サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

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第二章 2002年 春

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 84

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    第二章 2002年 春

 84 Hさんとの再会 そして帰国 

    その二 (第二章 完結)

 Hさんに、「ミャンマーでビールばかり飲んで、肝心の遺跡を訪ねたの?」と問い詰められ、N君は正直者だから言葉に窮したようだ。

「えっ?そりゃ行きましたよ。マンダレーのお寺は暑い中二ヶ所訪ねました。マンダレーヒルにも登りましたよ、マンダレーの町を一望できる絶景でしたわ」

 N君にしては動いている方かもしれない。

 何しろ彼はこちらから行こうと言わなければ、その土地の見所を積極的に訪ねようとはせずにビールばかり飲んでいるのだから。

「バガンには行かなかったのですか?」

 さらにHさんの執拗な問いに、N君はエアコンのよく効いた部屋なのに汗だくになっていた。

「暑さに参って動けなかったのでバガンには行かなかったのですよ。それに遠いし・・・」

「バガンが遠いですって?飛行機で三十分、船だと十時間かかりますけど、それくらい旅行者にとっては普通でしょ?冬にルアンパバーンからフェイサイまでボートで行った時より楽かもしれませんよ」

「あの時は暑くなかったですから」

 苦しい言い訳をしているN君と、それを厳しく攻め立てる二人を僕はニヤニヤしながら眺めていた。

 勿論Hさんだって本気で言っているわけではない。
 旅先でドップリ浸かりがちのN君に対するアドバイスの一つのようなものだ。

 さて、朝食に出かけようということになった。

 ホテルを出て通りを少しサーヤム方面に歩くとヌードル食堂がある。
 何度かここで食べたことがあるので味は安心だ。しかし時刻が早かったので細麺しかないと言う。

 ヌードルスープ・ウイズ・チキンを三人が注文したが、Hさんだけはノーパクチーなのだ。彼女は香草が大の苦手。

「今日はこれからどうしますか?」

 HさんもN君もバンコクにもう一泊できるのだった。

「僕は今日の午後便で帰国するから、昼過ぎには空港に行かないとね」

 この日は土曜日だったので、ウイークエンドマーケットに行くことで話が決まった。
 一旦ホテルに戻り、パッキングを済ませてロビーで落ち合い、三人だからタクシーで行こうということになった。

 僕だけがバックパックを背負ってのマーケットだ。
 簡単にお土産をいくつか買ったら空港へ早目に行こうと思っていた。

 ところがウイークエンドマーケットに着く少し前から雨が降り出した。
 タクシーを降りて素早くマーケットに入った。ここは屋根がある市場だから大丈夫だ。

 広い市場内の様々な店を覗いて歩く。僕だけが重いバックパックを背にして。

 一時間ほど雨宿りをかねて市場を歩いたが、雨はやむどころかますます激しくなってきた。
 店の中には雨が商品にかかってしまうので、一旦閉めるところも出てきた。

 マーケットの端でバケツをひっくり返したような大雨を眺めながら、僕たち三人はしばらく佇んでいた。

 今回の旅は恵まれた。

 行き当たりばったりで、バンコクに到着した朝、ドムアン駅に最初に来た列車に乗ることに決めていたが、それがラオス国境・ノンカイ行きだったことが幸運の始まりだったのかもしれない。

 旅の前半を同行してくれたR子さん。こんな怪しげなオヤジにも係わらず三日間も一緒に過ごしてくれた。
 屈託のない笑顔が懐かしく思う。

 後半をたまたま付き合ってくれたY子さん、それに韓国人青年との出会いも初めてドミトリーに泊まるきっかけとなった。

 Y子さんは恐縮するくらい気遣いをする人だった。
 最後にホテルをシェアしようと言って断られたけど、僕には何のたくらみもなかったことを念のため申し添えたい。

 そして旅の終わりにN君とバンコクの歓楽街を楽しんだ。Hさんとも再会できた。

「N君、Hさん。雨はやみそうにないし、僕は早めに空港へ行くよ。また日本で会いましょう」

「そうですね。じゃあまた」

 二人の言葉を背に受けて、僕は降り続く雨の中を視界に止まっている青いタクシーめがけて走ったのだった。

 
 - 第二章 2002年 春 完 -

 
  第二章を最後までお読みくださりありがとうございました。

 この旅行記の感想をお寄せくださると嬉しいです。今後の旅行記などへの参考にしたいと思っています。

 E-mail pero@carrot.ocn.ne.jp

 ※引き続き第三章 2006年暮れから年始の旅 を数日後から開始します。
 よろしくお願いします。

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