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指輪の箱っぽいけど
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いつもの週末、彼の部屋でスマホでゲームをしていたら、
「受け取れ」
小さな箱を投げ渡された。
いきなり飛んできたそれを慌ててキャッチする。
よく指輪が入っていそうな箱。
小さくてなめらかな生地が張ってある箱。
でもまさか指輪な訳はないだろう。投げて寄越すくらいだし。
何かな?
気軽な気持ちで開けたら、全然気軽じゃない物が入っていた。
そのまさかの指輪だった。
しかもパッと見、本物にしか見えない大きな石の乗った、どう見てもエンゲージリングな指輪がデンと鎮座していた。
パタンと勢いよく蓋を閉じる。
彼が首を傾げた。
「気に入らなかったか?」
気に入るとか入らないとか、そういう問題じゃない!
パクパクと口を動かす私に彼が指摘した。
「声出てないぞ」
驚き過ぎて出ないんですよ!
心の声が何故か敬語になった。
「あ…え…何で…?」
やっときれぎれに問う。
これがドッキリという奴なんだろうか。でもこんな一般人を騙してどうする。
心臓がバクバクいってる。
そんな私に、彼はサラリと言った。
「結婚しよう」
いやいやいや。
何大真面目に言ってるの?
右を見る。左を見る。
カメラはない。
ドッキリ、じゃない…?
…じゃあ本気なの!?
近づいてきた彼が、硬直する私の手から箱を取り上げた。
あ、やっぱり私にじゃないよね?
ほんの少しがっかりしつつも、肩の力が抜けた。
……肩を落とした訳じゃない。力が抜けただけ……。
そう自分に言い聞かせる。
でも……
こういう冗談はちょっと笑えないよ……
悲しい気持ちでぼんやりと彼の手元を見る。言っていい冗談と悪い冗談がある。
今回のこれは完全にダメな方のやつだ。
そう思いつつもショックで抗議できずにいると、彼は箱を開けて中身を取り出した。そして私の手を取って勝手に薬指に嵌めた。
え………………?
「これで婚約成立だな」
その言葉に我に返る。
「どこの部族のしきたり!?そんなの聞いたことないよ!?」
思わず悲鳴をあげた。
踊りながら相手の周りを三周回れたら婚姻成立とか、そんなのどっかの国にはありそうだけど!少なくとも日本ではそんな一方的な儀式は無効だ。その筈だ。
ここは先進国で法治国家だ。
もらった指輪を嵌めたら婚約成立なんてある筈がない。恐ろしすぎる。
慌てて指輪を引き抜こうとする私の手を掴んだまま、彼は私の薬指に平然とキスをした。
「別にいいだろう」
「よくない!」
結婚にはお互いの合意が必要だ。
それが現代社会というものだ。
必死に手を彼から取り戻そうと頑張っていると、彼が面倒くさそうに大きくため息を吐いた。
「仕方ない。結婚する気になるまで抱くか」
何ですかね!?その乱暴な思考回路は!!
「ちょっ…待っ…!」
キスされて舌が入ってきた。
「安心しろ、体力には自信がある」
今それ、これっぽっちも私の安心材料にはならないんだけど!?
という抗議は、当然のように彼の口の中に消えていった。
その後どうなったかって?
…お察しの通りですが何か!!?
…承諾させられましたよ!だってそうしなきゃ許してもらえなかったんだもん!
最後の方は
「どうせ結果は変わらないのに抵抗してもっと俺に色々されたいだなんて、おまえやらしいな」
とまで言われたんだよ!?酷くない!?
とんだ言いがかりだと断固抗議したい。
最終的に、
「結婚する!結婚するから!だからもう許して!!!」
と叫んでそれで終了となった。
敗北感が半端ない。
多分、こんな風にプロポーズをオーケーさせられる女は、そうそういない筈だ。いちゃいけない。
っていうか正直未だに事態がよく飲み込めていない。
どうしてこうなった!?
もらった指輪は、なくすのが怖いので彼の家に置いて帰った。
あんな高価な物、カバンに入れてホイホイ外を歩けない。
っていうか、あんな碌につけられもしない物を何でわざわざ贈るんだろう。意味がわからない。
うっかりそう漏らしたら
「値段にびびったおまえを繋ぐ首枷にできるなら、買う価値は充分あった」
と頷かれた。
首枷って何!?って突っ込みたかったけれど、彼の目が本気だったのでやめておいた。真顔で説明されたら困る。
だってもう、私は彼から逃げられそうにないのだから。
「受け取れ」
小さな箱を投げ渡された。
いきなり飛んできたそれを慌ててキャッチする。
よく指輪が入っていそうな箱。
小さくてなめらかな生地が張ってある箱。
でもまさか指輪な訳はないだろう。投げて寄越すくらいだし。
何かな?
