サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽

Pero

文字の大きさ
155 / 205
第五章・ミャンマー行きの予定が何故か雲南へ

サバイディー、南方上座部仏教国の夕陽 155

しおりを挟む

前号で文字の設定が巨大で読みにくかったと思います。
すぐに設定修正をしましたが、申し訳ありませんでした。


       第五話


 2009年12月23日の夜、伊勢丹前に臨時に設けられたビールメーカーのビアガーデンのうち、シンガポールビールで有名なタイガービールのガーデンで僕とN君は辟易していた。

 何に辟易していたかというと、舞台から放たれる生バンドの大音響にである。

 この大音響は異常なくらい巨大音響で、一メートル前のN君の言葉が全く聞こえないのだ。

 当然僕がN君に伝えたい言葉も聞こえないわけで、ほぼ口パク状態。

 しばらくガイヤーン(焼き鳥)を食べながら生ビールを飲んだが、「場所変えまひょか、こりゃあきまへんな」とN君が提案したので、当然僕は同意した。

 いったい、タイ人は耳が良いのか、それとも逆に悪いのか、或いは聴覚構造が日本人とは異なっているのか、これだけの大音響だとウエイトレスも客の注文を聞き取れないと思うのだが、謎である。

 さて、ビアガーデンの大音響を背後に聞きながら、僕とN君は落ち着く場所を思案した。

 「ワールドトレードセンターの上階にあるハイネケンのビアホールならこんなことはないと思うんですけどね」と、N君は見上げたビルの高層階に光り輝く「ハイネケン」の電飾を指差しながら言った。

 「そやけど、またビアガーデンみたいに生演奏やってるかもしれまへんから、やっぱり場所を変えましょか」

 N君の更なる提案で、僕たちはBTSスカイトレインのチットロム駅から三つ目のアソークまで移動した。

 バンコクではBTSの運賃が高く、これくらいの距離で二人ならタクシーのほうが安い。

 だが、クリスマスイブの前日にもかかわらず、通常の仕事帰りのラッシュアワーとも重なり、市内の交通は麻痺状態だったのでやむなくBTSに乗ったというわけであった。

 アソークで降りて少しナーナー方向へ戻ったところのソイに、日本人が経営する焼鳥屋があるとのことで、「長いこと焼鳥を食べてないのでここでいいですか?」とN君の希望に同意した。

 僕としては好き嫌いはないし、N君とビールが飲めれば何でもよい。

 スクンビット通りから入ったソイはかなり広い通りで、近くには高級ホテルや高級レストランなども見られたが、僕たちが入ったのは小さなビルで、階段をトントン二階へ上がったところにある暖簾のかかった店であった。

 店内はカウンター席がズラッと十数席、その奥に個室が一つあり、僕たちはその個室へ案内された。

 N君は以前よく来ていたそうで、かなりここでお金を使った常連とみられ、店主が「お久しぶりです、よく来てくれました、奥へどうぞ!」と丁重な応対を受けたのであった。

 こうなれば腰を据えて飲むしかない。

 僕たちは焼鳥はそれほどたくさん注文しなかったが、シンハビールの大瓶を十数本も空にした。

 お勘定が、日本で二人で焼鳥屋へ行ってビールをお互いにジョッキ3杯ずつ程度飲んで、焼鳥をたらふく食べた位の金額になった。

 N君のタイ人批判話や、僕の日本でのドリンキングライフなどで会話が弾むとともに、二人とも急速に酔いがまわってきた。

 日本では今頃まだスタッフさんたちが残業して、イカれた客の対応をしているのだろうなぁと思うと、今の僕のこのグータラした状況を客観的に見て、嬉しさと苦笑いが自然と出た。

 「一等食堂に行きましたか?」

 そういえば忘れていた一等食堂の件を、N君が突然話し出した。

 「Mさんから、『そろそろ藤井さんが来るころだから、前の店は乗っ取られたので行かないように伝えといて』と言われてたんですわ。行きましたか?」

 「昨日の昼間に覗いてみたけど、全然知らない店員がいて、変なオッサンがビール飲んでたけど、乗っ取られた?それはどういうこと?」

 N君の言葉に僕は驚いた。

 乗っ取られたってどういうことなのだろう、それにMさんはどうしているのか?



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...