席だった。
席は二人ずつに分かれていた。
姉とカウリス様は最前列、私と父は斜め後ろの離れた席だった。
暫くすると、舞台が幕を上げた。
オペラが始まる。
オペラを見ていたかったが、姉とカウリス様がコソコソ話しているのを見ていると、複雑な気持ちになり、私は席を立った。
「ユミリア、どうした?」
「ちょっと外の空気を吸いたくて」
私は劇場から出ようとした。
──その時
「どこに行くの」
腕を掴まれた。
カウリス様だった。
「外の空気を吸いに」
私は目を逸らした。
「俺から逃げようとしてるの?」
「え?」
「ずっと気にしているよね」
「それは…….あなたのせいです」
「そんなに怖がらせたかな」
カウリス様は少し笑みを浮かべている。
その表情は昨日のあの屋敷の時のよう。
「怖いです。あなたは姉の婚約者です。私には近づかないでください」
公爵令息といえど、私を弄んでいい理由にはならない。
「ねぇ、逃げると追いかけたくなるんだよ、男は」
カウリス様は全く動じない。
「姉を放置したままで大丈夫なんですか?」
「大事な取引相手を見かけたと言ったら信じている。オペラに夢中で、今なら問題ない」
彼は私を見据える。
獲物のように。
私は走った。
どこかに隠れてオペラが終わるまでの間、身を潜めようとしていた。
劇場の階段を登り、廊下を駆け抜け、目に入った部屋に飛び込んだ。
ドアを閉めようとした時、隙間に何か挟まった。
紳士用の靴だった。
まさか──
ドアが開くと不敵な笑みを浮かべたカウリス様がいた。
足音なんて聞こえなかった。
私は袋の鼠になってしまった。
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