気軽な気持ちで開けたら、全然気軽じゃない物が入っていた。
そのまさかの指輪だった。
しかもパッと見、本物にしか見えない大きな石の乗った、どう見てもエンゲージリングな指輪がデンと鎮座していた。
パタンと勢いよく蓋を閉じる。
彼が首を傾げた。
「気に入らなかったか?」
気に入るとか入らないとか、そういう問題じゃない!
パクパクと口を動かす私に彼が指摘した。
「声出てないぞ」
驚き過ぎて出ないんですよ!
心の声が何故か敬語になった。
「あ…え…何で…?」
やっときれぎれに問う。
これがドッキリという奴なんだろうか。でもこんな一般人を騙してどうする。
心臓がバクバクいってる。
そんな私に、彼はサラリと言った。
「結婚しよう」
いやいやいや。
何大真面目に言ってるの?
右を見る。左を見る。
カメラはない。
ドッキリ、じゃない…?
…じゃあ本気なの!?
近づいてきた彼が、硬直する私の手から箱を取り上げた。
あ、やっぱり私にじゃないよね?
ほんの少しがっかりしつつも、肩の力が抜けた。
……肩を落とした訳じゃない。力が抜けただけ……。
そう自分に言い聞かせる。
でも……
こういう冗談はちょっと笑えないよ……
悲しい気持ちでぼんやりと彼の手元を見る。言っていい冗談と悪い冗談がある。
今回のこれは完全にダメな方のやつだ。
そう思いつつもショックで抗議できずにいると、彼は箱を開けて中身を取り出した。そして私の手を取って勝手に薬指に嵌めた。
え………………?
「これで婚約成立だな」
その言葉に我に返る。
「どこの部族のしきたり!?そんなの聞いたことないよ!?」
思わず悲鳴をあげた。
踊りながら相手の周りを三周回れたら婚姻成立とか、そんなのどっかの国にはありそうだけど!少なくとも日本ではそんな一方的な儀式は無効だ。その筈だ。
ここは先進国で法治国家だ。
もらった指輪を嵌めたら婚約成立なんてある筈がない。恐ろしすぎる。
慌てて指輪を引き抜こうとする私の手を掴んだまま、彼は私の薬指に平然とキスをした。
「別にいいだろう」
「よくない!」
結婚にはお互いの合意が必要だ。
それが現代社会というものだ。
必死に手を彼から取り戻そうと頑張っていると、彼が面倒くさそうに大きくため息を吐いた。
「仕方ない。結婚する気になるまで抱くか」
何ですかね!?その乱暴な思考回路は!!
「ちょっ…待っ…!」
キスされて舌が入ってきた。
「安心しろ、体力には自信がある」
今それ、これっぽっちも私の安心材料にはならないんだけど!?
という抗議は、当然のように彼の口の中に消えていった。
その後どうなったかって?
…お察しの通りですが何か!!?
…承諾させられましたよ!だってそうしなきゃ許してもらえなかったんだもん!
最後の方は
「どうせ結果は変わらないのに抵抗してもっと俺に色々されたいだなんて、おまえやらしいな」
とまで言われたんだよ!?酷くない!?
とんだ言いがかりだと断固抗議したい。
最終的に、
「結婚する!結婚するから!だからもう許して!!!」
と叫んでそれで終了となった。
敗北感が半端ない。
多分、こんな風にプロポーズをオーケーさせられる女は、そうそういない筈だ。いちゃいけない。
っていうか正直未だに事態がよく飲み込めていない。
どうしてこうなった!?
もらった指輪は、なくすのが怖いので彼の家に置いて帰った。
あんな高価な物、カバンに入れてホイホイ外を歩けない。
っていうか、あんな碌につけられもしない物を何でわざわざ贈るんだろう。意味がわからない。
うっかりそう漏らしたら
「値段にびびったおまえを繋ぐ首枷にできるなら、買う価値は充分あった」
と頷かれた。
首枷って何!?って突っ込みたかったけれど、彼の目が本気だったのでやめておいた。真顔で説明されたら困る。
だってもう、私は彼から逃げられそうにないのだから。
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