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第五章・ミャンマー行きの予定が何故か雲南へ
サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 154
しおりを挟む第四話
「一等食堂」には見慣れた店員はひとりもいなかった。
店の装飾やテーブルなどの配置に変わったところはなく、書棚にはMさんが集めた大量の日本の書籍が並んでいた。
ビールを飲んでいる男性はかなり年配の人で、僕が女性店員にMさんのことを尋ねている間、心配そうに見守っている様子だった。
女性店員は「Mさんはアパートメントにいる」と言う。
つまり本日はまだ出勤していないだけなのか?
Mさんのアパートにはこれまで何度か伺っているが、いつもほぼ泥酔状態の時にお邪魔して、明け方「じゃあ、また来ます」といった感じで帰るため、実は部屋番号が分からない。
今日のところは引きあげて明日再度出直すことにし、屋台でクイッティアオを食ってから一旦GHに戻った。
帰りにテスコ・ロータスでシャンプーを買って髪の毛を洗った。(このころはまだ髪の毛がありましたよ)
GHでは小さな石鹸は無料でくれるが、シャンプーはない。
少し長い旅行の時は、日用品などは現地調達した方が安い。
夕方四時を過ぎてから再び出かけた。
オンヌットから四つ目のプロンポンで下車、バンコクに来た時は必ず訪れるハタサット2というタイマッサージ店でフットマッサージを一時間だけ受けた。(300B+チップ50B)
足全体を念入りにマッサージしてもらうと、なぜか頭もスッキリする。
日本にも安いフットマッサージ店があればと思うが、物価の比較でバンコクより五倍程度の料金設定の現実では足を運べない。
それならわざわざ航空運賃を使ってタイにまでマッサージを受けに来るのはおかしいというご意見もあるだろうが、マッサージを受けに来るわけではない、目的はあくまでも旅行である。
さて、約束の午後六時ごろに伊勢丹前でN君と待ち合わせをしている。
サイアムで降りて約束の場所へ向かう途中、ヤイアムパラゴン前の広場ではクリスマスイベントが繰り広げられていた。
大勢の人々とぶつかり合いながら先へ進む。
この喧騒はもはや日本の新宿や渋谷のショッピングセンターと何等変わらない。
セントラルワールド前広場にもいくつもの巨大クリスマスツリーが電飾で覆われ光り輝いていた。
さらにバンコクのビールブランドのビアガーデンが設けられ、それぞれ生バンドの演奏が行われていた。
目の前にはタイの老舗ブランドであるビアシン(シンハビール)のビアガーデンがあり、通路を隔てて隣には創業まだ20年ほどでタイで売り上げトップに出たビアチャン(チャーンビール)のビアガーデン、さらに反対側隣にはタイガービール(シンガポールのビール)のビアガーデンといった具合である。
今日はクリスマスイブの前日12月23日である。
今夜でさえこのような賑やかさなのに、明日の夜はいったいどんな騒ぎになるのだろう。
僕は伊勢丹の出入り口付近でポカンと口を開けたままあっけに取られていた。
「藤井さん、お待たせしました」と、その時懐かしい顔が目の前に現れた。
日本の大手商社系列企業に勤めるN君は、この日も仕事帰りなので会社の制服を着たままだった。
「どないしましょうか?ビアガーデンにちょっとだけ入りますか、生演奏がうるさいですけど、タイ人はこういうの好きなんですわ」
N君は半年前に比べて少しだけやせたような気がしたが、相変わらず愛嬌のある顔でホッとする。
僕はタイで彼と飲むのが、目下の僕の生活の中で最も楽しみといっても良いくらいなのだ。
僕たちはタイガービールのビアガーデンに入っていった。
席に案内されると、舞台の生演奏の大音響で、お互いの話が全く聞こえないほどだった。
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