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第三章 バンコク近郊・意外展開旅行記
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 101
しおりを挟むたくましい日本人女性
アサヒスーパードライの看板に誘われて立ち寄ったカフェのウエイターは、日本人のガールフレンドがいるというだけあって、日本語がとても上手だった。
彼は料理を運んできたあとも、店内には他に一組の欧米人カップルがいるだけだったので、僕のテーブル近くをずっと離れずに話を続けていた。
訊けば、その日本人ガールフレンドは二十五才、大阪で一人暮らしを送り、年に三回程度はアユタヤへ彼に会いに来て、滞在期間中は彼の家でその女性は過ごすらしい。
彼は小柄な細身の体躯で、ズボンのベルトや手首にアクセサリーをたくさん身につけて、どう見ても二十代半ばなのだが、何と三十六才だという。
この年まで独身でいることは結構好き勝手な生き方をしてきたに違いないが、確かに愛想が良く容貌もまあまあハンサムな部類に入るだろう。
それに僕に対してもこのような物腰なのだから、女性に対してははるかに親切で下僕のごとく接していると思われる。
ともかくここでも日本人女性が海外で大活躍をしていらっしゃることが窺えた。
旅先で日本人女性はいたるところでチヤホヤされるらしいので、日本では殆ど男性の目にかからないような方でも、その絶大なるエスコート振りに感激し、何度も海外を訪れ、現地の男性と恋仲になることは自然なことかもしれない。
この数日後、バンコクのカオサンでマッサージに訪れた際、僕を担当してくれた十九才の男性が、「僕には日本人のガールフレンドがいます。もうすぐ休みを取ってこちらに来てくれます」と聞いた時には、どういうわけか少し気分が悪くなってしまった。
僕の場合、いつも日本人女性が旅先の現地男性とよろしくやっていらっしゃる話を聞くと、我が国が戦争で負けたような気分になってしまう。
勿論、実際にそんな経験はないのだが、どう説明すれば適当かというと、他国の男に我が国の女性を寝取られたという感覚に近いものかもしれない。
それは心の狭い、グローバルな現代にあっては嘲笑されるような感情だとは思うが、何故かそう感じてしまうのだった。
さて、お腹も一杯になり、昼間から大瓶一本のビールを飲んだことで、ホロ酔い加減になって店を出た。
相変わらず日差しが強烈で、さっき飲んだばかりのビールが体中の毛穴から噴出してきたような気がした。
僅か一キロメートル程の宿までの距離が非常に遠く感じられた。
汗びっしょりになって宿に帰ると、中島みゆきさんがフロントにいた。
「お帰りなさい。どうしたのですか?顔が真っ赤ですよ」
彼女は僕のよれよれの姿を見て少し驚いた様子で言った。
ビールを飲んだからなのか、それとも日焼けで顔が赤いのか分からないが、確かに身体が熱を帯びているようだった。
「中島さんの顔を見て興奮しているのです」
僕はわけの分からない言葉を彼女に残し、部屋に戻ってシャワーを浴び、ベッドに倒れこんでしまった。
天井のファンが心地良い中で、僕はうつ伏せのままいつの間にか眠りにおちていた。
ベランダの下ではタイ人の会話が聞こえた。それはカラスの鳴き声のように「カー、カー」と、遠ざかる意識の向こうで響くのだった。
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