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第一章

一匹目

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 私、コーリアはただいま模索中である。
……何をかって?もちろん悪役狩りの計画。

 あぁ。ごめんごめん。今説明してあげる。私のすばらしい計画を。しばらく聞いててね。

 私、神崎 湖瑠璃はある日突然、異世界に転生した。突然といっていいものか?どうかはわからないけど。まぁ、とにかく転生した。私は交通事故で死んだのだ。あっけない最後である。あんなに仕事を頑張ってお金を貯めたのに。……そのお金はいったい誰の元に渡ってしまうのやら。
 私の転生先はコーリアという少女だった。裕福でお金もあって親にも恵まれて。容姿は綺麗な美少女。……ちなみにドリルな髪の毛。……そろそろ勘づいた?そう。私も驚いたよーー。どこの令嬢に転生したのかと思ったら

 こーれがびっくり。悪役令嬢なんだな。

はぁ?って話でしょ?そしてまさかの転生先が乙女ゲームの世界っていうね。なにこれ展開?あるある展開?どっちでもいいけど。とにかく悪役令嬢。
 それで私が転生した瞬間っていうのがまさに修羅場。コーリアにとってのバッドエンド。ヒロインにとってのハッピーエンド。悪役令嬢がつまり私が婚約破棄される瞬間だった。コーリアは逃げちゃったのかな。心だけ。でもね、私コーリアの気持ち今なら分かるんだ。
 転生した瞬間、コーリアの中に私という意識と記憶が混ざって新しいコーリアが誕生した。乙女ゲームをプレイしていた時はコーリアのことがすごく嫌いだった。わがままで自己中で。でも違った。それは、他人によって……本当の悪役たちによって積み重なって作られたもの。
 コーリアは優しくて、正直で心から人を愛することのできる少女。コーリアは実際、わがままもしていないし、いじめもしていない。コーリアは婚約者が心から好きだった。信じていた。信じてくれるだろうと思っていた。……でも他人によって壊されていった。婚約者もそれに巻き込まれ、落胆しコーリアを捨てた。……それが婚約破棄だ。……コーリアはありもしない罪で悲しみに落とされたのだ。……目の前には潤んだ目の女。自分にいじめられたと泣きつく女。私は知っている。

 ヒロインだ。

そしてコーリアにとっては

 赤の他人……話したことも関わりもない他人だった。

コーリアの心はどこにいったのか。まだこの体の奥に眠っているのか。コーリア……あなたは優しいね。婚約者から離れようとしていたんだから。

 婚約者とヒロインの未来のために。

 でも、ごめんね。あなたは優しいけど、私はそうではないんだ。だから、私があなたの無念を払ってあげる。っていうか……

 ムカつくから仕返ししたいの!ごめんね!!

「コーリア……お前には失望した…今日限りを持」
「ちょぉーーと。ストップ」
「なっ……話を…」
「あぁーーはいはい。婚約破棄でしょ?そんなの勝手にしちゃって。あんたなんてこっちから願い下げだから!」
「は?なにいって……」

あーあ。すごい顔しちゃってさ。泣きついてくれるとでも思ったの?

「……そんな顔しないで?アル。」
アル……アルドラートの相性。
「コーリア……」
と優しいコーリアはここまで。
「アル…いや婚約者さん?私もううんざりなの。ありもしない罪でさんざん言われるのは」
「違うわ!コーリアさんは嘘ついてる。私さんざんいじめられたのよ?コーリアさん……なんで反省しないの?」

焦りが見えてますよーー。以前のコーリアじゃ反抗できないでしょうね。……でも、ヒロインのあなたの声なんて私には届かない。
「焦らなくていいのよ?マライナ。バラシはしないわ。……今はね。この学院もでていくし婚約者もあなたにお譲りするわ。私には必要ないもの。」
「へ?」
私は背を向ける。このバカみたいな場所とはおさらばだ。
「コーリア!!……お前……」
「もう遅いわ。アル…あなたは私を……いや、コーリアを信じなかった。コーリアは眠ってしまったわ。あなたへの恋心と一緒にね……お別れよ」

「それじゃあ皆様ごきげんよう!!またお会いしましょう。」

立ち尽くす婚約者を背に笑った。

「あぁ。そうそう。私を陥れてくださった方たち。感謝のしるしに私と狩りでもいかが?後々、楽しみにしているわ。」

さぁ、狩りの開始よ。

 聞いてくださってありがとう。
 そんなわけで今、計画を練っている途中。あの場にいた人たちは私が壊れたと思っているみたいだけどそれは違うわ。あながち、間違いでもないけど。
 あなたたちはもっと恐ろしいものを呼び出してしまったのよ。そう、私という野獣をね。

悪役狩りの開始のチャイムが

   もうじき鳴り響く。


野獣という女の雄叫びが聞こえてるかも知れない。

 
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