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酔っぱらい(重度)
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マンションのエントランスで、彼の部屋の番号を押した。
もしここで彼女っぽい人が出てきたら、出張土産を渡しに来た友人、という設定で切り抜けよう。名目は、留守の間に観葉植物の世話をしてもらっていたお礼とかでいいだろう。
実際は出張などしてないし観葉植物も育ててないけれど。
よし、これでいける筈だ。
緊張しながら待っていると、少ししてから返事があった。
「誰?」
不機嫌そうな声。
シャワー、もしくは取り込み中だったのだろうか…
心配になりつつ名乗る。
「あの…新橋です…」
なるべく他人行儀に。
もし彼女がすぐ隣にいても疑われないように。
「っ……!」
驚いたような声の後、開錠の音がした。
「入って」
短く言って通話が切れた。
えっと…入って大丈夫…の筈…
彼が入れと言ったのだからと、いつもと違う素っ気なさすぎる態度に緊張しながらもエレベーターに乗った。
ポーンと軽い電子音がして、エレベーターが到着した。
彼の部屋の前で深呼吸をしてから、今度は部屋のインターホンを押した。一瞬ついてすぐ消えて、無言のまま開錠された。
入れってこと…だよね…?
そっとドアノブを回して開ける。
「お邪魔します…」
常にない対応に及び腰になる。
まぁ、常にない対応をしているのは私もなんだけれど。
でも、久々の他人の家に、状況もわからないのに合鍵で突入することはできなかった。
薄暗い廊下を、明かりのついているリビングの方へと向かう。
なんか…お酒臭い…?
リビングを覗き込むと、その理由がわかった。
テーブルの上に散らばったいくつものビールの空き缶。床に腰を下ろした、目のすわった彼。
随分飲んでいるようだ。
不味い時に来てしまったかもしれない。
思わず立ち竦んでいると、彼が皮肉気に笑って口を開いた。
「随分久しぶりだな。鍵を返しにでも来たのか?」
「あ…返した方がいいなら…」
カバンに手を伸ばすと首を横に振られた。
そして手を伸ばされたので近づくと、手首を握られ引っ張られ、彼の胸の中に倒れ込んだ。
「ちょっ…危な…んっ…」
文句は最後まで言わせてもらえなかった。久しぶりの彼の唇。酷くお酒臭いそれに塞がれて。
「んっ…」
反射的に首を振って離れようとした。自分が飲んでいない状態での、強いお酒の匂いが不快で。
けれど逆に強い力で押さえ込まれて、より深く舌が侵入してきた。
「ん…んっ……」
身体から力が抜けていく。
もう…抵抗できない…
「もう…俺は要らないか?」
震えているような声。
「え……?」
意味がわからなくて、ぼんやりと彼を見上げると、また唇を塞がれた。上顎を舐めあげられ背筋が震える。慣れ親しんだキスが、気持ちいい……
「今日も…して…いいよな…」
その声に、身体が彼に抱かれる気持ちよさを思い出した。返事を待たずに服を脱がせていく彼に、もう逆らう気になれずにコクリと頷いた。
もしここで彼女っぽい人が出てきたら、出張土産を渡しに来た友人、という設定で切り抜けよう。名目は、留守の間に観葉植物の世話をしてもらっていたお礼とかでいいだろう。
実際は出張などしてないし観葉植物も育ててないけれど。
よし、これでいける筈だ。
緊張しながら待っていると、少ししてから返事があった。
「誰?」
不機嫌そうな声。
シャワー、もしくは取り込み中だったのだろうか…
心配になりつつ名乗る。
「あの…新橋です…」
なるべく他人行儀に。
もし彼女がすぐ隣にいても疑われないように。
「っ……!」
驚いたような声の後、開錠の音がした。
「入って」
短く言って通話が切れた。
えっと…入って大丈夫…の筈…
彼が入れと言ったのだからと、いつもと違う素っ気なさすぎる態度に緊張しながらもエレベーターに乗った。
ポーンと軽い電子音がして、エレベーターが到着した。
彼の部屋の前で深呼吸をしてから、今度は部屋のインターホンを押した。一瞬ついてすぐ消えて、無言のまま開錠された。
入れってこと…だよね…?
そっとドアノブを回して開ける。
「お邪魔します…」
常にない対応に及び腰になる。
まぁ、常にない対応をしているのは私もなんだけれど。
でも、久々の他人の家に、状況もわからないのに合鍵で突入することはできなかった。
薄暗い廊下を、明かりのついているリビングの方へと向かう。
なんか…お酒臭い…?
リビングを覗き込むと、その理由がわかった。
テーブルの上に散らばったいくつものビールの空き缶。床に腰を下ろした、目のすわった彼。
随分飲んでいるようだ。
不味い時に来てしまったかもしれない。
思わず立ち竦んでいると、彼が皮肉気に笑って口を開いた。
「随分久しぶりだな。鍵を返しにでも来たのか?」
「あ…返した方がいいなら…」
カバンに手を伸ばすと首を横に振られた。
そして手を伸ばされたので近づくと、手首を握られ引っ張られ、彼の胸の中に倒れ込んだ。
「ちょっ…危な…んっ…」
文句は最後まで言わせてもらえなかった。久しぶりの彼の唇。酷くお酒臭いそれに塞がれて。
「んっ…」
反射的に首を振って離れようとした。自分が飲んでいない状態での、強いお酒の匂いが不快で。
けれど逆に強い力で押さえ込まれて、より深く舌が侵入してきた。
「ん…んっ……」
身体から力が抜けていく。
もう…抵抗できない…
「もう…俺は要らないか?」
震えているような声。
「え……?」
意味がわからなくて、ぼんやりと彼を見上げると、また唇を塞がれた。上顎を舐めあげられ背筋が震える。慣れ親しんだキスが、気持ちいい……
「今日も…して…いいよな…」
その声に、身体が彼に抱かれる気持ちよさを思い出した。返事を待たずに服を脱がせていく彼に、もう逆らう気になれずにコクリと頷いた。
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