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第一章

三匹目 1

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 コーリアこと私のドリルの髪にはある理由がある。そのいきさつを今から話そう。悪役令嬢お決まりのドリル頭になった理由を……
 そして、次の悪役狩りを始めるとしよう。

『今宵、秘密の本にて狩りを行います。たしなみは乙女の務め。さぁ、始めましょう』

 幼い頃、あるメイドがいた。名前をメイダという。私……コーリアにとってメイダは母親同然の存在だった。
 私の両親は派手な人たちで毎日のように夜会へ足を運んでいた。当然ながら、私への愛も温もりも一切なく大きな屋敷にはいつも……冷たい空気が流れる。一人残された私は、毎日のようにその空気の中でただあり続けた……

 これが私の過去。途中で切ったけど、ごめんね?感動の最中。でも、これ以上聞く必要はない。なぜかって?お答えしよう!これは全てデタラメだからである。少し長くはなるがもう少し私につきあって貰おう。ちなみに、ここからは本当の話だ。
 さっきはかわいそうな私のところまでだったか?空気だとかの。まあいい。そこから話を進めよう。でも、まずは事を訂正する必要がある。両親のことを。では……ここから、
 両親は病弱なコーリアをとても愛していた。しかし、体が敏感なコーリアはちょっとした風邪でも命を落としやすい。愛していても近づくことは許されない。菌を持ち込む訳には行かないからだ。両親は医師を探すため、そのつながりと支援を求めて夜会へ行った。夜会はたくさんの人が集まる場所。そしてそれは多くの貴族が集まる場所だということを意味する。優秀な医師とお金の支援のため参加していたのだ。
 病弱なコーリアはほとんど部屋を出ることはない。でも、コーリアは両親の夜会のことを知っていた。なぜかって?それが今回の本題であり、本当の黒幕……へとつながるキーである。
 ベッドの上で毎日を過ごす、一人ぼっちでかわいそうなコーリアにあるメイドが行った。
『おかわいそうなコーリア様。こんなに、幼くいらっしゃるのに……』
「……コーリア、かわいそうなの……?」
『えぇ……子供は親の愛情を貰って育つんですよ。まぁ、全員と言うわけではありませんが……』
今思えば不思議なことだ。なぜ、そのメイドはいつもコーリアの近くにいたんだ?普通なら菌を持ち込むまいとして、最低限部屋に来るものでは?でも……それだけでは悪者とは言えないが……
「コーリアは……愛されていないの?」
『……そうですね……私には分かりかねますが、毎日のように夜会へ行って。お嬢様を放りっぱなし。私は……愛情があるとは思えません。』
「そっ……か……愛されてないのかな」
幼い私はあまり理解することが出来なくて、でも心をえぐるような悲しさと孤独は覚えている。
「うぇ……ヒクッヒクッ」
泣いたって意味がないことはわかってる。両親は今そこにいないのだから。
『お嬢様!私がいます!私が……』
抱き締めてくれたメイドの温かさにどれほど救われただろう。……だけど今の私にとってその思い出から沸き上がる感情は『憎しみ』に近いものだった。いや、ほんとはあの時から分かっていた。この温もりに愛がないということは。でもすがりつきたかった、孤独を埋めたかったから。
あの時……抱き締めてくれた時。メイドの顔側にあった窓ガラスに移されて私の前の鏡に現れた……メイドの歪んだ唇と悪意に満ちたあの笑顔を見てしまったあの時に。
 そしてそのメイドが最後に言った言葉が
『お嬢様にはメイダがついております!!』

………………そう。

私と両親の絆をたちきった張本人。それは……私の信じていた。母親同然だったメイド……メイダだったのだ……

 
本当の悪役はこんなに近くにいたのである。ちゃんちゃん……


っとまぁ、昔話はここまで。コーリアのことだから?知っていたとしても何も言わないだろうけど……さ、みんなも知ってるでしょ?私の性格。とーぜんっ許せないわけ。まぁ何も言わずに?夜会へ出席していた両親にも非はあるわな。その最中でその……メイダさん?にすがりたくなるコーリアの気持ちも分かる。
でもさー信じちゃダメじゃん?歪んだ笑顔でしょ?悪意に満ちてるんでしょ?信用できないよね……こっから先はまだ話してないんだけど。
 あのあと、コーリアは両親を信じられなくなった。病弱な体が直ってからも。あの悪役令嬢お決まりのドリル頭は、メイダがセットしたもの。趣味悪いよねーそして、そのまま洗脳されて両親を突き放し孤独悪役令嬢の出来上がりってわけ。でも過去はもうどうしようもない。変えれるような特別な力、私持ってないしね!でもやっぱ許せない。悪役狩りはもちろんやるよ?メイダちゃん狩りはね。計画をどうするかな~っということでまず手始めに……

メイダちゃんの今を調べて見ました!いえい☆
そしてね!なんとなんと~メイドのメイダちゃん!今彼の有名な伯爵の奥さんらしい。伯爵夫人だよ?しかも、これまた前回同様。男癖悪く評判最悪!今回は男だけどね。地位を持ってるから誰も手が出せない!らしくて。こりゃ、私がやるっきゃないでしょ!だって……だてに悪役令嬢やってるわけじゃないからね私。そこそこの地位も権力も持ってるんだよ。彼の有名な伯爵よりはもちろん上!って、こ・と・は……私は手が出せちゃうんだな。これが。
…………てかさ、メイダちゃん……男癖悪いって言ってたけど……今何歳なわけ?私が三~五歳の時に使えていたメイドだし。その時は若づくりしてたけど、三十歳ぐらいだったよね?あれから少なくとも……十年はたってるよ?結構……いい年してるんじゃ……わぁお。うん……ガンバッテルンダネ。

まっいっか。どうせ許さないし。さっさと計画立てて始めよう。今回もだけど貴族だから油断はいけない。


今宵、計画立てし闇夜の乙女。獲物はもう手の内に。逃げることは叶わず。狩りを待つのみ。

「さぁ、始めましょう。本当の悪役狩りを。」

獲物は今も、狙われているとは露知らず。男と戯れます。一時の夢を……そして最後の夢を……

 どうぞお楽しみください……
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