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第四章 タイ・ラオス・ベトナム駆け足雨季の旅
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 131
しおりを挟む第十五話
必要なときにトゥクトゥク野郎が通らず、重いバックパックを背負って、結局はバスターミナルまで三十分あまりかけて歩く羽目になってしまった。
薄暗くなったバスターミナルに着いた時には、体中が汗だくでほぼ瀕死の状態になっていた。
敷地内の屋台食堂でチャーハンを食べながらビアラオを一気に二本空けて、やれやれといったん落ち着いた。(35000Kip、400円少々)
さて、フエまでのバスチケットを買わなければいけない。
窓口で12ドルを支払ってゲット、これで明日フエまで行けるとひと安心する。
こうなると何もすることがない。待合所の長椅子にバックパックを降ろし、バスを待った。予定では21時の出発とのことだ。
周りを見渡すとラオス人かベトナム人か、それぞれたくさんの荷物を持ってバスを待っていた。
ともかく日本人はもちろんのこと、欧米人旅行者さえ一人も見当たらない。
いったい旅行者達はどこをほっつき歩いているのだ!と心で憤慨する。
もともとがいつも一人旅なので、なにも寂しく思っている訳ではないのだが、このように旅行者が一人も目に入らない街は初めての経験と言っても過言ではないからである。
20時を過ぎてからパラパラと小雨が降り始めた。
21時が近づいてきたがなかなかバスは来ない。
定刻通り発車するとは思っていないが、少しイラっとする。バスを待つ人々の集団が次第に膨れてきた。
その時、背後から声を掛けられた。しかも紛れもない日本語なのだ。
「あのう、日本の方ですよね」
見上げると、そこには眼鏡を掛けた長身の日本人男性が立っていた。果たしてどこから現れたのだろう?
日本人に飢えていた僕は、まるで数年ぶりに恋人に再会でもしたかのように喋った。
日本人男性も気さくで明るい性格のようで、一気に話が弾んだ。
彼の名はI君といって、一昨日からサワナケートに滞在しているという。
僕より一日早くビエンチャンからバスで到着し、明日第二メコン国際橋を超えてタイのムクダハーンへ渡る予定とか。
年齢は三十歳前後か、年齢を聞いたかもしれないが忘れてしまった。
彼は約一ヶ月の予定で、バンコクにインしてチェンマイなどタイ北部からラオスに入り、バンビエンなどでのんびりしたあとビエンチャンを経て、このサワナケートに至っているとのことだった。(記憶違いかもしれませんが)
日本では奥さんとの間にまだ子供はなく、父からの運送店を営んでいて、時々長めの休みを取って東南アジアを旅行するとのこと。
風貌は、例えは悪いかもしれないが、あの山口県光市母子殺人事件の被害者の遺族「本村洋」さんによく似ていた。
本村さんはご存知の通り、この残虐な事件と犯人の非人間性を、たとえ当時未成年であったとしても極刑をもっての償いを訴え続け、最高裁からの差し戻し審で目下死刑判決を勝ち取った毅然とした立派な人物である。
このI君も、折り目正しくしっかりした非常に好感の持てる旅人だった。
I君は僕のフエ行きのバスを見送ってくれると言う。
それは悪いからと遠慮したが、それじゃバスに僕が無事に乗り込むまでを見届けてくれると言うのだった。本当によい人だ。
その時、バスがフエ行きの停車場に滑り込んできた。
そのバスを見て僕は愕然とし、さらに前部の乗降口へタイ人かベトナム人かラオス人かインド人か(これはないか)、要するに様々な顔をしたアジア人が殺到したのだ。
「藤井さん!早く乗らないと座れませんよ!」
I君がその光景を見て叫んだ。
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