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第六章 ベトナム旅行記・アイスコーヒーウイズミルク
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しおりを挟む第20話
少数民族の部落の民家で、しかもガイド君の手作り料理で昼食を食べることができるなんて思いもしなかったので、僕はとても感激してしまった。
食器などは決して衛生的とはいえないが、そんなことはどうでもいいような気持ちになり、僕は心の底からマイケル君やこの家の人達と同じように食事をすることを喜んだ。
実際食事を始めると彼の手料理はとても美味しく、御飯を二度もお代わりをしてしまったほどである。
四人で食事をしながらいろんな話をした。
「マイケル君はまだ独身なの?」と僕はさりげなく聞いた。
すると彼は少しはにかんだ表情になって、「好きな人はいたけど、友達が同じ女性を好きになったので身を引いたんだ」と言った。
何と殊勝なことを言う、恋に遠慮はいらないのじゃないのか?
彼は次に、逆に僕達にまだ独身かと聞いてきた。
「勿論だ。でも僕には息子が二人いるんだ」
と言ったら、彼はどうも理解していないのか、彼女に対して「彼は独身なのにどうして息子がいるんだろう?」と尋ねていたようだった。
結婚して二人の息子をもうけたが離婚して、現在は独身であることをマイケル君に説明したようだが、彼は信じられないといった表情で笑うのだった。
彼の民族では離婚が殆どないことや、結婚してからもし他の女性にドキドキするようなことがあっても、決して浮気をすることは許されず、辛いけど我慢するだなどと、彼は大きなゼスチャーを交えて話した。
そしてマイケル君は彼女達の年令は幾つだと聞くので、幾つに見えるかと逆に尋ねたら、「ウーン、二十五才くらい!」などと信じられない言葉が飛び出した。
(オイオイ・・・)
彼女達は、それが例えマイケル君のお世辞であったとしてもとても気分がいいようだったが、いくら仕事といっても二十五才くらいはないんじゃないかマイケル君!
ベトナム人は純粋なのが売り物の民族じゃなかったのか?(笑)
確かに彼女が本当に若く見えることは認める。
ベトナムのあと訪問したカンボジアでは、日本人バックパッカー数人と途中から同行したらしいのだが、最後まで彼女の年令をあれこれ議論した結果、二十才ということに落ち着いたらしいのだ。
彼女の場合、二十才といっても【フーン】と納得してしまうようなところが容貌にあるから、これはもう詐欺に等しいものである。
彼は僕にも年令を聞くので、正直に四十六才であることや、今回の旅は短期間彼女のお供していることなどを話したら、「全然年令を感じさせない体力だ」と言ってくれた。
彼の話では、トレッキングで途中でリアイアしてしまう中年以上の旅行者が結構多いとのことだった。
僕達は雨中のトレッキングのあとなので、かなりお腹が空いていたのかもしれないが、本当にマイケル君の料理を美味しくいただいたようで、おかずは全部平らげてしまい、三人とも御飯をお代わりした。
食後のお茶を飲みながら、今年の夏はこんな素晴らしい経験が出来たことに何故か胸が一杯になってしまい、日本での仕事や私生活に自分が大げさに苦悩していることなんか、とてもちっぽけなことのように思えてしまった。
ベトナム奥地のマイノリティーの部落での人々の生活に触れて、電話やガスや水道は勿論、日本では粗大ゴミに出されてしまうような家具さえもない彼等の不自由な生活様式は、考えてみれば決して不自由ではないのかも知れない。
知らない権利を頑なに通して、何千年も昔からの民族の生き方を貫いていることこそが、逆に自由といえるのではないかと思うのであった。
つづく・・・
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