16 / 29
16・理久
しおりを挟む
午後の授業が始まり音量を切ったまままたスマホをバックに突っ込み授業を受けるが、さすがにそれからは身が入らなかった。
終業後元カノのメッセージがやっと止まり、俺は地元の友人たちにメッセージを送った。
別れた元カノに新しい彼女のことがバレたらしく突撃されそうだが、どんなルートからどれだけの情報がどのように漏れたのかまたその際の相手の反応を至急知りたい。また、今現在日本語の通じない宇宙人と化しているがこれの対処法と、さらにこれが野獣に変換した場合の対処法も至急。
一斉に、まじかよ!やべぇな!嘘だろ!とレスが来た。ちょっと待ってろ調べてみる、と続いた。
その後続々と報告が届いた。
俺と彼女が去年別れたという情報はあまり広まっていないのに、俺に新しい彼女が出来たという噂は地元の知人にほぼ伝わっていた。そのため元カノに同情する声多数らしい。その同情する筋から元カノに漏れたとしても不思議じゃないだろう、ということだった。ただ依然どこから漏れたか分からず、元カノの反応も分からない。
対処法としては、相手のアドレスを消してはならない、着拒しない、なるべく刺激しない、なるべく早く引っ越す、その後スマホを変える、くらいしか出てこなかった。
この程度の情報でもここまで出揃うのに何時間か掛かり、その間も元カノからのメッセージも次々上がり、音を切っているけれどスマホが途切れなく受信して画面が光る。
なんだか、スマホがただの光るおもちゃに見えてくる。ということはそろそろ俺の頭がオーバーロードし始めている。入ってくる情報が多すぎて処理しきれない。
もう家に帰って寝たい。彼女といちゃいちゃしたい。抱き合って笑い合いたい。
それでも、まだ帰れない。
こんな光るおもちゃになったスマホを持って部屋に帰れない。彼女に怪しまれるに決まっている。
電源を切ってしまいたいけどそれだと元カノが突撃してくる気がして恐ろしい。
廊下で突っ立ったままずっと一人でスマホを見ていた。友人たちがいつの間にかいなくなっていたことには気付いていたが、それでも俺は立ち続けていた。
しかし空が暗くなってきて、さすがにそろそろ自転車置き場に向かう。
依然メッセージは上がり続けているが、段々頻度が落ちてきた。
元カノは
『もうちょっと別のプランも考えてみるねー!』
というメッセージを最後に沈黙した。
友人たちからは
『とりあえず今分かることはこれで全部。で、連絡したヤツラにお前らがとっくに別れたことを積極的に広めるように頼んだから』
『何かあるとしても週末だろ?まだ先だし、落ち着けよ』
『むしろ準備できる猶予があるんだと思え』
と励まされた。
そうだな、とやっとスマホをバッグに仕舞って自転車に乗った。
今日のことなんか全部忘れて、彼女のいる部屋に帰ろう、と一目散に部屋に戻った。
いつも通りに彼女は夕食を準備して待っていてくれて、玄関先で抱きしめてキスしてその食卓をスルーして、そのままベッドに向かった。
何もかも忘れて彼女だけに溺れて快感を追いたかった。
それなのに頭の片隅でスマホが点滅する。
その点滅が信号に見える。こんな日々が、こんな幸せが、もうすぐ途切れる危険信号に。
絶対嫌だ。
焦りと恐れと不安が入り交じり、腕の中に彼女がいるのにいつも通りにできない。
ということもなく、不安は不安で頭の片隅に置いたまま、彼女への愛情も情欲も正常に満たされた。
「お料理冷めちゃう」
終わってもまだ抱きしめて身体を離さない俺に彼女が零す。
ごめん、と言いつつまだ離さない。
「続きは後にしよ」
彼女がそう囁いて、キスしてきた。
絶対、この子は手放さない。
絶対この日々を無くさない。
不安を頭の片隅に置きながら彼女を抱いて、そのせいで一層その気持ちが強くなった。
絶対邪魔させない。
そう決意した。
この子には一切知らせないまま、全て解決しよう。
この子も元彼と別れる時に俺を一切関わらせなかった。俺も同じようにしなければならないはずだ。
そのためにはやはりスマホで情報収集しなければならない。
その後食事して、一緒に風呂に入って、またベッドに戻っていちゃいちゃした。
ただたまにスマホに気を取られた。
音を切っていることを指摘されて、やばいサイト踏んだみたいでひっきりなしに着信があるから消したんだ、と苦し紛れの言い訳をした。
そうなんだ?と彼女は納得してくれたんだけど。
しかしいつまでも黙っているわけには行かないだろうと思う。
全て解決してから彼女に話そうと思う。とにかくこの週末までにさらに情報を集めてなんらかの対処をする。決め手が無ければ、誰かの案の通りに二人で出掛けるのもアリだ。
と計画していたのに。
その翌日の夜、いやもう朝方。
