サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

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サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 ⑪

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     第一章 2001年 春

 この当時のバトゥーサイ(アヌサワリー)とバトゥーサイの上からのビエンチャン市内の眺め。








今号の下部にここ数年前の同場所の画像を貼っています。よろしくお願いします。


       十一

「やあ、君もここで食事なんだね。一杯飲まない?」

 わずか一時間ほど前にラオパリホテルの前で別れた青年が店にいて、なんだかうれしくなって僕はビールを勧めた。

 だが彼は、「僕はアルコールは駄目なんですよ」と申し訳なさそうに断り、フルーツシェイクのようなものを飲んでいた。

 少し話をすると、彼はあれからラオパリホテルにチェックインしてみると、シングルが十七ドルの部屋しか空いていなかったらしい。

 どうしようかと迷った挙句、ウロウロと宿を探すのも面倒なのでその部屋に決めたという。
 部屋はさすがに十七ドルもするので快適で、シャワーだけでなくバスタブも付いているとのことであった。

 そんな話を聞いていると、間もなく軽く炙ってナイフで切り裂いたフランスパンに、ソーセージやレタスやタマネギ、シーチキンなどの具を挟んだサンドイッチが運ばれてきた。

 これがフランスパンサンドイッチ、ラオスではカオチー、ベトナムではバインミーと呼ぶ。

 パリパリっと頬張ると、香ばしいフランスパンに新鮮な野菜やソーセージが絡んで、なんとも表現しがたい美味しさだった。
 ガイドブックなどでは知っていたが、これほど美味しいとは予想外であった。

 カオチーはビールにも合っていて、僕もN君もあっという間にビールを空けてしまった。

 もう一本飲みたい気もしたが、昼間から酔っ払ってフラフラしているとサマにならないので諦め、「さあこれからどうしようか?」と思案した結果、夕方までにタートルアン寺院とバトゥーサイくらいは見ておこうよとN君に提案した。

 彼はニコニコと笑いながら、「どっちでもエエですよ。任せます」と同意してくれた。

 一応、インテリ青年にも一緒にどうかと声をかけてみたが、ビエンチャンで約束していた知人とこれから会うので遠慮しますとのことであった。

 N君とレストランを出て、道路の向かい側に停まっているトゥクトゥクの男性に声をかけた。
 これがベトナムやタイなら、旅行者がウロウロ歩いていると絶対に向こうから声がかかるのだが、やはり謙虚というかのんびりした人柄のラオス人民である。

 トゥクトゥク男性にタートルアンとバトゥーサイだけ回りたいのだがいくらかと訊くと、ふたりで二万Kipと言うのだが、これが高いのか安いのかは分からない。

 まあ一人百五十円程度だからいいじゃないかとオッケーして出発だ。(現在では十万Kipには値上がりしています。まぁ物価の上昇もあるので当然です)

 トゥクトゥクはタラート・サオの前を通り、大通りを気分よくドンドン走って行った。
 しかし途中郵便局の横に信号があったきり、その後交差点でも信号がないのだ。

 タラート・サオの横を過ぎれば交通量が一気に減り、バトゥーサイに向かう大通りは、これが一国の首都のメインストリートかと思ってしまう。

 この道路の感じとしては、休日の国会議事堂前から日比谷公園に至るまでの大通りの雰囲気に似ていると思った。

 トゥクトゥクはわずか十分足らずでバトゥーサイに到着した。

 トゥクトゥク男性は近くの店先で待ってくれるというので、僕達は入口で千キープの入場料を支払い、コンクリートのかなり急な階段を上って行った。

 このバトゥーサイは別名をアヌサワリーといい、フランスの凱旋門をモデルにして四十年程前に造られ、内戦で犠牲になった兵士などの霊が祀られているらしいのだ。

 だが、経済的な事情からか、内部は未だに中途半端なまま工事が中断している状態であった。

 こんなに高い建物なのにエレベータなどは勿論設置されていない。
 しかしそれほど息が切れることもなく屋上まで上ると、そこは素晴らしい眺めで首都ヴィエンチャン市内が一望できた。

 僕とN君はお互いに写真を取り合ったあと、土産物屋でシルバーリングを一つ購入したのをきっかけに、可愛いラオスレディーと少し言葉を交わし、約二十分程で降りた。

 一度上れば特に何度も行く気持ちにならない所だと思ったが、夜はライトアップされてビューティフルだという話である。

 さて次に訪問したのはタートルアン寺院である。


 ◆ここ数年のバトゥーサイと上から見たビエンチャン市内








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