サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

文字の大きさ
101 / 205
第三章 バンコク近郊・意外展開旅行記

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 101

しおりを挟む


    たくましい日本人女性

 アサヒスーパードライの看板に誘われて立ち寄ったカフェのウエイターは、日本人のガールフレンドがいるというだけあって、日本語がとても上手だった。

 彼は料理を運んできたあとも、店内には他に一組の欧米人カップルがいるだけだったので、僕のテーブル近くをずっと離れずに話を続けていた。

 訊けば、その日本人ガールフレンドは二十五才、大阪で一人暮らしを送り、年に三回程度はアユタヤへ彼に会いに来て、滞在期間中は彼の家でその女性は過ごすらしい。

 彼は小柄な細身の体躯で、ズボンのベルトや手首にアクセサリーをたくさん身につけて、どう見ても二十代半ばなのだが、何と三十六才だという。

 この年まで独身でいることは結構好き勝手な生き方をしてきたに違いないが、確かに愛想が良く容貌もまあまあハンサムな部類に入るだろう。

 それに僕に対してもこのような物腰なのだから、女性に対してははるかに親切で下僕のごとく接していると思われる。

 ともかくここでも日本人女性が海外で大活躍をしていらっしゃることが窺えた。

 旅先で日本人女性はいたるところでチヤホヤされるらしいので、日本では殆ど男性の目にかからないような方でも、その絶大なるエスコート振りに感激し、何度も海外を訪れ、現地の男性と恋仲になることは自然なことかもしれない。

 この数日後、バンコクのカオサンでマッサージに訪れた際、僕を担当してくれた十九才の男性が、「僕には日本人のガールフレンドがいます。もうすぐ休みを取ってこちらに来てくれます」と聞いた時には、どういうわけか少し気分が悪くなってしまった。

 僕の場合、いつも日本人女性が旅先の現地男性とよろしくやっていらっしゃる話を聞くと、我が国が戦争で負けたような気分になってしまう。

 勿論、実際にそんな経験はないのだが、どう説明すれば適当かというと、他国の男に我が国の女性を寝取られたという感覚に近いものかもしれない。

 それは心の狭い、グローバルな現代にあっては嘲笑されるような感情だとは思うが、何故かそう感じてしまうのだった。

 さて、お腹も一杯になり、昼間から大瓶一本のビールを飲んだことで、ホロ酔い加減になって店を出た。

 相変わらず日差しが強烈で、さっき飲んだばかりのビールが体中の毛穴から噴出してきたような気がした。
 僅か一キロメートル程の宿までの距離が非常に遠く感じられた。

 汗びっしょりになって宿に帰ると、中島みゆきさんがフロントにいた。

「お帰りなさい。どうしたのですか?顔が真っ赤ですよ」

 彼女は僕のよれよれの姿を見て少し驚いた様子で言った。

 ビールを飲んだからなのか、それとも日焼けで顔が赤いのか分からないが、確かに身体が熱を帯びているようだった。

「中島さんの顔を見て興奮しているのです」

 僕はわけの分からない言葉を彼女に残し、部屋に戻ってシャワーを浴び、ベッドに倒れこんでしまった。

 天井のファンが心地良い中で、僕はうつ伏せのままいつの間にか眠りにおちていた。

 ベランダの下ではタイ人の会話が聞こえた。それはカラスの鳴き声のように「カー、カー」と、遠ざかる意識の向こうで響くのだった。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...