元カノに襲撃された。
終業後元カノのメッセージがやっと止まり、俺は地元の友人たちにメッセージを送った。
別れた元カノに新しい彼女のことがバレたらしく突撃されそうだが、どんなルートからどれだけの情報がどのように漏れたのかまたその際の相手の反応を至急知りたい。また、今現在日本語の通じない宇宙人と化しているがこれの対処法と、さらにこれが野獣に変換した場合の対処法も至急。
一斉に、まじかよ!やべぇな!嘘だろ!とレスが来た。ちょっと待ってろ調べてみる、と続いた。
その後続々と報告が届いた。
俺と彼女が去年別れたという情報はあまり広まっていないのに、俺に新しい彼女が出来たという噂は地元の知人にほぼ伝わっていた。そのため元カノに同情する声多数らしい。その同情する筋から元カノに漏れたとしても不思議じゃないだろう、ということだった。ただ依然どこから漏れたか分からず、元カノの反応も分からない。
対処法としては、相手のアドレスを消してはならない、着拒しない、なるべく刺激しない、なるべく早く引っ越す、その後スマホを変える、くらいしか出てこなかった。
この程度の情報でもここまで出揃うのに何時間か掛かり、その間も元カノからのメッセージも次々上がり、音を切っているけれどスマホが途切れなく受信して画面が光る。
なんだか、スマホがただの光るおもちゃに見えてくる。ということはそろそろ俺の頭がオーバーロードし始めている。入ってくる情報が多すぎて処理しきれない。
もう家に帰って寝たい。彼女といちゃいちゃしたい。抱き合って笑い合いたい。
それでも、まだ帰れない。
こんな光るおもちゃになったスマホを持って部屋に帰れない。彼女に怪しまれるに決まっている。
電源を切ってしまいたいけどそれだと元カノが突撃してくる気がして恐ろしい。
廊下で突っ立ったままずっと一人でスマホを見ていた。友人たちがいつの間にかいなくなっていたことには気付いていたが、それでも俺は立ち続けていた。
しかし空が暗くなってきて、さすがにそろそろ自転車置き場に向かう。
依然メッセージは上がり続けているが、段々頻度が落ちてきた。
元カノは
『もうちょっと別のプランも考えてみるねー!』
というメッセージを最後に沈黙した。
友人たちからは
『とりあえず今分かることはこれで全部。で、連絡したヤツラにお前らがとっくに別れたことを積極的に広めるように頼んだから』
『何かあるとしても週末だろ?まだ先だし、落ち着けよ』
『むしろ準備できる猶予があるんだと思え』
と励まされた。
そうだな、とやっとスマホをバッグに仕舞って自転車に乗った。
今日のことなんか全部忘れて、彼女のいる部屋に帰ろう、と一目散に部屋に戻った。
いつも通りに彼女は夕食を準備して待っていてくれて、玄関先で抱きしめてキスしてその食卓をスルーして、そのままベッドに向かった。
何もかも忘れて彼女だけに溺れて快感を追いたかった。
それなのに頭の片隅でスマホが点滅する。
その点滅が信号に見える。こんな日々が、こんな幸せが、もうすぐ途切れる危険信号に。
絶対嫌だ。
焦りと恐れと不安が入り交じり、腕の中に彼女がいるのにいつも通りにできない。
ということもなく、不安は不安で頭の片隅に置いたまま、彼女への愛情も情欲も正常に満たされた。
「お料理冷めちゃう」
終わってもまだ抱きしめて身体を離さない俺に彼女が零す。
ごめん、と言いつつまだ離さない。
「続きは後にしよ」
彼女がそう囁いて、キスしてきた。
絶対、この子は手放さない。
絶対この日々を無くさない。
不安を頭の片隅に置きながら彼女を抱いて、そのせいで一層その気持ちが強くなった。
絶対邪魔させない。
そう決意した。
この子には一切知らせないまま、全て解決しよう。
この子も元彼と別れる時に俺を一切関わらせなかった。俺も同じようにしなければならないはずだ。
そのためにはやはりスマホで情報収集しなければならない。
その後食事して、一緒に風呂に入って、またベッドに戻っていちゃいちゃした。
ただたまにスマホに気を取られた。
音を切っていることを指摘されて、やばいサイト踏んだみたいでひっきりなしに着信があるから消したんだ、と苦し紛れの言い訳をした。
そうなんだ?と彼女は納得してくれたんだけど。
しかしいつまでも黙っているわけには行かないだろうと思う。
全て解決してから彼女に話そうと思う。とにかくこの週末までにさらに情報を集めてなんらかの対処をする。決め手が無ければ、誰かの案の通りに二人で出掛けるのもアリだ。
と計画していたのに。
その翌日の夜、いやもう朝方。
元カノに襲撃された。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる